思考感情行動パターンを変化させられない理由

the transformation of unhelpful learned reciprocal role procedures 
that underlie our relationship with ourselves and other people

人間は困難に直面して
考えたり感じたり行動したりするのだが
そのパターンが困難に対して無効であるとき
いよいよ困難は深刻になる

現実が困難であっても
思考感情行動のパターンが困難に対して有効であれば
多少は希望が持てる

しかし無効であれば
思考感情行動を変化させなければならないだろう
何をどのように変化させれば
現実の困難に対して有効になるのか
そこを考えることが精神療法になる

無効な思考感情行動をなぜ続けているかを考えると
(1)それが無効であることを認識していない
(2)認識したとしても、代わりの思考感情行動が思いつかない
の二点が原因として大きいと思う

さらに、なぜ無効であることを認識して、変更できないかについては
簡単にいえば
偶然、これまでの経験の中に、現在の困難に対して必要なパターンがなかったというだけのことだと思う
パターンが無いので、無いパターンに関しては、何か他により有効なパターンがあるとは想像できないのだろう
現在のパターンは効率は悪いが、何か違うパターンがより有効であるとは考えつかない
無効だから変化させなければならないと心底は思わない
それが実情なのだろうと思う

思考感情行動パターンがどれだけその人に蓄えられているかについては
生育の歴史を読み解くことが必要である
その中で現在優勢なパターンがあり
代替するとすれば次に優勢となるであろうパターンがある

それを精神分析的に考えて、個人の発達史に従って各時期で蓄えられたパターンと考えてもいいし
それがCATの考えである

ジャクソニズム的に、脳の内部に層的に蓄えられた構造が、上位が機能停止すると、下位が機能発現すると
考えてもいいと思う
私はジャクソニズムの立場をとっている

一つの思考感情行動パターンが目前の問題に対してなぜ無効となるかを考えると
遅々とした歩みであっても、すこしずつ前に進んでいくなら解決の希望はある
しかしそうではない場合があり、前に進まない
その原因は

(1)悪循環・・・困難に対処するための思考感情行動パターンが原因となり、さらに困難を厳しくしてしまうタイプ
たとえば、社交不安障害があって閉じこもり、人と交流しないでいるとますます社交不安障害は悪化する

(2)二極対立・ジレンマ・アンビバレント・・・どちらにも動けなくなる。どちらかに動けば、どちらかの損失が大きくなりすぎる。
たとえば、過食嘔吐の場合、食べたいと太りたくないの二極対立があり、それを嘔吐という思考感情行動パターンでしか対応できない。

こうした事情があって
現在のパターンでは上手くいかないと結論が出たら別の思考感情行動パターンではどうかを検討すべきである
過去のどのパターンが応用できるか考える
そして自分の手持ちにないパターンが必要であればそれは今回新しくレパートリーの中に加えなければならない

(1)悪循環については、対策そのものが次の原因になるのであるからどうしても別の解決を採用したい
社交不安障害では「回避」という思考感情行動が改善すべき点である。別の思考感情行動パターンは「進んで経験」である。

(2)二極対立・ジレンマ・アンビバレントでは、どちらかを捨ててどちらかを選ぶということが現実的であると思うが
そうした二者択一ではなく別次元の解決がもたらされる場合もある
過食嘔吐では嘔吐という解決を採用しているのが問題なのであるから、「食べたい」と「太りたくない」の二極対立を解消する別の方法を考えることになる。食べたい原因はたいていは現在が不幸せだからである。不幸せの要因を取り除いていく努力を方向づける。

こうした変更がどうしてもできない場合
それはこれまで繰り返し議論されてきた論点だろうが
変更ができない、理由があるのである
むしろ、こうした、変更できない理由、または変更したくない理由のほうが大きな問題なのだ

自分の思考感情行動パターンは無効であると認識している、変化が必要であることも知っている、しかし、変えられない。
思考感情行動パターンが足りないならば増やせばいいと知っているがそれもできない。
それはなぜなのか、そこに大きな問題がある。

上記のようなメカニズムを説明して理解し、新しい思考感情行動パターンを身につけようと努力を始める人がいる一方で
それをしない人がいる
結局のところ、現状は最悪ではないと脳が判断しているのだろう
その最終的な価値判断については個人の自由という側面がある
治療の局面では治療契約の内容として
患者側が欲しいものと医療側が提供すべきと考えているものの一致があれば
治療契約の成立となる