安倍首相は海江田代表にも、「近隣諸国でもし紛争が起こり、逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたときに、その船を守れなくていいのか」と、得意のせりふで反論した。だが、米軍は、こうした船には必ず護衛艦をつけていて、安倍首相が心配するような事態は現実には起き得ない。それは安倍首相自身、よく知っているはずである。  政府が、集団的自衛権が必要なケースとして具体的な事例をあげればあげるほど、矛盾に満ちてしまう。そして、ほとんどのケースは周辺事態法で対応できるはずなのだ。  官邸や自民党の要人たちを取材

 安倍首相は海江田代表にも、「近隣諸国でもし紛争が起こり、逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたときに、その船を守れなくていいのか」と、得意のせりふで反論した。だが、米軍は、こうした船には必ず護衛艦をつけていて、安倍首相が心配するような事態は現実には起き得ない。それは安倍首相自身、よく知っているはずである。
 政府が、集団的自衛権が必要なケースとして具体的な事例をあげればあげるほど、矛盾に満ちてしまう。そして、ほとんどのケースは周辺事態法で対応できるはずなのだ。
 官邸や自民党の要人たちを取材しても、集団的自衛権行使になぜ今、これほど熱をあげなくてはならないのか理解できない。行使が必要な緊急事態だとは思えないのである。
 現在の日米安保条約は、日本が危機に襲われたときは、米国の集団的自衛権を行使することになっている。ただし、米国が危機に襲われても、日本の自衛隊は動かない。片務条約である。いつまでも片務条約のままでは独立国として誇りが持てないから、双務条約にすべきだ。あるいは、世界の警察をやめたと公言している米国に参戦の念押しをするため、というのが安倍首相の本意ではないだろうか。