不眠症について

【不眠症の原因(5つのP)】
1.身体的原因(physical)
 ・疼痛、痒み、頻尿、呼吸困難などをもたらす身体疾患
 ・熱性疾患
 ・腫瘍
 ・血管障害
 ・心疾患
 ・消化器疾患
 ・内分泌/代謝疾患
 ・中枢神経疾患
 ・喘息/慢性閉塞性肺疾患
2.生理学的原因(physiologic)
 ・ジェットラグ/時差ぼけ
 ・交代制勤務
 ・短期間の入院
 ・不適切な睡眠習慣
3.心理学的原因(psychological)
 ・精神的ストレス
 ・重篤な疾患による精神的ショック
 ・生活状態の大きな変化
4.精神医学的原因(psychiatric)
 ・アルコール依存症
 ・不安神経症
 ・パニック障害
 ・うつ病
 ・統合失調症
5.薬理学的原因(pharmacologic)
 ・アルコール
 ・MAO阻害薬
 ・抗癌剤
 ・ニコチン
 ・降圧剤
 ・ステロイド剤
 ・自律神経作用薬
 ・テオフィリン
 ・カフェイン
 ・甲状腺製剤
 ・中枢神経作用薬
【睡眠障害対処12の指針】
1.睡眠時間は人それぞれ。日中の眠気で困らなければ十分と考えましよう。
 ・睡眠の長い人も短い人もいます。季節でも変化します。8時間にこだわらないことです。
 ・最近の都市部サラリーマンでは平均6時間程度。5時間よりも短くなると悪影響が出ると考えられています。
 ・歳をとると必要な睡眠時間は短くなります。
2.刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
 ・就床時4時間のカフェイン摂取、就床時1時間の喫煙は避けましょう。むしろ喫煙はいつでも避けましょう。
 ・軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニングなどが勧められているようです。自分なりで。
3.眠たくなってから床に就く、就床時間にこだわりすぎない
 ・眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くするので、3日くらいをトータルで考えましょう。
4.同じ時刻に毎日起床
 ・早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じると考えます。眠くても朝起きてしまうことで人生得をします。
 ・日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる、と分かっているのですが、休日に寝だめをします。
5.光の利用でよい睡眠
 ・目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン。朝はお部屋に光が入るといいですね。
 ・夜は明るすぎない照明を。強い光を朝に浴びるという治療法があります。
6.規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
 ・朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く済ませましょう。ダイエットにも効果的です。
 ・運動習慣は熟睡を促進します。
7.昼寝をするなら、15時前の20~30分
 ・長い昼寝はかえってぼんやりのもとと言われています。20分位がいいでしょう。
 ・夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響を与えます。むしろ夜にまとめてねむりましょう。
8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
 ・寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減るので、短く深く眠るのも方法です。ここでも早起きがポイントです。
9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
 ・背景に睡眠の病気があることがあります。専門の検査と治療が必要になります。肥満治療も大切です。
10.十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
 ・長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談します。
 ・車の運転に注意しましょう。専門職で注意集中を要する人はなおさら気をつけましょう。
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
 ・睡眠薬代わりの寝酒はよくありません。深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となります。
 ・Alcoholは寝付きを良くしますが、睡眠の質を悪くしてしまいます。注意しましょう。
