理化学研究所 不服申立てに関する審査の結果の報告

理研に流れ込む使い切れないお金”独立行政法人理化学研究所(以下、理研)が過去に驚くべき高級家具を購入していたことが判明。その家具はイタリア高級家具カッシーナの物で2011年の3月18日に487万2000円で購入している。
具体的な名目は次の通り。
幹細胞研究開発棟2Fセミナー室等什器類 平成23年3月8日 (株)カッシーナ・イクスシー 4,672,500幹細胞研究開発棟2階交流スペース及び居室用什器 平成23年3月18日 (株)カッシーナ・イクスシー 4,872,000
467万2500円と487万2000円のカッシーナ家具を分割購入していることが判明。計954万4500円のカッシーナ家具を購入していた。理研といえば国民で税金で運営している法人である。その税金を研究費とはほど遠い数百万円の家具に使い込む理研。
年度末ということもあり、余ったお予算をこれらカッシーナに投じたともみることができる。また同年3月2日には談合が行われていたという情報も入っている。しかし聴取の結果「一部の対象者から事情聴取はできていないが、概ね完了した現段階で、談合が行なわれた事実、不正が行なわれた事実等は認められていない」という結論を出している(下記URL参照)。
表向きは「一般競争入札」と入札している形を取っているが、それで数百万円のカッシーナに決まった経緯などが理解できないのである。1000万円あれば研究機材に回すのが普通だろう。一般競争入札で数百万円のカッシーナでなければいけない理由はないはず。”ーーーーーーーーーーーーーーーーー-1-  平成 26年 5月 7日 独立行政法人理化学研究所 理事長 野依良治 殿  研究論文の疑義に関する調査委員会 委員長 渡部 惇 委員 岩間 厚志 古関 明彦 眞貝 洋一 田賀 哲也  不服申立てに関する審査の結果の報告  平成 26年 4月 9日に研究所より依頼のあった、研究論文の疑義に関する調査委員会による調査結果に対する不服申立てに関する審査について報告する。  審査結果:  平成 26 年 4 月 8 日付けによる不服申立てについては、4 月 20 日付けの不服申立についての理由補充書(1)と 5 月 4 日付けの不服申立についての理由補充書(2)を合わせ、調査委員会では不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、平成 26 年 3 月 31 日付け「研究論文の疑義に関する調査報告書」における調査結果に対して、再調査は不要と判断する。  理由: 第1 改ざんについて  1 規程における「改ざん」の定義について (1)「改ざん」について 規程第 2条第 2項は、「この規程において「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。」として、「捏造」、「改ざん」及び「盗用」の 3類型をあげ、「改ざん」については、「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」としている。  したがって、研究資料等に操作を加え、データ等の変更等の加工により、結果が真正なものでないものとなった場合には、「改ざん」の範疇にあることとなる。  (2)「悪意」について 規程によれば、研究不正の範疇にあるものについて、悪意があるか否かを判断することになるところ、「悪意」とは、客観的、外形的に研究不正とされる捏造、改ざん又は盗用の類型に該当する事実に対する認識をいうものと解する。したがって、規程によれば、研究不正は、この認識のある態様のものについてこれを研究不正とすることとなる。 -2-  悪意を害意など、上記の認識を越えた加害目的に類する強い意図と解すると、そのような強い意図がある場合のみに規程の対象とすることになるが、その結果が、研究論文等の信頼性を担保するという規程制定の目的に反することは明らかである。とすれば、「悪意」とは、国語辞典などに掲載されている法律用語としての「知っていること」の意であり、故意と同義のものと解されることになる。この点について、不服申立て者においても、例えば、「画像を誤って取り違えた。異なる画像を故意に掲載したものではない。」として、「故意」という言葉を使用しているところである(不服申立書 17ページ)。  (3)規程は、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて−研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書−」(平成 18年 8月 8日、文部科学省 科学技術・学術審議会 研究活動の不正行為に関する特別委員会)に準拠しているところ、研究所の研究活動に従事する者に係る研究不正に関する定義(「捏造」、「改ざん」、「盗用」、「悪意」)については、研究所の規程に基づき判断することとなる。  2 「改ざん」の範疇にある行為であるか否かについて (1) 不服申立て者は、 ・「改ざん」は、良好な結果を示すデータが存在しないにも関わらず、良好な結果を示すデータが存在するように見せかけるために、データについて変更や省略を行うものである、良好な結果を示す架空のデータを作出することに「改ざん」の本質がある ・「研究資料、試料、機器、過程に操作が加え」られ、「データや研究結果の変更や省略」が行われても、そのために「研究活動によって得られた結果等」が虚偽のものに加工されたのではない場合には、「改ざん」ではない ・本件では、良好な結果を示す良好なデータが存在するので、不服申立て者の行為は、改ざんに該当する行為ではない などと主張し、ポジティブコントロールを見やすいものにする操作を加えたからといって、結果自体は、何らの影響も受けないなどとする(不服申立書「第2、1」、同「第2、2」、及び補充書(1)「第2」等)。  (2)上記第1、(1)において述べたとおり、改ざんとは、研究資料等に操作を加え、データ等の変更等の加工により、その結果が真正なものでないものになった場合、改ざんに該当するものである。すなわち、本件について言えば、操作や変更等の加工により、Figure 1i という研究活動によって得られた結果が真正でないものとなったかどうかという点が本質である。不服申立て者が述べる、良好な結果を示すデータが存在しないにもかかわらず、変更や省略を行うことによって、良好な結果を示す架空のデータを作出したり、研究活動によって得られた結果等を虚偽のものに加工するような事例は、研究不正の典型例であるが、良好な結果を示すデータがあったとしても、操作や変更等という加工により、Figure 1iが真正でないものとなった場合には、改ざんの範疇にあることとなることはいうまでもない。 そこで、以下、ポジティブコントロールを見やすいものにする操作を加えたからといっ-3-  て結果自体は何らの影響も受けないなどとする不服申立て者の各主張について、判断の結果を述べる。  