喘息患者 自己評価はプラセボでも大きく改善

NEJM誌から

喘息患者の自己評価による症状改善は信用できない

1秒量の結果と異なり、自己評価はプラセボでも大きく改善

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 喘息治療では、主観的な症状改善度においてプラセボ偽薬)効果が非常に大きいことが、米Harvard大学医学部のMichael E. Wechsler氏らが行った無作為化試験で明らかになった。論文は、NEJM誌2011年7月14日号に掲載された。

 様々な病気の治療において、プラセボ効果の存在が示されている。しかし、臨床試験では、偽薬群は設定されるものの、治療なしという割り付けが行われることはまれであるため、偽薬に対する反応が、介入なしの状態で認められる自然な生理的変化と同じかどうかを判断することは難しい。

 そこで著者らは、喘息患者を対象に、気管支拡張薬、2通りのプラセボ(偽薬の吸入またはシャム鍼治療)、介入なしのそれぞれが症状に及ぼす客観的な影響と主観的な影響を比較する予備的なクロスオーバー試験を、07年1月から08年12月まで実施した。

 アルブテロールに反応することを確認した軽症から中等症の喘息患者46人を登録。アルブテロール吸入(二重盲検)、偽薬の吸入(二重盲検)、シャム(Sham)鍼治療(単盲検)、介入なし(盲検化せず)のいずれかを適用することにした。

 3~7日おきに受診を依頼し、連続する4回の受診時に、上記の4通りのいずれかの治療をランダムな順番で行い、これを1ブロックとして、同様にさらに2回繰り返して、4通りの治療を患者1人につき3回ずつ実施した。受診時には肺活量を毎回測定、治療後の1秒量(FEV1)の改善を評価した。また、患者の自己評価による改善度(0の「改善なし」から10の「完全回復」まで11段階で評価し、スコアを10倍して%表示に変換)を記録した。加えて、行われた治療が偽薬または実薬、シャム鍼または治療効果のある鍼治療のいずれだと思うかを尋ねた。割り付けごとに患者全体の評価結果の平均を求めた。

 39人の患者が試験を完了した。

 アルブテロールはEFV1を20.1±1.6%増加させたが、それ以外の3群の改善はいずれも約7%だった(偽薬吸入群が7.5±1.0%、シャム鍼群は7.3±0.8%、介入なし群は7.1±0.8%、いずれもアルブテロール群との差は有意でP<0.001)。治療に対する反応を評価する標準的な基準では、FEV1の改善が12%以上を「反応あり」としており、アルブテロール以外の割り付けで見られたFEV1の改善は効果があったと言えるレベルではなかった。つまり、客観的な評価ではプラセボ効果は認められなかった。

 一方、患者の自己申告による改善レベルは、アルブテロール群が50%、偽薬吸入群が45%、シャム鍼群が46%で、介入なし群の21%に比べるといずれも有意に良好(P<0.001)だった。介入なし群以外の3群の改善レベルの差は有意ではなかった。

 患者は多くがプラセボでなく効果のある治療を受けていると考えていた。その割合は、アルブテロール吸入では73%、偽薬吸入では66%、シャム鍼は85%だった。

 アルブテロール群と異なり、偽薬吸入群とシャム鍼群では、介入なし群と同程度にしかFEV1が改善しなかったにもかかわらず、自己評価による改善レベルは、アルブテロールが用いられた時と同様だった。したがって、臨床管理の面からみると、患者の自己評価は信用できないと考えられた。

 著者らは、「日常診療においては客観的な改善を評価しながら治療を調節する必要がある。臨床試験においては、介入群に対する対照群として、プラセボ群に加えて未治療群を設定することが、主観的な改善レベルを評価するためには必要だろう」と述べている。

 原題は「Active Albuterol or Placebo, Sham Acupuncture, or No Intervention in Asthma」、概要は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。