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
 ・一定時刻に服用し就床します。
 ・睡眠薬を飲んでからメールや電話をして思いがけないことになることがあります。飲んだら寝ましょう。
 ・アルコールとの併用をしないことが大切です。
【わが国で使用されているおもな睡眠薬の分類】
作用時間として分類すると
①超短時間作用型
②短時間作用型
③中間作用型
④長時間作用型
があります。
【不眠症タイプによる睡眠薬・抗不安薬の選び方】
・神経症的傾向が弱い場合・脱力・ふらつきが出やすい場合(抗不安作用・筋弛緩作用が弱い薬剤)
 入眠障害(超短時間型、短時間型)・・・ゾルピデム(マイスリー) ゾピクロン(アモバン)
 中途覚醒、早朝覚醒(中時間型、長時間型)・・・クアゼパム(ドラール)
・神経症的傾向が強い場合・肩こりなどを伴う場合(抗不安作用・筋弛緩作用を持つ薬剤)
 入眠障害(超短時間型、短時間型)・・・トリアゾラム(ハルシオン) ブロチゾラム(レンドルミン) エチゾラム(デパス)、マイスリー など
 中途覚醒、早朝覚醒(中時間型、長時間型)・・・フルニトラゼパム(サイレース) ニトラゼパム(ベンザリン) エスタゾラム(ユーロジン) など
・腎機能障害、肝機能障害がある場合(代謝産物が活性を持たない薬剤、一回で代謝されてしまう薬剤)
 入眠障害(超短時間型、短時間型)・・・ロルメタゼパム(ロラメット、エバミール)、ロラゼパム(ワイパックス)
・メラトニン系の軽度睡眠治療剤としてロゼレム
・ラボナ、セロクエル、デジレル、リフレックス、レメロンなどが有効な場合がある。
・漢方薬でも何種類か使うことができる。
・ほとんどの薬剤でジャネリックが用意されているので使用可能である。水なしで使えるものもある。半分や1/4だけというように分割しやすくできているものもある。
・市販薬の中には抗アレルギー剤の眠気を利用しているものもある。古いものほど眠い。布団の中で背中などが痒くて眠れないという場合にはアタラックスPなどがちょうどよい選択になります。
【持続期間別にみた不眠症の分類】
1.一過性不眠
 持続は数日、平生は睡眠が正常な人が、急性のストレス状態(不安、痛み、旅行、外科手術前夜など)に遭遇したときに起こるものです。
2.短期不眠
 持続は1~3週間。状況的ストレスといって、やや長く続くストレス、例えば仕事や家庭生活上のストレス、重い身体病、交代勤務者の勤務時間帯の変化、時差ぼけなどによって起こります。
3.長期不眠
 持続が3週間以上の本格的不眠です。次のような種類があります。
 1)精神生理性不眠(神経質性不眠)
   性格要因、条件反射的要因などによるもので、明確な原因疾患はありません。
 2)身体疾患(内科的疾患など)に伴う不眠
   睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動、レストレス・レッグス症候群、消化性潰瘍、高血圧、心疾患、関節炎、腰痛、皮膚疾患、前立腺肥大、頻尿などで見られます。
 3)中枢神経疾患に伴う不眠
   脳血管障害、パーキンソン病、レム睡眠関連行動障害が代表的です。
 4)精神科疾患に伴う不眠
   うつ病、不安性障害、統合失調症、老年期認知症、夜間せん妄、その他いろいろあります。
 5)アルコール・薬物使用に関連する不眠
   アルコール、睡眠薬などの依存、離脱、各種治療薬による不眠(中枢刺激薬、甲状腺剤、ステロイド)など。
 6)老人性不眠
   加齢に伴う生理的睡眠障害、多相性睡眠型(一日に何度も寝たり起きたり)、社会・環境因子など。
 7)概日リズムに関連した不眠
   ジェット時差症候群、交代制勤務、睡眠相後退(前進)症候群など。睡眠日誌をつけるとよく分かります。
【持続期間別にみた不眠症に対する睡眠薬の選び方】
・一過性不眠・・・超短期型~短期間作用型(1~3晩までの頓用)
・短期不眠・・・超短期~短期間作用型(頓用か間欠的使用)
・長期不眠・・・
1.不安・緊張のない症例・・・超短期型~短期間作用型(1週間以内)
2.不安・緊張の強い症例
・・・①抗不安薬使用例・・・超短期間~短期間作用型(連用(可及的短期))
・・・②抗不安薬非使用例・・・中間~長時間作用型(連用(可及的短期))
【睡眠薬の離脱方法】
A.投与量を徐々に減らす
B.休薬期間を徐々に伸ばす
C.AとBを組み合わせる
【睡眠薬の副作用】
1.持ち越し効果
 睡眠薬の効果が翌朝以降も持続して出現するために、日中の眠気、ふらつき、脱力・頭痛、倦怠感などの症状が出現します。原則として、作用時間の長いものほど出現しやすく、高齢者ほど出やすいことになります。
持ち越し効果が強い場合には、睡眠薬を減量するか、作用時間の短いものへの変更を行います。
2.記憶障害
