復職前のリハビリテーション

受診される患者様の特徴を教えてください。

 クリニックの場所柄,サラリーマンやOLの方が多いですね。コンピュータ関係や教師などの専門職の方が多いのも特徴といえると思います。年齢層でいえば高齢者の患者さんは少なく,働く世代の20歳代から50歳代の患者さんが多いということです。近年,受診者が増加しており,特に軽症の方が多いように思います。その理由としてDSMやICDの導入によりうつ病の診断が広がってきたことも考えられますが,うつ病の患者数自体も増加しているのだと思います。

うつ病により休職となった場合の復職における考え方を教えてください。

 うつ病は再発が多いため,治ったからといって復職しても,再発して結果的にはまた休職ということになってしまうこともあります。それを防ぐために復職前のリハビリテーションを行う時代になってきています。リハビリテーションは職場再適応のほか,再発予防,増悪予防を目的としており,治療と並行して行います。例えばうつ病の治療初期では休息が大切ですが,患者さんは,家でぶらぶらしていることに罪悪感を覚えて休息できないまじめな性格の方が多く,その考え方を変えていくよう働きかけをします。再発のきっかけともなる休息できない理由はどこにあるのかということをご本人の体験に根ざして考え,復職後に適度に休息できるように軌道修正していくのが,私が行う治療的リハビリテーションの特徴です。復職前のリハビリテーションでどの程度職業的能力のレベルを高めていくかは職種や睡眠リズム障害など残遺症状の有無によって異なります。
 また,個人差はありますが,復職するまでの期間は約3~6か月を目安としています。

うつ病の薬物療法において,重要と思われる点は何でしょうか。

 まず,患者さんのうつ病のタイプをきちんと診断することです。近年では双極性障害のうつ状態の方も増えており,単なるうつ病の場合と薬物治療が異なってきます。診断がついたら,病気であることを患者さん自身に受け入れていただけるかということも大切です。それがクリアできないと,後々の治療に支障が表れます。また,患者さんの治療環境を把握することも大切です。十分な休息ができる環境か,家族や職場の人は協力的かなどを合同面接で確認し整備することが必要となります。
 薬物治療においては患者さんのコンプライアンスが重要となるため,やはり副作用が少ない薬剤を選択します。フルボキサミンは副作用が比較的少ないため,投与初期から維持期まで,一貫して使用できるところがよいと思います。ただ,フルボキサミンは投与初期の吐き気が問題となることがあり,私は最初からスルピリド(ドグマチール®)を併用しています。また,統計を取ったわけではありませんが,フルボキサミンでの維持療法を続けている患者さんでは,再発が少ない印象があります。