中米グアテマラで受刑者や精神障害をもつ患者を故意に性病に感染させて実施した新薬研究

【8月30日 AFP】1940年代に米国の公衆衛生局(PHS)の研究者たちが、中米グアテマラで受刑者や精神障害をもつ患者を故意に性病に感染させて実施した新薬研究について、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の命を受けた調査委員会は29日、少なくとも83人が「人間モルモット」として死亡していたとする調査結果を発表した。
 調査委員会は前年11月に発足して以降、1946~48年にかけて米国がグアテマラで行ったペニシリンの効果を調べる研究に関する書類12万5000点を精査した。この結果、約5500人に上る人びとが診断検査の対象とされ、その中で1300人超が対人接触あるいは予防接種によってわざと性感染症に感染させられていたことが明らかになった。
 委員の1人、スティーブン・ハウザー(Stephen Hauser)氏は「委員会では、うち83人が死亡したと考えている」と述べた。また記録に残っている限りで、何らかの治療を受けたことが確認できるのは700人を下回っていた。
 オバマ大統領は前年10月、この件に関する徹底調査を命じる前に、グアテマラのアルバロ・コロン(Alvaro Colom)大統領に直接謝罪した。コロン大統領は、この実験は「人道に対する罪」だと非難し、独自の調査を命じた。
■故意に感染させてペニシリンの予防効果を調べる
 調査委員会は、グアテマラで精神障害の患者たちを意図的に梅毒に感染させることが倫理的基準に違反することを、米政府の研究者たちが分かっていなかったわけがない、と批判した。
 エイミー・グットマン(Amy Gutmann)委員長は「グアテマラで起こったことは偶発的なことではない。関与した人の一部は、わが国の中であれば同じことはできなかっただろうと述べている」と語った。また米国の科学者たちは「この研究の実施にあたって、組織ぐるみで最小限の人権や道徳規範さえ尊重しなかった」上、隠ぺいを試みた証拠さえあると糾弾した。
 この実験は、PHSの故ジョン・カトラー(John Cutler)医官が指揮していたもので、2010年に米ウェルズリー大学(Wellesley College)のスーザン・レバビー(Susan Reverby)教授が未公開資料を発見して明らかになった。ペニシリンに性感染症の予防効果があるかを調べるためグアテマラで精神障害の患者や軍の兵士、受刑者など1500人を故意に性病に感染させたが、被験者には研究の詳しい内容や危険性は一切伝えられていなかった。
 2003年に死去したカトラー医師は米国で1932~72年の40年間にわたり、梅毒患者の黒人男性数百人に治療を施さず、経過観察をした「タスキジー実験(Tuskegee Experiment)」にも関わっていた。(c)AFP