ア レーン3の挿入に対する主張について (ア)不服申立て者において、 ・T細胞が成熟していく過程では、DNA が短くなるという現象が見られるので、成熟したT細胞が含まれているか否か(T細胞受容体再構成が生じた細胞が含まれているか否か)、すなわち、DNA が短くなるという現象が生じているか否かを「sorted-Oct4+」について見られるかを実証するためにパルスフィールド電気泳動を行った ・その結果、「sorted-Oct4+」について、「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」を得た ・論文1に掲載するにあたり、画像を見やすいように、実験の結果得られた2枚のゲル写真に操作(ポジティブコントロールを見やすいものにする操作)を加えたからといって、この「DNA が短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」自体は、何らの影響も受けない ・したがって、「研究活動によって得られた結果等」を虚偽にするものでもなく、「真正でないものに加工する」ものではない 旨、主張する(不服申立書「第2、3」、同「第2、4」及び補充書(1)「第2」等)。  (イ)ゲル1の写真の標準 DNAサイズマーカーの泳動度がゲル2のそれに比して約 1.6分の 1 であることから、不服申立て者はゲル1の縦横比を同一比率ではなく別異の比率で縦方向に一定倍率伸ばした態様にした上で、ゲル2のT細胞受容体遺伝子再構成ポジティブコントロールを示すレーン3を挿入しているが、ゲル1とゲル2の間には、泳動に関する直線性の完全な一致は見られない。 論文1の methods の記載どおりにおこなわれた PCRであり、また、不服申立て者が当初主張したように、泳動に関する直線性が担保されるならば、ゲノム配列から予測される 180塩基対前後であるはずのT細胞受容体遺伝子再構成バンドの計算上のサイズが、ゲル1においては 262.0 塩基対(約 46%増)であるのに対し、ゲル2においては 284.8 塩基対(約58%増)となり、計算上の DNA サイズに 8.4%の差異が生じる。また、ジャームライン(GL)バンド(論文 1 ではレーン3には見えないが、ゲル2上ではコントラスト補正により見える。)にも、ゲル1とゲル2では計算上のサイズに 8.5%の差異が生じている。一方、レーン3に見えるところの他のバンドには、かくも大きな差異は見られない(1%未満)。この観察と合致して、不服申立て者が主張するように標準 DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてポジティブコントロールレーンであるレーン3を配置しようとしても 180 塩基対前後であるはずのバンドの位置が一致しないこと、逆に、論文 1の Figure 1i のようにT細胞受容体遺伝子再構成バンドの位置を配置した時には、ゲル1とゲル2の標準 DNAサイズマーカーバンドの位置関係に明らかなずれが生じる。これらは、ゲルの違いや電気泳動条件の違いにより、ゲルごとに泳動に関する直線性が担保される分子量の範囲が変化するという、分子生物学実験に従事する研究者において広く知られるところであり、それ故に標準 DNA-4-  サイズマーカーの並列が電気泳動を行う各ゲルにおいて必要とされるところである。 これらのことは、泳動距離が約 1.6倍異なるとするゲル2から挿入されたレーン3が「目視」によってレーン4や5と類似したパターンになるように貼り付けることができたとしても、そこに付随している情報であるバンドの計算上のサイズには明らかな乖離があり、その差異が隠されていることを意味する。  (ウ)不服申立て者は、さらに、「この画像が示すものは、定量ではなく定性的な事実を示すものであり、コントラストを調整しても結果に影響しない」とも主張する(不服申立書「第2、6」)。 しかしながら、もともとのバンドの大きさの証明があることを前提として、再構成のポジティブコントロールとしての役割が担保されるものであるところ、上述の態様で図を加工したことにより再構成を示すバンドの計算上の分子量に関する正確な情報が失われ、定性性についても真正であるということができなくなったと言わざるを得ない。  イ 挿入方法及び挿入位置について (ア)不服申立て者は、ゲル2写真を縮小しており、また、不服申立て者による挿入位置の説明についても誤りがないと主張する(不服申立書「第2、6」 等)。  (イ)拡大したかそれとも縮小したかは、どちらのゲル写真を前提とするかにより異なるものの、相対的な問題であって、前提が異なることは判断の結果に影響を与えるものでない。 ゲル1とゲル2の中に複数の不定形の埃様のスポット群が存在する。それらの形態を考察すると、アセンブリされた図において、ゲル1の写真に由来する部分の縦横の比を同一ではなく異なるものにしているところ、ゲル2に由来する部分についてはそのような比率の変更は認められない。不服申立て者の主張どおりであるならば、ゲル2に由来する部分のレーン3の縦横の比の変更が認められるはずであるが、ゲル2と同じ縦横の比率である。このことは、どちらのゲルを拡大縮小したのかに関する不服申立て者の説明に合致しない。ゲル 1の写真を横方向に縮めるか縦方向に引き伸ばさないと論文 1の図にならない。  ウ 再構成 DNA バンドの領域について (ア)不服申立て者は、GL バンドの下方から伸びる再構成 DNA バンドの領域について、GL バンドよりも上方も、再構成 DNA バンド領域よりも下方(分子量が小さい)も、本件画像においては注目するものではなく、このようにして作成した画像は、泳動度や DNAサイズの科学的な関係性を崩すものではない旨、主張する(不服申立書「第2、6」)。  (イ)しかしながら、2つのゲルの標準 DNA サイズマーカーと移動度をプロットすると、2つのゲルの電気泳動では、直線性が担保される分子量の範囲が異なる。しかも、T細胞受容体遺伝子再構成バンド群のうち、最も小さいサイズ(180 塩基対)のものと GLバンドが直線性の範囲外であるのは前述のとおりである。それと一致して、どのように縮尺を変えたとしてもゲル1とゲル2の標準DNAサイズマーカーの全てを一致させることはできない。 -5-  GL バンドよりも上方や、再構成 DNA バンド領域よりも下方について問題があるとしているのではない。再構成 DNAバンドと主張するバンドを、真正さの根拠となるべき分子量に関する正しい情報を有しない形で用いたことが、問題であるとしているのである。  エ 位置ズレは生じない(2度の傾き問題)について (ア)不服申立て者は、ゲル2の写真は左方向に約2度傾いている、ゲル2の写真を2度右方向に回転するとゲル1写真とゲル2写真の標準DNAサイズマーカーのバンドの位置は、ことごとく一致することを確認した旨、主張する(不服申立書「第2、6」)。  (イ)ゲル2の傾きについては、もとより委員会が認識していたものであり、「イ 挿入方法及び挿入位置について」における縦横の比率の検証も、これを考慮して行ったものである。約2度の傾きの有無は、ゲル1とゲル2の間に、標準 DNAサイズマーカーの泳動に関する完全な直線性の一致が見られないという判断に影響しない。不服申立て者の主張するように、「目視」という方法でポジティブコントロールレーンを見かけ上配置して合わせることは可能であるが、前述のとおり、再構成バンドの大きさについて科学的根拠はなく、データの真正さを欠くという結論は変わらない。  オ 以上のとおり、上述したように、科学的な考察と手順を踏まないで再構成 DNA バンドを目視で配置するなどしたことにより、Figure 1i が真正なものではないものとなったことは明らかである。 なお、不服申立て者は、結果的に表示方法において不適切な面があったが、訂正の原稿を Nature 誌に提出している、Nature 誌から、訂正の申し入れに対して、レーン5 のデータの右に少しスペースをおいて並べることを求められた、こうした措置は定性的な解析の場合に適用されるものであるなどと説明する。