乳癌と診断された4分の1がPTSDを誘発

 乳癌患者のほぼ4人に1人は、癌の診断を受けてすぐに心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状がみられ、特に黒人とアジア人の患者でそのリスクが高いことが、米コロンビア大学内科・外科学部教授でMailman公衆衛生学部教授のAlfred Neugut氏らの研究で明らかになった。PTSDは、生命を脅かすような出来事を体験・目撃した後に生じる精神疾患。
 今回の研究では、1,100人強の20歳以上の乳癌患者から聞き取りを実施した結果、23%が診断後2~3カ月以内にPTSDの症状を経験していた。しかし、その後3カ月で症状は軽減した。若い女性は高齢女性よりも高い比率でPTSDの症状がみられたほか、アジア人および黒人の女性は、白人女性よりもPTSDリスクが50%高かったという。この知見は「Journal of the National Cancer Institute」オンライン版に2月21日掲載された。
 Neugut氏は、「この研究は乳癌診断後のPTSDの経過について評価した初めての研究の1つで、最終的な目標は、患者の生活の質(QOL)を向上させる方法を明らかにすることである」と述べている。「PTSDの潜在的リスクファクター(危険因子)を特定することができれば、女性が癌と診断されたとき、PTSDの症状を最小限に留めるように予防や治療を実施することができる。このアプローチが、乳癌の生存率にみられる人種間の差に間接的影響を及ぼす可能性もある」と、同氏は説明している。
 前立腺癌およびリンパ腫の診断を受けた患者でもPTSDの症状が報告されており、今回の研究結果を他の癌の患者にも適用できる可能性があると、研究グループは指摘している。