CBTを用いた心因性症状の治療 Using CBT to Treat Psychogenic Symptoms 認知行動療法の技法を用いた短期アプローチは有用であったが、得られた効果は持続しなかった。 医師、とくに神経科医を受診する患者の1/3以上は、機能や生活の質(QOL)に支障をきたす医学的に説明困難な症状を有する。残念ながら、実践的で有効な治療は確立していない。非てんかん発作を起こす患者では、認知行動療法(CBT)により発作頻度は減少するが、情動や機能状態は改善しないことが報告されている(JW

CBTを用いた心因性症状の治療
Using CBT to Treat Psychogenic Symptoms
認知行動療法の技法を用いた短期アプローチは有用であったが、得られた効果は持続しなかった。
医師、とくに神経科医を受診する患者の1/3以上は、機能や生活の質(QOL)に支障をきたす医学的に説明困難な症状を有する。残念ながら、実践的で有効な治療は確立していない。非てんかん発作を起こす患者では、認知行動療法(CBT)により発作頻度は減少するが、情動や機能状態は改善しないことが報告されている(JW Psychiatry Jul 19 2010)。Sharpeらは、CBTに基づく指導付きセルフヘルプ(GSB)プログラムが機能的症状に有効であるか否かを検証する目的で、対象患者127例を通常治療(UC)単独群もしくはUC+GSH併用群に無作為に割り付け、治療成績を比較した。対象には、器質的疾患で「まったく説明がつかない」あるいは「ごく一部しか説明できない」症状を有する患者が選択された。専門医による精神科医療を必要とする患者、あるいは症状が頭痛のみの患者は除外された。
GSH群はセルフヘルプのワークブックを使用し、対面式指導セッションを受けた(最大で3ヵ月間に30分のセッションを4回実施)。このワークブックには、セルフヘルプの技法に関する内容が書かれており、機能的症状は「心理的・行動的な要因の影響を受けた神経系機能の変化」と記述されていた。さらに、診断、一般的な症状、解剖学、生理学、心理学についても言及していた。対象患者でもっとも多くみられた症状は、刺痛感、疼痛、しびれ感であった。患者のおよそ20%が大うつ病、65%がパニック障害を有し、約40%は抗うつ薬を服用していた。
治療開始3ヵ月後、全般的健康状態が「改善した」あるいは「かなり改善した」と回答した患者は、UC+GSH群のほうがUC単独群よりも多かった(30% 対 17%;NNT=8)。GSHに関連して健康上の不安の減少および症状の改善は得られたが、症状が永遠に続くあるいは不可解であるという患者の信念に変化はみられなかった。6ヵ月の時点では、全般的な改善に関して両群間に差はなかったが、症状および身体機能の改善を報告した患者はUC単独群に比べUC+GSH群のほうが有意に多かった。
コメント
ごく最小限の治療によって、心因性症状を有する患者で全般的な改善を認めたが、治療後の改善効果は持続しなかった。強化した治療をより長期間実施すれば、さらに効果が得られる可能性はある。われわれはこの協働的治療アプローチを医療に取り込み、心因性症状は神経系機能に起因するという概念の再構築を行うべきである。慢性疲労症候群などの疾患に苦しんでいる患者や、脳振盪後の症状が持続している患者には、今回のアプローチが効果を示すかもしれない。本治療法のマニュアルをいずれ入手可能にすべきである。このアプローチを導入するうえでの最大の障害は、このような患者に対するCBTに熟練した臨床医を見つけることにある。