しかしながら、上述したように、定性性が失われていることを無視した前提での、議論であり訂正の申し入れである。  3 悪意があることについて (1) 不服申立て者は、 ・データの誤った解釈へ誘導する危険性を認識しながらなされた行為ではない ・不服申立て者の認識ないし意図としても結果を偽装するために行ったものではな い などと主張し、悪意がないと主張する(不服申立書「第2、3」、同「第2、4」等)。  (2)しかしながら、前述したとおり、「悪意」とは、客観的、外形的には研究不正とされる捏造、改ざん又は盗用の類型に該当する事実に対する認識をいうものであって、「悪意」とは法律用語としての「知っていること」の意であり、故意と同義のものと解される。不服申立て者においても、「故意」という言葉を使用していることは、前述したとおりである。  ア 不服申立て者は、見えやすいバンド(再構成 DNAバンド)を示したほうがいいとの目的で、上記2、(2)で詳述した、再構成 DNA バンドを目視で配置するなどの行為に及ん-6-  だことを認めている。 すなわち、不服申立て者は、 2月 20日に「きれいにバンドが出ているゲルをバンドサイズで完璧に大きさを合わせた状態で、元のゲルのポジティブコントロールの上に重ねた」旨、説明していたところ、同月 28日には「横方向に縮めたものを元の画像に合わせる、あるいは縦方向に伸ばしたものを元の画像に合わせる形にしているかと思われるが、実際に合わせたのはモレキュラマーカー(標準 DNAサイズマーカー)で合わせたのかとの質問に対し、「モレキュラマーカーで縦方向に調整した」旨、3月 1日には、「ただただ、見えやすいバンドを示したほうがいいのではないかと思ってしまっ」た旨の説明をしたほか、従前、「実際に今回のゲル泳動でもこの直線性を実検証した上で、パネルの作成のための vertical linear alignment を行いました」と説明していたにもかかわらず、これを変更し、同月 23日には、2枚のゲルの標準 DNA サイズマーカーの泳動に関する直線性について、(直線性を示した図面や数式は残っているのかとの質問に対し)「数式では確認していない」、(目で確認したということですかとの質問にして)「はい。」と答え、数理的解析等によることなく「目視」でこれを確認したとするに至っている。 こうした説明の経緯のみからしても、直線性について目視で行うなど、上述した加工をすることによってもたらされる結果に対する認識はあったことは明らかである。  イ 不服申立て者は、データの誤った解釈へ誘導する危険性を認識しながらなされた行為ではない、偽装するために行ったものではないなどとも主張する。 悪意の有無を判断する上で、「偽装」など、加害目的に類する強い意図を必要とするものでないことは、上述したとおりであるが、加工の態様等からすれば、そのようなデータの誤った解釈へ誘導する危険性があることについて認識があったと言わざるを得ないところである。  ウ なお、審査の過程で、以下の事実が認められた。 (ア)不服申立て者は、2012 年 4月に Nature 誌に投稿した 2012 年論文について、同誌から掲載を拒否された後の同年 7月、2012 年論文にT細胞受容体再構成を示すための電気泳動写真(Supplemental Figure 6)などを加えた上、類似した内容の論文を Science 誌に投稿したところ、同誌査読者から、「Moreover this figure has been reconstructed. It is normal practice to insert thin white lines between lanes taken from different gels (lanes 3 and 6 are spliced in). Also I find the leading edge of the GL band suspiciously sharp in #2-#5.」と指摘されている。ここでいうレーン3は、論文1の Figure 1i で見られたレーン3と同一のものと推測することも可能であるが、そうでないとしても、2012 年 8月の段階で、すでにレーン3の両側に線を加える等して、異なるゲルに由来するレーン3を区別しなければならないことなど真正なデータの提示が求められていたことは認識していたと認めるのが相当である。  不服申立て者は、上記 Science 誌の査読者のコメントについて、精査しておらずその具体的内容についての認識はない、Science論文は論文1と論旨が異なっていたので検討したことはない、Science論文は今回問題となっている論文1とは関係がなく(論旨自体が異なる)、「再調査を行うか否かの審査」に関係しないと考えられ、リジェクトされた未公開論-7-  文であるので提出は控える旨、説明する。 しかしながら、Science 論文は、論文1とほぼ同旨であり、特に、2012 年論文にはなかった T細胞受容体の再構成バンドを根拠に、Tリンパ球を酸処理することにより多能性を持つ細胞にリプログラム可能であるとする主張が述べられている点において論文1と同じである。また、不服申立て者は、2012 年 12 月の時点で、自ら Science 論文の改定論文に相当すると思われる論文を準備しており、そのファイル名は”revised-1211”とされるところ、その内容が Science 論文をもとにしていることは明らかである。加えて、リジェクトされた未公開論文であることにおいて、2012 年論文も Science 論文も同じであるが、前者については委員会へ提出され、後者については上述のとおり、提出を控えるとしている。申立て者の説明によれば、Science 論文はその説明を裏付ける資料となると考えられることからすれば、本来、速やかに提出すべきものであると考えられる。提出しないとすることは、弁明の機会を自ら放棄したものと言わざるを得ない。さらに、”revised-1211”のファイルについても、委員会が入手していたものと不服申立て者が保有するものとの相違点の確認のため、委員会が保有するものを不服申立て者へ送付した上、不服申立て者の保有するものの提出を求めたが、提出されていない。 以上の事実等からすれば、この改稿にあたり、査読者からのコメントに全く目を通していなかったなどの説明に合理性を認めることはできないところである。  (イ)上記(ア)に記述した指摘を受けた場合、Nature 誌に投稿しようとするときには、Nature 誌が指定しているゲル等のイメージの取扱い規定を確認して、その規定に従って、異なるゲルに由来するレーン1、2ならびにレーン4、5とレーン3を区別するなどの措置を執ることが求められる。しかるに、不服申立て者は、指摘された後のわずか 7 ヵ月後の 2013 年 3 月に、Nature 誌のイメージの取扱い等に関する規定を確認しないまま、本件データについて、論文1の Figure 1i として Nature 誌に投稿している。論文1の投稿時にNature 誌の規定を知らなかったとしても、悪意があったことは明らかである。  4 手続保証が不十分であるとの主張について (1)不服申立て者は、中間報告書の作成から調査報告書の作成まで約2週間という短期間の調査であり、不服申立て者への聴取が不十分であり、レーン挿入の手順を正確に聞き取ることなく、独自の検証をしたため結果的に異なる手順を検討しているなど、弁解と防御の機会が不十分であるなどと主張する(不服申立書「第1、2」及び同「第2、6」等)。  (2)しかしながら、上述のとおり、中間報告書の報告以降においても不服申立て者に弁明の機会が与えられていたことは明らかであり、その機会において、不服申立て者は、レーンを追加した理由、追加の方法、標準 DNAサイズマーカーの分子量の対数値と泳動距離が良好な直線性を保っている関係にあることの確認方法等について説明している。委員会は、こうした説明等の結果に基づき結論を得たものである。  第2 捏造について  -8-  1 規程における「捏造」の定義について (1) 「捏造の定義」について  規程第 2 条第 2 項は、「捏造」とは、「データや研究成果を作り上げ、これを記録または報告すること」としている。  したがって、捏造とされた実験データが他の条件の下で得られた真正なデータであったとしても、また、論文に記載されている実験と同じ条件下で得られたデータがあるとしても、捏造の範疇にあるか否かは、当該論文との関係において、当該データが論文に記載されている実験条件下で作成されたものであるか否かにより判断されるものである。  (2)悪意について  悪意の解釈については、上記第1、1、(2)に記述のとおりである。  2 「捏造」の範疇にある行為であるか否かについて (1)不服申立て者は、  ・調査報告書の判断は、規程2条2項の「研究不正」の要件に該当するかという観点からではなく、その定義とは別の次元で、「研究不正」と結論づけるものであって、妥当でない、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」る行為態様がなく、論文に掲載する時点で、誤った画像を掲載してしまったという問題にすぎないのに、これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない  ・「事実でないことを事実のようにこしらえ」る行為はなく、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た行為も存在しない などと主張する(不服申立書「第1、1」、同「第3、2」等)。  (2)上記1、(1)において述べたとおり、捏造の範疇にあるか否かは、当該論文との関係において、当該データが論文に記載されている実験条件下で作成されたものであるか否かにより判断されるものである。 論文1においては、 ・酸処理の条件で得られたデータであると記載しながら、実際には機械的ストレスの条件下で得られたデータを使用している  ・脾臓細胞から作成されたデータであると記載しながら、実際には骨髄細胞から作成されたデータを使用している  ・生後1週の新生仔のマウスを使用したデータであると記載しながら、実際には生後3ないし4週齢の離乳後のマウスを使用している という実験条件に反するデータが使用されている。 本件画像データは、機械的ストレス、骨髄細胞、生後3ないし4週齢のマウスによるとの実験条件で得られたデータであるにもかかわらず、論文1において、酸処理、脾臓細胞、生後1週齢のマウスによるとの実験条件で得られたデータとして使用されており、「データや研究成果を作り上げ、これを記録または報告する」との範疇にあることは明らかである。  -9-  3 調査不十分、悪意がない等の主張について (1) 不服申立て者は、 ・中間報告書の作成から調査報告書の作成まで約2週間という短期間の調査であるほか、不服申立て者に対し1回の聞き取りがあっただけである ・本件画像データはパワーポイントの資料に掲載された画像(A2)を使用したものである、委員会が独自に PDF 画像を解析して、安直に学位論文の画像を切り貼りしたと推測している ・調査報告書について、重要な証拠を看過してなされたものであり、経験則にも反するものである、委員会は、過失により異なる画像を使用した可能性を認めている、不服申立て者が使用したであろう画像がどのような状態で保管されていたのかについて、充実した聞き取りはなされていない ・自身が学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告したことや画像 B が存在し、画像Cが訂正のために Nature 誌に提出されているとの事実が判断の前提とされていない ・パワーポイント資料に掲載された画像(A2)を酸処理による実験で得られた画像(画像 B)であると誤信して掲載したものである、実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものを勘違いしたものである などと主張する(不服申立書「第1」、「第3」等)  (2) しかしながら、上記の主張が理由のないものであることは、明らかである。  ア 3 月 13 日付け中間報告書が提出された後において、合計2回の聞き取り調査を行っている。その具体的結果は、後述するとおりであり、不服申立て者の説明を十分聞いており、判断に必要な調査が行われていることは明らかである。  イ 調査においては、論文1の画像を解析すると、学位論文と似た配置の図から画像をコピーして使用したことが認められたので、学位論文で使用された画像データを学位論文と酷似した様式で配置した図からコピーして使用したと認定している。この学位論文と似た配置の図がパワーポイント資料に由来するものであることも認定しているところである。認定に係るパワーポイント資料が不服申立て者主張に係るパワーポイント資料(不服申立書 資料4)であったとしても、委員会の認定に矛盾するものではない。  ウ 画像等の保管状態等や画像を分析し、調査報告書において「データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある」とした上で、その管理状況等を考察し、悪意があると認定したものである。  エ 不服申立て者が学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告したこと、画像 Bが存在し、画像 Cが訂正のために Nature 誌に提出されているなどの点についても、事実関係を調査した上で、悪意の有無を判断している。 -10-   オ 不服申立て者の上記の主張等に対する委員会の具体的な判断は、「4 委員会の判断等」において、詳述する。  カ 開示に関しても、代理人において実験ノートの確認・コピーをしたほか、不服申立て者から提出された資料等については代理人にその写しが送付されており、必要とされる措置は執られているところである。  4 委員会の判断等について (1)不服申立て者のデータ管理・使用方法について  ア 不服申立て者は、「データ管理が十分に整理されていなかった」とする(不服申立書18ページ)が、そのデータ管理はそのような程度のものではない。 不服申立て者のデータ管理は、「2月中旬に1枚1枚写真をチェックしていたら、テラトーマの写真、免疫染色の写真が、どこを見ても、近々のデータの中のどこを見ても見つからなかった、これはおかしいということに気がついた、しかも、それが、アッセンブルされた状態だったので、なかなか見つからなかった、学生時代のデータにまでさかのぼって探したら、博士課程のときに行っていた実験のフォルダーの中でその写真が見つかった、昔使っていたハードディスクに入っていた、画像データは、当初、若山研での実験で得られたものと思っていたが、東京女子医科大学での実験で得られたものであったことに気づいた、いつ間違えたかも分からない」旨、3月 19、23日に説明していることによってもそのずさんさがうかがわれるところである。