リハビリ職員のH. pylori陽性率は職労年数とともに上昇  Helicobacter pylori(H. pylori)保菌率の高い高齢者と接する機会の多いリハビリテーション(以下リハビリ)職員のH. pylori陽性率が職労年数に伴って上昇していることが,第20回日本ヘリコバクター学会学術集会(6月28~29日,会長=杏林大学第三内科教授・髙橋信一氏)のシンポジウム「H. pylori感染症の問題点を探る」で報告された。筑波記念病院(茨城県つくば市)副院長の池澤和人氏(消化器内科)が同施設の職員を

リハビリ職員のH. pylori陽性率は職労年数とともに上昇

 Helicobacter pylori(H. pylori)保菌率の高い高齢者と接する機会の多いリハビリテーション(以下リハビリ)職員のH. pylori陽性率が職労年数に伴って上昇していることが,第20回日本ヘリコバクター学会学術集会(6月28~29日,会長=杏林大学第三内科教授・髙橋信一氏)のシンポジウム「H. pylori感染症の問題点を探る」で報告された。筑波記念病院(茨城県つくば市)副院長の池澤和人氏(消化器内科)が同施設の職員を調べた結果導いたもので,まれと認識されていた成人期のH. pylori感染の可能性を示唆する調査結果として注目される。
6年超では3割近くが陽性,成人期感染を示唆

 高校の卒業式や成人式でH. pylori感染を診断,治療するという試みが各地で行われているが,これはH. pyloriの感染ルートは小児期の唾液を介した家庭内感染が主であり,成人期の感染は少ないとの知見に基づく方策といえる。一方で,プライマリケアに携わる看護系スタッフや内視鏡検査医などが,一般に比べて感染率が高いとの報告もあり,成人後の感染成立が否定できないことを示すデータとして検証が望まれていた。

 池澤氏は,H. pyloriを保菌している可能性が高い高齢入院患者と濃厚に接触しているリハビリ職員において,就労年数がH. pylori感染率に及ぼす影響について調査を行った。

 同施設の40歳未満の職員のうち,リハビリ職員209人および非リハビリ職員22人の尿中抗体を用いてH. pylori診断を行った。過去の除菌歴,腎疾患の既往および尿蛋白陽性者は除外したという。

 今回の研究に同意したリハビリ職員173人(男性98人,女性75人;平均年齢27.5歳,平均就労年数4.4年)のH. pylori陽性率は16.2%(男性14.3%,女性20.0%)であった。

 就労期間から1〜2年,3~4年,5~6年,6年超の4群に分けて陽性率を見ると,それぞれ5.0%,12.0%,17.6%,28.6%であり,就労が長期の群で有意に陽性率が高かった(コクラン・アーミテージ検定:P=0.019,図)。職種別では,患者の唾液・胃液の曝露を受けやすい言語聴覚士の感染率が26.3%と高かったが,作業療法士16.3%,理学療法士15.3%との間に有意差は認められなかった。