 前向性健忘であり、服薬後から寝付くまでのできごと、睡眠時に起こされた際のできごと、翌朝覚醒してからのできごとに対する健忘を認めるものです。睡眠薬の用量依存性に健忘作用も増強しますが、催眠作用が強く作用時間の短いものを多く使用すると起こりやすくなります。アルコールとの併用時に特に出現しやすいため、けっして併用しないようにしましょう。予防するには、睡眠薬は必要最低限の用量とし、服用後は大事な仕事を避け、できるだけ早く就床することにしましょう。
3.早朝覚醒
 超短期間作用型や短期間作用型の睡眠薬では、早朝に作用がきれて早く目が覚めてしまうことがあります。対策としては、作用時間のより長い睡眠薬への変更を考えましょう。
4.反跳性不眠・退薬症候
 睡眠薬を連用してよく眠れるようになった時に服用を突然に中断すると、以前よりさらに強い不眠が出現することがあります。作用時間の短い睡眠薬ほど起こりやすいのですが、脳障害のある場合には不眠だけではなく、不安・焦燥、手指振戦、発汗、せん妄、けいれんなどの退薬症候が出ることもあります。睡眠薬を離脱する場合には、急に服用中断するのではなく、少しずつ減量していく漸減法を行うようにしましょう。
これでうまくいかない場合には、いったん作用時間の長い睡眠薬に置き換えた上で漸減法を行います。最近のω1の選択性の強い睡眠薬では反跳性不眠が出現しにくいと言われています。
5.筋弛緩作用
 作用時間の長い睡眠薬で比較的強く出現します。ふらつきや転倒の原因となることがあります。特に高齢者では、この作用が強く出やすいため、転倒とそれによる骨折に注意が必要です。高齢者ではω1選択性の強い睡眠薬など、筋弛緩作用の少ない睡眠薬を使用する必要があるでしょう。
6.奇異反応
 ごくまれに睡眠薬を投与してかえって、不安・緊張が高まり、興奮や攻撃性が増したり錯乱状態となることがあります。この奇異反応は、高用量を用いた場合に起こりやすいとされていますが、特に超短時間作用型の睡眠薬とアルコールとの併用時の報告が多いようです。その意味でも、薬は最低限、Alcoholと併用せず、を守りましょう。
【睡眠薬の正しい使用のために】
1.お酒と一緒に使用しないでください
 お酒と一緒に服用すると、アルコールと睡眠薬の両方の作用が強まります。ひどいふらつき、一時的な記憶障害、もうろう状態などの副作用が出現することがありますので、併用はやめましょう。
2.適切な時刻に服用してください
 睡眠薬は自然な睡眠のリズムに沿って服用してください。夕方のうちから服用しても眠気は得られませんね。かえってふらついたりすることがあります。
3.空腹時は薬がなかなか効いてきません
 極端に空腹だと胃腸の運動が減り、睡眠薬の吸収が悪くなります。夕飯は普通に食べてください。ある種の胃腸薬は睡眠薬の作用の吸収を遅らせたり増強したりしますので注意しましょう。
ほかの病気で服用中の薬については必ず主治医に伝えてください。薬剤相互作用があることがあります。
4.服用後は速やかに床に入りましょう
 睡眠薬の種類や年齢によって多少異なりますが、服用してから、20~60分で効果が出はじめます。睡眠薬を服用した後に長く起きて活動していると、十分な効果が得られないだけでなく、ふらつきや健忘などがみられることがありますので、気をつけましょう。薬を飲んだら何もしないで眠りましょう。
5.効果がなかったり、副作用があったときには速やかに主治医に申し出てください
 睡眠薬にはたくさんの種類があり、患者さん1人ひとりに合ったものが見つかるまで、何種類かを試す必要があることもしばしばです。ためらわずに、副作用や薬の効果について医師に伝えてください。
6.服用は医師の指示を守り、自分の判断で増減したり、ほかの人とやりとりしないでください
 急に薬の量を増やしたり、中断したりすると、かえって眠れなくなることがありますので、医師の指示を守ってください。同じ睡眠薬でも1人ひとりその効果が違いますので、ほかの人と睡眠薬のやりとりをしないでください。法律でも禁止されています。
【高齢者への投与法】
 高齢者に対しては吸収が早く、筋弛緩作用が弱く、代謝産物が活性を持たない睡眠薬を、若年者の半分程度から投与することが推奨されています。不眠のタイプに応じて、入眠障害が主体であれば超短時間型、中途覚醒・早朝覚醒主体であれば短時間型から中時間型睡眠薬から開始します。作用時間が長い睡眠薬は、投与開始後数日間かけて体内に蓄積します。このため、服薬開始後数日たってから、副作用の問題が出現してくることが多くなります。このような長時間型睡眠薬を使用するときは、不眠をすぐに改善しようとせず、数日間は薬剤の効果を見極めることが必要です。増量する際には、筋弛緩作用によるふらつき、持ち越し作用による日中の眠気がないことを確認の上、少しずつ増量するようにします。効果がない場合は、精神科あるいは睡眠障害専門医が治療にあたります。