このような管理方法では、ある実験のデータが他の実験のデータとして使用されるおそれがあることは明らかであり、そのおそれがあることを認識していないということは考えられない。  イ 本件画像データの取扱いに係る問題点は、ずさんな管理にとどまらない。 「どういうデータが必要なのか、論文化するために、集めるような作業を、よくしていた」、「パワーポイントで上書きをして Figure を作り続けていた」、「6個の写真ごとやっていた」、「3枚か6枚か分からないが、まとまったテラトーマの写真をアセンブリされた状態で Nature 誌の Figure も作ったと思う」、「テラトーマの画像は1枚1枚とってきたものではないと思う、1枚1枚やっていたら気がつくはずである」、「投稿論文時には、アセンブリされた状態の画像データを使用したと思う」、「論文1の投稿時にはアセンブリした状態のまま使用し、その後、画像の入れ替えをした」旨、3月 19、23日に説明していることからも明らかなとおり、学位論文の画像データや研究所における実験の画像データを集めた上、適宜アセンブリし、アセンブリした状態のまま上書きを繰り返しながら保管し、アセンブリした状態のまま使用していたことが認められる。  ウ このようなデータの使用方法は、上述したデータの管理方法と同様、それぞれのデータに由来を示す説明が付いていないため、アセンブリされたデータについて様々な解釈がなされ、由来する実験が特定されないまま、異なる実験データを間違えて使用する危険性-11-  を内在するものである。アセンブリされた画像データの中から論文投稿用の画像データの抽出や入れ替えをしようとする場合には、1枚1枚、その由来を確認するなどしなければ、実験条件の異なる画像データを論文に使用することになるおそれがあることは当然予想されるところであり、研究者であれば誰でも認識できるところである。しかるに、こうした確認行為をしなかったことは不服申立て者において自認しているところである。  エ 論文1の投稿(2013 年 3月)から採択(同年 12月)までの間、9ヵ月あまりの期間があり、その間において、不服申立て者が差し替えを行う機会は十分にあったことも事実である。  オ したがって、画像データの1枚1枚について、実験条件等について実験ノートや画像データ等を照合するなど、その由来を確認することなく、異なる実験条件下で得られた本件画像を使用したことは、こうしたおそれがあることを無視した行為であると判断せざるを得ない。  (2)2012 年論文の投稿のみならず、論文1投稿に至るまでの間の投稿においても、本件画像データをそのまま使用していることについて 2012 年論文は、酸処理により脾臓リンパ球を多能性を持つ細胞に転換させるというもので、不服申立て者自身が執筆したものであるところ、上述したように、アセンブリしたデータを使用し、さらには、そのまま論文1においても使用したものであって、記載文字の変更はあるとしても、本件画像データをそのまま使用している。前述したように、2012 年の Nature 誌、Cell 誌、Science 誌への投稿を含めて、二度以上にわたり、由来を確認する機会が与えられていたにもかかわらず、確認していない。個別に特定がされていないアセンブリしたデータをそのまま使用することの危険性を全く無視したものであると言わざるを得ない。  (3)不服申立て者が、論文に記載された実験条件と異なる実験で得られたデータの使用を認容していたことについて 論文1に記載された実験条件が異なるデータを使用した点について、不服申立て者は、 ・(「学位論文では機械的ストレスを使っていて、論文1では酸処理を使った、という違いについて、2月 20日の時点で気がついていたか」との質問に対して) 「厳密には、学位論文で作られたのはトリチュレーションで作られた幹細胞でNature のほうでは酸処理で作られた幹細胞である。私にとっては両方とも STAP 細胞でしたが、厳密には違うと思います」 ・(骨髄細胞から得られたデータが脾臓細胞から作られたものであると記載されている点について) 「ずっと何度もやっていた実験で、いつも同様の結果が出ていたので、脾臓細胞由来と骨髄細胞由来を同じように取り扱ってよいという気持ちがあったわけではないが、データが正しい現象だと安心しきってそのまま使ったと思う」 旨、3月 19、23日に説明しており、論文に記載した条件と異なる条件の実験で得られたデ-12-  ータであったとしてもそのデータを使用することを認容している。  (4)本画像データが学位論文に由来することに対する認識について 不服申立て者は、テラトーマに係る本画像データについて、「ある意味、チャンピオンデータであった」、「学位論文の実験で、本件画像データのように非常にきれいなテラトーマの写真ができたことは少なかった」旨、3月 19、23日に説明した。さらに、本件画像データの分析によれば、2回にわたり、オリジナルの画像データ上に文字を追加するなどした跡が認められるところ、この文字については、「私自身も正直、文字があることに気がついていた」旨、3 月 19 日に述べている。とすれば、不服申立て者においては、少なくとも、本画像データが学位論文もしくは他の実験データに由来するデータであるかもしれないという点については認識があったものと認めざるを得ないところである。 とすれば、本件画像データをそのまま使用したことは、アセンブリされた資料をその由来の確認等もしないまま使うことの危険性を無視したばかりではなく、異なる実験のデータである可能性を認識しながら使用したものであると判断せざるを得ない。研究者社会におけるデータへの信頼性を根本から壊すものであると言わざるを得ない。  (5) 画像データ B、同 Cの存在等に関する不服申立て者の主張について 不服申立て者は、 ・自身が学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告していること ・酸処理による実験で得られた画像(画像 B)が存在すること などからすれば、パワーポイント資料に掲載された画像(A2)を、酸処理による実験で得られた画像(画像 B)であると誤信して掲載したものである、実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものを勘違いしたものであって、過失により、論文1に A2が掲載されたものである旨、主張する(不服申立書「第3」等)。  ア 学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告していることについて 笹井氏は、2月 20日、不服申立て者も同席したヒアリングにおいて、本件画像データは、骨髄由来細胞と脾臓由来細胞による各実験の単なる取り違えである旨、説明した。両氏は連名で、同日及び 3 月 1 日付けの書面において、いずれも、脾臓由来ではなく骨髄由来の細胞を使ったことはミスである旨、述べていたが、実験条件に違いがあることは全く述べていなかった。その後の調査により、本件画像データが、学位論文に由来するものであって、機械的ストレスによる実験で得られたものであることなどが判明した。 不服申立て者が、実験条件が異なるデータを使用したことについて初めて説明したのは、3 月 23 日のヒアリング時であった。それまでの間の 3 月 19 日、不服申立て者は、委員に対して対面での説明をしている。