治療抵抗性うつ病患者は双極性障害であるかもしれない Difficult-to-Treat Depressed Patients May Be Bipolar 薬物療法抵抗性のうつ病患者は非定型症状を呈することが多く、双極性障害を有するのではないかと臨床医が抱いてきた印象は正しいことを、大規模な全国規模データベースの解析結果は示している。 臨床上の経験や少数の観察研究から、治療抵抗性うつ病は認識されていない双極性障害に起因する可能性が示唆されてきた。台湾の住民およそ100万人が登録されている医療保険デー

治療抵抗性うつ病患者は双極性障害であるかもしれない
Difficult-to-Treat Depressed Patients May Be Bipolar
薬物療法抵抗性のうつ病患者は非定型症状を呈することが多く、双極性障害を有するのではないかと臨床医が抱いてきた印象は正しいことを、大規模な全国規模データベースの解析結果は示している。
臨床上の経験や少数の観察研究から、治療抵抗性うつ病は認識されていない双極性障害に起因する可能性が示唆されてきた。台湾の住民およそ100万人が登録されている医療保険データベースを用いて、本論文の著者Liらは、うつ病患者からなる連続年度別コホート(2000、2003年)を特定し、処方された抗うつ薬の種類数を指標に治療抵抗性を評価した。さらに、治療抵抗性の程度とその後5〜8年間に診断名が双極性障害に変更される割合との関連について研究者らは検討した(精神科医が診断を見直す機会は2回以上あった)。
治療抵抗性がもっとも高い患者群(抗うつ薬を2回以上変更)では、およそ25%の割合で診断が双極性障害に変更された。治療抵抗性がもっとも低い患者群(抗うつ薬非使用者)に比べ、治療抵抗性が最高度の患者群(オッズ比[OR]=1.88[コホート2000],OR=4.94[コホート2003])および治療抵抗性が中等度の患者群(抗うつ薬変更が1回のみ,OR=1.63[コホート2000],OR=2.91[コホート2003])では診断の変更率が有意に高かった。これらの結果に関して、併存する精神疾患、年齢、性別は有意な寄与因子ではなかった。入院回数を指標とする病型分類では、双極Ⅰ型障害の診断例はきわめて少なかった。
コメント
著者らは大規模な全国規模のデータベースを用いることにより、これまでの同様の検証を試みた観察研究に内在していた(訳注:双極性の判断に関する)研究者バイアス(investigator bias)を最小限に抑えたうえで、治療抵抗性うつ病患者のおそらく1/4は双極性障害を有するという説得力のある主張を展開した。これらの患者の多くは発見しやすい双極Ⅰ型障害ではなく、より診断が困難である双極Ⅱ型障害または非定型的な双極性障害と思われる。双極性障害の診断を示唆する徴候はとらえにくいが、治療抵抗性うつ病患者の診療において臨床医はこれらの診断マーカーを積極的に調べる必要がある。