“「店が壊れる」とは何か? 「Hanako」を読んだ人たちは、その週か翌週に集中的に来店するのです。すると、静かに営業していたある店に、突然、黒山の人だかりが出来る。そうして集まって来た人たちは初めての来店です。しかも20代でいろいろな食べ物を熟知しているとも言えない人たちです。何しろ、知らない店でまだ知らない食体験をしようと来店しているのです。それで、オーダーするまでにああでもないこうでもないと悩む。ものによっては、店の人が説明する必要があったりする。かと思えば、ドリンクとサイドメニューで長居するグルー

“「店が壊れる」とは何か?
「Hanako」を読んだ人たちは、その週か翌週に集中的に来店するのです。すると、静かに営業していたある店に、突然、黒山の人だかりが出来る。そうして集まって来た人たちは初めての来店です。しかも20代でいろいろな食べ物を熟知しているとも言えない人たちです。何しろ、知らない店でまだ知らない食体験をしようと来店しているのです。それで、オーダーするまでにああでもないこうでもないと悩む。ものによっては、店の人が説明する必要があったりする。かと思えば、ドリンクとサイドメニューで長居するグループもある。その結果、オペレーションは乱れまくり、食材はショートすること請け合いです。
 そんな大混乱の中、もともとの得意客がいつもの通りにふらりとやって来る。しかし、店の前の行列を見て「あっ」と声を上げ、きびすを返してその場を去る。あるいは、果敢に入店して座ってみたところで、普段の雰囲気ではありません。若い女性の甲高い声のおしゃべりや笑い声、そして当時人気の何種類かの高価な香水の混じった匂い。
 店の人はいつものようにかまってくれない。やっとつかまえてオーダーしようとすると、「すいません。今日は品切れです」と。これで得意客は「二度と来るか、こんな店!」となってしまう。
 翌週以降どうなるか。まず、得意客が来なくなります。そしてこれが重要な点ですが、「Hanako」を見て来店するお客は、ほとんどリピートしないのです。彼女たちは「新しい店」「自分が知らない店」を探して、「そこへ一度は行ってみる」ことを楽しんでいるのであって、「私に合うお店を探す」ということをしているわけではなかったので。
 だから、掲載日から1~2週間空前の繁盛を見た後、この店には誰も来なくなります。つまり、「店が壊れる」ということです。「『Hanako』を見たお客が来た後はペンペン草も生えない」と、ある店のオーナーは肩をすくめて言ったものです。”