徒然草第131段:貧しき者は、財をもて礼とし、老いたる者は、力をもて礼とす。己が分を知りて、及ばざる時は速かに止むを、智といふべし。許さざらんは、人の誤りなり。分を知らずして強いて励むは、己れが誤りなり。 貧しくて分を知らざれば盗み、力衰へて分を知らざれば病を受く。 ーーーーー 貧しい者は、財力を礼節だと勘違いをし、老いた者は、体力を礼節だと勘違いしやすい。自分の能力の分を知って、できない時には速やかにあきらめるのが知恵である。そういった諦めを許さないというのは、人が陥りやすい誤りである。自分の分をわ

徒然草第131段:貧しき者は、財をもて礼とし、老いたる者は、力をもて礼とす。己が分を知りて、及ばざる時は速かに止むを、智といふべし。許さざらんは、人の誤りなり。分を知らずして強いて励むは、己れが誤りなり。 
貧しくて分を知らざれば盗み、力衰へて分を知らざれば病を受く。
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貧しい者は、財力を礼節だと勘違いをし、老いた者は、体力を礼節だと勘違いしやすい。自分の能力の分を知って、できない時には速やかにあきらめるのが知恵である。そういった諦めを許さないというのは、人が陥りやすい誤りである。自分の分をわきまえずに無理やりに頑張るのは、自分の誤りというべきことである。 
貧しくて分を知らなければ盗みを働き、力が衰えているのに分を知らなければ病気になってしまう。
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そのように常に間違うのが人間なのであるから、それはそれでいいのではないかと思う。
自分に足りないものを大切なものと感じ、それが相手にとっても大切なものと思う心も自然なものと理解できるだろう。

陥りやすい誤りにも理由というものがある。
動物の行動を見ていると、人間の目から見れば明らかに能率が悪いと思われることでも、その動物なりの合理性の結果なのである。役に立たない角や役に立たない羽をつけてみんな必死に生きている。