この説明は、資料等の確認のため、発生・再生科学総合研究センター(CDB)を訪れた委員に対して、同氏から学位論文について説明したいとの申出があったことにより行われたものである。同氏は、冒頭に学位論文に関して説明をしている。しかし、専ら、今回の画像データの取り違えに関する学位論文の審査者とのやり取りや学位論文の今後の取扱いに関する大学関係者とのやり取りに関するものにとどまり、実験条件が異なる画像データが使用された経緯に関する説明はなかった(なお、委員-13-  会では、同月 23日に予定していたヒアリングでデータの取り違えの経緯について説明を求めることとしていたため、19 日には、この点について説明を求めていない。)。不服申立て者は、笹井氏から、学位論文の画像データを使用した経緯について委員会に対して説明するように言われていた。 これらの状況は、2 月 20 日の説明等に付加して異なる実験条件下で得られた学位論文の画像データを使用したことについて自ら話すつもりがなかったことを示すものである。 この当時、インターネット上等で論文1について疑義があるとの指摘がなされており、早晩、画像データの取り違えについても指摘がなされるであろうことは十分予想されたところである(現に、その後、インターネット上等で指摘がなされている。)。指摘がなされる前に報告をしたことは認められるとしても、不服申立て者は、異なる実験条件下で得られたデータであることを知りながら、もしくは、その可能性があることを認識していたのにこれを明らかにせず、これを単なる取り違えであると説明していたと言わざるを得ない。  イ パワーポイント資料に由来するアセンブリされたテラトーマの画像データについて (ア)パワーポイント資料に由来するアセンブリされたテラトーマの画像データ6枚は、2012 年論文に Supplemental Figure として既に用いられていたが、このうち HE 染色の3枚の画像データは、2013 年論文投稿時に差し替えられ、異なる HE 染色の画像データが論文1に Figure 2e 上段3枚として発表されている。一方、2012 年 6月に取得されたという免疫染色データ(画像 B)については、論文1投稿時には使用が見送られており、2012 年論文に用いられたアセンブリされたテラトーマの画像のうち残りの3枚の免疫染色データが、そのまま論文1に Figure 2e 下段3枚として発表されている。画像 Cは、テラトーマの由来に関する疑義が再度生じることを避けるために、保存していたテラトーマの切片を免疫染色して作成した画像データであって、投稿時には存在しなかったものである。この画像データ(画像 C)は、論文1の Figure 2e上段の HE染色と同じテラトーマから作成されたものではあるが、画像 B と同一のテラトーマから作成されたかという点については明らかになっていない。  (イ)この点について、不服申立て者は、免疫染色結果も瓜二つであったため、2012 年 6月に取得された、脾臓由来の STAP 細胞から作成されたテラトーマの免疫染色ではなく、従来から使っていたアセンブリ画像を使用した旨、説明している。 本件画像データと画像 B を比較すると、少なくともそれぞれの対合する染色像間での印象はかなり異なっており、異なる実験条件下で、瓜二つの免疫染色の結果が得られること自体希有なことであると考えられるところであり、瓜二つであったとの説明には、納得しがたい点があると言わざるを得ない。 仮に、本件画像と画像 B が瓜二つであったとしても、前述のとおり、異なる実験で得られた本件画像データ等について、その由来を確認することなく使用することとし、画像取り替えに際してもその由来を確認していなかったこと、本件画像データを含むアセンブリされた画像が学位論文に由来するものである可能性があることを認識しながら、投稿していることに変わりはない。なお、画像 Bは、アセンブリされたものではない。 -14-  いずれにしても、データの混入の危険性を無視してデータを使用したものであると評価せざるを得ない。  ウ 画像 Bの存在について (ア)画像Bについて、不服申立て者は、補充書(1)において、実験ノートの 75ページの記述をもとに、正しいと主張する画像 Bの元となるテラトーマが 2012 年 1月 24日に取り出されたなどとする。  (イ)しかしながら、75ページには日付がなく、近傍のページで日付があるのは、73ページ(「6/28」)、76ページ(「2/29」もしくは「2/19」(いずれか判読不能))、81ページ(「10月」)のみである(いずれも年の記載なし)。このように、75 ページに記載されている実験が 2012 年 1月 24日に行われたことを確認できない。また、75ページには、このテラトーマがどのような細胞と方法を用いて作製されたかについては記載されていない。  (ウ)不服申立て者は、実験ノートの 117ページの記述をもとに、正しいと主張する画像 Bが 2012 年 6 月 9 日に撮影された、としている(補充書(1)「第3、3」及び同「第3、4」等)。しかし 117ページには日付がなく、「染色(Differentiation assay)(ESコロニー)」と記載されているだけで、これがどのようなサンプルを、どのような抗体を用いて染色されたのかについては記載されていない。Differentiation assay は、通常、細胞の分化能を検証する実験を意味し、論文1の Methods でも In vitro differentiation assay の項目があり、STAP細胞の培養条件を変えることにより異なる胚葉の細胞に分化誘導し、免疫染色を行っている。また In vivo differentiation assay の項目もあり、この実験では STAP細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し、テラトーマの形成実験を行っている。117 ページの Differentiation assay については、(Differentiation assay)の記載に(ES コロニー)とも併記されていることから、In vitro differentiation assay の可能性も考えられるが、どちらを意味するのかは不明である。これ以外にも、テラトーマと思われる染色を行っているとされるが、その由来は不明であり、画像 Bとの関連も不明である。  (エ)テラトーマを取り出してからすぐに免疫染色などの解析を行うのが通常である。サンプルの保存中にタンパク質などの分解あるいは変性が生じ、抗体の反応性の消失または低下をきたす可能性があるためである。2012 年 1 月 24 日にテラトーマを取り出してから2012年6月9日に免疫染色解析を行ったという説明には違和感を感じざるを得ない。また、この間、不服申立て者は、当該研究内容の論文を、4 月に Nature 誌(2012 年論文)、6 月に Cell誌、7月に Science誌に投稿している。2012 年論文では成体マウスの脾臓細胞を用いた研究内容であったが、Cell 誌への投稿論文より新生仔の脾臓を用いた内容へと変更を行っている。本研究におけるテラトーマの解析の重要性を考えれば、新生仔の脾臓細胞から作成された STAP細胞に由来するテラトーマの画像 B(2012 年 6月 9日作成)を、Cell誌投稿以降の投稿論文に使用しなかったことは、なおさら理解し難いものである。  (オ)不服申立て者は、実験ノートの 99 ページの記述をもとに、2012 年 2 月 27 日には、-15-  テラトーマの免疫染色実験が行われ、2012 年 3月上旬に画像 Bのような画像 B’が撮影された可能性が高い、としている(補充書(1)「第3、4」)。このような主張は、不服申立て者自身がどのような実験を、何時行ったかを、実験ノートから特定できないことを示している。  (カ)実験ノートは、どのような実験が、何時行われたかを示す一次資料であり、提出された実験ノートからは、正しいと主張する画像 B がどのように得られたかについて科学的に実証することは不可能である。  (キ)不服申立て者には、得られたデータを綿密に検討することをしていなかったこともうかがわれ、また、いわゆるチャンピオンデータにこだわっていたともうかがわれる点がある(チャンピオンデータは、頻度は低いながら非常にうまく行った実験のデータを意味し、2012 年論文の投稿時からチャンピオンデータであるとするこのデータが使用されていた。)。  エ 上述した点を考慮すれば、不服申立て者が学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告したことや画像 B や画像 C が存在することの事実は、論文1において実験条件が異なる学位論文のデータを使用したことが過失によるものであることをうかがわせるものとはいえず、異なったデータが混入する危険を認識しつつなした行為の結果として起こるべくして起こった事態を事後的に修正しようとするものというべきであり、悪意を認定した理由について影響を与えるものではないことも明らかである。  (6)パワーポイント資料や論文の主旨の変遷等について  ア 不服申立て者は、「論文1に使用された画像データは、学位論文に用いられた画像をパワーポイント資料に掲載するにあたり、文字の色や位置関係を調整した画像である、パワーポイント資料は、2011 年 11月、若山教授らに報告するための資料として作成した」、このパワーポイント資料は「ストレストリートメントという観点から研究を進めており、酸による刺激、物理的刺激を含め、刺激により幹細胞化することや骨髄細胞や脾臓由来細胞など様々な細胞から STAP 細胞が作成できることを示すものである」旨、説明する(不服申立書「第3、1」等)。さらに、パワーポイント資料、2012 年論文や論文1の主旨について変更があり、その中で写真の差し替えを失念したために写真の取り違えが生じた、主旨は、当初、「ストレスによる幹細胞化」(上記パワーポイント資料)であったが、「ストレス処理によって体細胞からキメラができた」こと(2012 年論文)に変更され、最終的には「酸処理によって得られた幹細胞の性質」(論文1)に変更されたと説明する(補充書(1)「第3、6」及び補充書(1)陳述書)。  イ パワーポイント資料について、上記報告の際、酸処理による実験データであるとして使用されたか、それとも、機械的ストレスによる実験データであるとして使用されたか、また、その両者を区別することなく使用されたかは、不明である。 -16-  2012 年論文について、不服申立て者は、「ストレス処理によって得られた細胞からのテラトーマ」という認識だけで投稿したものであると説明する。 そうであるとしても、同論文は同氏が執筆したものであり、この論文で、「Consequently, we focused on exposure to low pH as the stress treatment of choice for the remainder of the study. 」、「To expose the mature cells to a physiological stress, they were treated with low pH (pH5.5) solution.」と記載して酸処理に焦点を当てて論述を進め、このような主旨の元でパワーポイント資料の画像データをその根拠として使用している。不服申立て者から提出された 2012 年論文と、不服申立て者が、投稿日の前日に若山氏へ送付した投稿予定の論文とは、記述に若干の差異はあるが、上記引用箇所は全く同じであり、また、掲載された画像データについても同じである。記載について、不服申立て者は言及を避けている。 不服申立て者は、3 月 23 日のヒアリングで、「ここはかなりケアフルに確認したいのですが、2012 年論文の投稿時にすでに使われたデータは酸処理で作られた幹細胞のデータと認識しておられましたか」との質問に対し「はい、そうです。」と答えており、2012 年論文の投稿時に使われたデータが酸処理で作られた幹細胞のデータであると認識していたことを認めている。2012 年論文の主旨からすれば、このような説明をせざるを得ないところである。  ウ 実験条件の違いについて、不服申立て者は、「厳密には、学位論文で作られたのはトリチュレーションで作られた幹細胞で Nature のほうでは酸処理で作られた幹細胞である。私にとっては両方とも STAP 細胞でしたが、厳密には違うと思います。」と述べていたことは前述したとおりである。委員会は、この説明を条件の違いを十分に認識していなかった趣旨であると理解しその旨を報告書に記載した。そして、委員会は、学位論文と論文 1の論文では、実験条件が異なる、酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文 1 の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを不服申立て者が認識していなかったとは考えがたいと判断した。 しかしながら、不服申立て者は、補充書(1)において、「そのような説明をしたことはない」、「実験条件の違いは十分に認識していた」と主張する。 とすれば、この主張は、委員会の判断そのものと合致する。不服申立て者は、2012 年論文及び論文1において、実験条件が異なる画像データを論文に使用することになる可能性があることを認識しながらこの画像データを使ったのではなく、実験条件が異なることを十分認識しながらパワーポイント資料の画像データを使用したこととなる。  エ 論文で使用しようとする実験データは時々において変わるものであり、例えば、論文執筆当初、骨髄由来のデータを使っていたものの、その後、脾臓由来のデータを使用することになる場合もある。投稿時においてその由来の確認をすることが求められるとしても、当初使用していた骨髄由来のデータを脾臓由来のデータに取り替えることを偶々失念することが全くないとは言えないであろう。 しかしながら、論文1は、酸処理により成熟した脾臓リンパ球から STAP 細胞が作成されるという点が最も重要なテーマであって、本件画像データはこれを証明するために重要なものであるものと位置づけられており、不服申立て者は、この点を熟知している。 -17-  もし、仮に、論文1投稿時に、パワーポイント資料の画像データが学位論文に由来する実験条件の異なるデータであることなどを失念していたとしても、元々、2012 年論文や論文1投稿までの過程において、実験条件の異なる画像データを使用する危険性があることを認識しながら、その由来についてオリジナルデータとの照合等の確認をすることなく、使用することとし、その後も使い続けていたこと、画像の差し替えに際してもオリジナルデータとの照合等の確認をすることなくそのまま論文1に掲載したことには変わりがなく、そのため、異なる実験条件下のデータを掲載することになったものである。