単極性うつ病における抗うつ薬治療抵抗性と双極性障害との関連:コホート研究

単極性うつ病における抗うつ薬治療抵抗性と双極性障害との関連:コホート研究
Association between antidepressant resistance in unipolar depression and 
subsequent bipolar disorder: cohort study
Br J Psychiatry 2012;200:45-51
Li  CT,  Bai  YM,  Huang YL,  Chen YS,  Chen TJ,  Cheng JY,  Su TP
背景:十分な抗うつ薬治療によっても反応がみられない大うつ病性障害患者では、背後に双極性障害が隠れている可能性がある。
目的 :本研究の目的は、8年間のフォローアップ期間中に、大うつ病性障害患者に対する診断が双極性障害に変更される割合について抗うつ
薬への反応性で階層化して比較することであった。
方法 :台湾の医療保健の利用者1,000,000例からなる全国規模の代表的なコホートから、2000年(コホート2000、n=1,485)、2003年(コホート
2003、n=2,459)に同定された大うつ病性障害患者に関する情報を収集した。抗うつ薬治療に対して良好に反応した患者を、十分な抗うつ薬治
療にも関わらず反応が悪かった患者と比較した。
結果:単極性大うつ病性障害と診断された患者の7.6~12.1%では、平均1.89~2.98年後に診断が双極性障害へ変更された。治療抵抗性の患
者は、治療反応性の良好な患者に比べ、診断が双極性障害へ変更される割合が高かった(治療抵抗性の患者ではコホート2000で25.6%、コホ
ート2003で26.6%、治療反応性の良好な患者ではコホート2000で8.8~8.9%、コホート2003で 6.8~8.6%、p< 0.0001(chi-squared tests))。回帰
分析により、診断の変更と最も強く関連した因子は、抗うつ薬の服用歴であることが示された。治療抵抗性の患者は診断の変更と最も強く関連
した〔コホート2000でオッズ比(OR)=1.88 (95% CI 1.12‐3.16)、コホート2003でOR= 4.94 (95% CI 2.81‐8.68 )〕。
結論: 本研究は、抗うつ薬治療に対する反応性の履歴と大うつ病性障害から双極性障害への診断変更との関連性を報告する最初の大規模試
験である。以上の知見は、単極性うつ病において抗うつ薬への反応性が悪かったという治療歴は、双極性障害の素因を見出すための有益な予
測因子となり得るという見方を支持している。