統合失調症は神経炎症性疾患なのか?
Is Schizophrenia a Neuroinflammatory Disorder?
急性期統合失調症患者では10%の頻度でNMDA型グルタミン酸受容体に対する抗体が検出されるのに対し、うつ病患者では3%と低く、境界性パーソナリティ障害患者からは検出されない。
遺伝的連鎖解析研究および末梢血中の免疫機能を調べたこれまでの研究から、神経炎症が統合失調症の病態発生機序において何らかの役割を果たしていることが示唆されている。たとえば、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDA-R)に対する抗体に起因する脳炎に精神病症状が合併した症例では炎症と主要な神経伝達物質のあいだに関連が認められる。本論文の著者Steinerらは、薬物治療歴がない急性期統合失調症患者(n=121)、大うつ病患者(n=70)、境界性パーソナリティ障害患者(n=38)、そして対照群230例において、NMDA-RおよびAMPA受容体のそれぞれ異なる2つのサブユニットに対する免疫グロブリン(Ig)A、IgG、IgM抗体を調べた。なお、著者のうち数名は免疫診断薬企業に勤める研究者であった。
統合失調症患者ではNMDA-Rに対する種々の抗体(IgG、IgA、IgM)が9.9%に検出されたのに対し、うつ病患者では2.8%、境界性パーソナリティ障害患者では0%、対照群では0.3%であり、有意差が示された。統合失調症の症例2例は、血清試料中にNR1aサブユニットに対するIgG抗体しか検出されず、脳脊髄液試料中の抗体価が高くリンパ球増加が認められたため、これらの所見を特徴とするNMDA-R脳炎として再分類された。
コメント
これらの結果は、炎症と、統合失調症の病態形成に重要な役割を果たすと考えられている主要神経伝達物質グルタミン酸を関連付ける知見である。まさにBleulerが元来考えていたように、統合失調症は今後、ある程度は集約されるであろうが、さまざまな成因およびさまざまな神経機能異常の経路による不均一な疾患であることが明らかになる可能性が高い。本研究は、発症の成因であるかどうかはわからないが、感受性遺伝子と関連している可能性がある重要な経路を明らかにしており、今後、新たな治療の開発基盤として資するかもしれない。
—Peter Roy-Byrne, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry February 11, 2013