精神療法

精神療法を定義すると、科学的に実証された心理的技法や介入法により、困っている人の認知、感情、行動を変化させることと言えるだろう。
自分の行動の結果に困っている人もあるし、そのことで他人を困らせている場合もある。いずれにしても、行動を変えたいと願う。
精神療法にもいろいろあるが、すべての精神療法に共通の要素を考え、さらにその中心となるものを考えると、学習したり経験したりすることによって人間は変化・成長し、いままでとは別の行動様式を採用し、対人関係ストレスやその他の自分にとって不都合なストレスを緩和できるという考え方をあげることができる。
人間はストレスを克服できるのである。
背景となる障害の発症時期、持続期間、重症度によって、そうした試みの成功の可能性は様々ではあるとしても、試みることには価値があるだろう。
精神療法家には広く知られたことであるが、治療理論そのものには、患者の現在持っている不適応な戦略を変更させる十分な力はない。
大切なのは患者が現在の戦略と別の戦略の違いを実感することである。最初は想像の中で起こるだろう。そして治療が進行するにつれて徐々に実生活の経験の一部となるだろう。
精神療法の効果としては、長く持続する脳活性化をもたらす可能性があり、特に一番新しく進化した皮質中央部構造を活性化する。この皮質中央部には自己と他者の表象に関係する部分がある。また系統発生的に古い脳の中枢は感情調整に関係しているが、この部分をも活性化することが分かっている。。
どんな種類の精神療法もヒトという種の心理の進化に深く根ざしていることが、明白にというよりは暗黙のうちに、精神療法家によって証明されてきた。
しかしながら、自己と他者の心理的表象は対人関係葛藤または人格内葛藤の中核であり、さらにまたそれらの葛藤解決の中核である。
他者の心理状態を推測し、将来の行動を予測する能力は、人間の脳の進化の主要な推進力であったし、同時に、心理的な障害を引き起こす認知の歪みの源泉でもある。