日本国内ではあまり馴染みがないが,米国などでは挨拶として一般的に握手や抱擁が行われている。米David Geffen School of Medicine at UCLAのMark Sklansky氏らは「医療機関での握手禁止を検討すべき」との提言をJAMA(2014; 311: 2477-2478)に発表した。ヒトの手指が感染症伝播の原因となることはよく知られている。また,医療機関での手指衛生の徹底による院内感染の予防が勧告されているにもかかわらず,コンプライアンスのばらつきや有効性の限界が指摘されてい

日本国内ではあまり馴染みがないが,米国などでは挨拶として一般的に握手や抱擁が行われている。米David Geffen School of Medicine at UCLAのMark Sklansky氏らは「医療機関での握手禁止を検討すべき」との提言をJAMA(2014; 311: 2477-2478)に発表した。ヒトの手指が感染症伝播の原因となることはよく知られている。また,医療機関での手指衛生の徹底による院内感染の予防が勧告されているにもかかわらず,コンプライアンスのばらつきや有効性の限界が指摘されていると同氏ら。手指を介した病原体の伝播を防ぐ上で有効性,費用効果に優れるかもしれないと主張している。

米国では診察の始めと終わりに医師と患者が握手

 握手は数百年に渡り行われてきた,深い文化的意義のある行為とSklansky氏ら。米国の医療機関では,医師と患者が診察の始めと終わりに握手をすることは一般的で,握手により医師の患者に対する共感や思いやりの表現が強まることや,不安の軽減につながるなどの効用が期待されていると指摘する。
握手による感染リスク示す報告は多い

 一方,医療関係者は病原体や疾患を伝播させる媒介者であるとの複数の報告や,医療関係者の手指衛生プログラムの遵守率は40%程度との報告があるとSklansky氏ら。握手による感染リスクを指摘する報告は多数存在することから,握手が感染症の伝播リスクとして確立していると説明している。

 同氏らは握手「禁止」の妥当性について,米国の喫煙者対策を例示。法律による規制だけでなく,昔は社会的習慣として確立されていた喫煙行為やニコチン依存の性質といった背景を踏まえたニコチンガムによる有効な代替療法の積極的な導入を併用することで,喫煙率の低下を達成できたと成功の要因を分析した。

握手に代わって「手を振る」「右胸に手」「おじぎ」などを提案

 医療機関に同様の手法を応用した場合,同氏らは「握手禁止ゾーン」の設置と「医療機関での握手禁止はあなたや周囲のヒトの健康を守るため」との啓発を行うことが必要との見方を示す。また,握手に代わる感染予防を考慮した挨拶の手段としては国際的に用いられている「手を振る」あるいは,米国旗掲揚の際に行われる右胸の上に手を置くといった方法や日本などで行われる「おじぎ」,インドなどで行われる,胸の前での合掌「ナマステ」なども選択肢として挙げている。

 同氏らは,医療機関での握手禁止にはさらに医学的検証が必要な他,握手をしないことが患者や医療者の健康を守る重要な手段であることなどへの啓蒙などが必要と指摘。一方,院内感染や耐性菌による社会的・経済的負担を考慮すれば,こうした有望かつ実行可能な手段を見過ごすべきでないと強調している。