上述したような経緯のもとでなされた本件のような態様の行為について、偶々の失念と評価できるものではないことは言うまでもない。  (7)なお、不服申立て者から、5月 4日付けの補充書(2)が提出されたので、以下検討する。  ア 不服申立て者は、仙台地方裁判所平成 25年 8月 29日付判決(平成 22年(ワ)第 1314 号、平成 22 年(ワ)第 1712 号事件)に関する資料(判例時報 2211 号)を提出の上、この判決に示された司法的解釈、すなわち、複数枚の写真を1枚の写真に組み合わせた場合であっても、故意に存在しないデータを作成したり真正でないものに加工したりしたものではないから、ねつ造、改ざんに該当しないというのが、文部科学省ガイドラインに規定する「ねつ造」「改ざん」についての司法的解釈「改ざん」及び「捏造」であるので、この司法的解釈に基づいて、研究不正の有無の判断がなされるべきであると主張する。 上記ガイドラインにおいて「故意」がなければ、改ざんやねつ造に該当しないこと、規程においても「悪意」がなければ、改ざんや捏造等の研究不正に該当しないことは言うまでもない。規程にいう「悪意」が「故意」と同義のものと解されることについても前述したとおりである。 不服申立て者が引用する上記判決は、名誉毀損に係る事案であるところ、「断面写真については、一断面を撮影した4枚の写真を1つの写真に組み合わせた後、当該写真データを論文の原稿ファイルに貼り付ける過程において、縦横比の設定を固定することを失念したために、実際の断面と縦横比が 8%弱異なる結果となっているところ」、「文科省ガイドラインや」「大学ガイドラインにおけるねつ造、改ざんの意義に照らせば」、「写真の掲載は、故意に存在しないデータを作成したり真正でないものに加工したものではないから、結果的に不正確な断面写真が掲載されたことは否定できないとしても」、「論文にねつ造、改ざんがあるとはいえない」(上記判例時報 104ページないし 105 ページ)としたものである。すなわち、「実際の断面と縦横比が 8%弱異なる結果となっている」ことについて、故意ではなく失念であると認定した上で、写真の掲載は、「故意に」存在しないデータを作成したり真正でないものに加工したものではないとしただけのものである。  イ 不服申立て者は、画像取り違えの経緯を考慮した判断が必要であるとして、 ・不服申立て者が 2011 年 3月から 2013 年 3月までの間、環境、実験方法、論文の考え方についても多様な変遷があった、論文執筆においては特殊な事情のもとで短期間になされたものであり、これらの事情は、画像取り違えの評価に強く影響するも-18-  のであるところ、これらの事情を考慮せず、これらの事情を看過してなされた調査は、適切な認定・判断ではない ・画像取り違えが生じた背景として、論文1投稿までの期間において、ハーバード大学から理研への所属の変更、若山氏から笹井氏への研究指導者の変更、物理的ストレスから酸刺激への細胞の処理方法の変更、2012 年論文から論文1に至る論文についての考え方(構想)の変遷など、特殊な状況があったために、テラトーマの免疫染色の画像を差し替えるのを忘れてしまった などとする(補充書(2)陳述書2)。 しかるに、不服申立て者が、2012 年論文から酸処理を実験手法の中心に据えて論文を執筆していることは前述のとおりであり、Cell 誌投稿論文、Science 論文、論文1とこの論文構成は一貫している。したがって、物理的ストレスによってできた細胞由来のテラトーマ画像を差し替える必要性については、2012 年論文の投稿時から認識されるべきものであった。また、論文1を投稿した 2013 年 3月から採択される同年 12月までの 9ヵ月あまりの期間においても、差し替えを行う機会は十分にあったことも事実である。したがって、論文1投稿時の特殊な事情は考慮する範疇にはない。なお、2012 年論文においてはテラトーマのデータは補足的なものであり、詳細な記載はないと述べている。確かにサプリメンタルデータとして提示され、論文本体のデータとして提示されたのは論文1においてからであるが、細胞の多能性を示すうえでテラトーマ形成実験は重要な基本的実験であり、詳細な記載がないとはいえ、このデータが示されることで読者は細胞の多能性を理解することから、このような効果を期待してサプリメンタルデータにテラトーマのデータを提示したことは明らかである。  ウ 不服申立て者は、規程第 15条第 5項は、委員会が「必要に応じて、再実験の実施を指示し、または被通報者の申出により再実験を許可することができる」と定めているのは、再実験の機会をあたえることにより、研究不正との疑義を晴らす機会を保障したものと考えられる、本件において、論文に記載された実験条件によりテラトーマ形成実験が成功したならば、不服申立て者が真にテラトーマ形成実験を行い、テラトーマ画像を得ていたことが明白となるところ、研究所では、4月に、「論文に記載された方法で再現性を検証する」こともその目的の一つとして、STAP現象を検証するプロジェクトが立ち上げられていることからすれば、この検証実験の結果を待たずに、不服申立て者の行為を研究不正と断ずることは許されない、検証実験の結果を待って、研究不正の有無についての判断が見直されるべきであるなどと主張する。 しかしながら、調査結果において、論文 1 に、不服申立て者による改ざんと捏造という研究不正があったことは明らかであり、再実験の指示や許可をする必要性がある案件ではなく(不服申立て者からの申出もない)、したがって、検証実験の結果を待つまでもないものである。  第3 結論  以上のとおりであって、委員会の審査の結果は、本年 3 月 31 日付けで報告した調査結-19-  果と同一のものであり、再調査をする必要はないものと判断した。  なお、不服申立て者は、後述するとおり、補充書(1)等において、審査に関して2週間の猶予を求めるなどしている。  1 規程では、研究者等で研究不正に係る疑義を生ぜしめた者は、事実関係を誠実に説明しなければならない(第 5 条)、被通報者は、弁明の機会において、通報の内容を否認するときは、研究が科学的に適正な方法及び手続きに則って行われたこと並びに当該研究に係る論文がそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない(第 15 条第 4 項)としているほか、不服申立て者に対し、調査結果を覆すに足る資料の提出その他当該事案の速やかな解決のために必要な協力をすることを求めている(第 19 条第 5 項)。不服申立て者は 2 月 21 日に規程の写しを受領しており、この規程に則って行動することが求められている。  2 そこで、審査に関し、委員会が執った措置及びこれに対する不服申立て者の対応について、念のため、記載する。  ア 4 月 10 日、委員会は、 ・不服申立てに関して言い足りなかったとか補足したい点がある場合には、代理人による聞き取り書でも可能であるので、書面を委員会宛に送付されたい ・4 月 9日に行われた記者会見で、捏造とされた画像などに関して理解してもらいたい点があると述べられていたので、このような点についても記載し、こうした画像などが研究所に提出されたラボノート以外の実験ノートが関係しているのであれば、その点についても触れるとともに、当該実験ノートを提出していただきたい 旨、代理人に伝えた。  イ 4 月 15 日、委員会は、代理人に対して、補足等する点を書面にまとめることが難しいなどの事情がある場合には、録音テープや録画ビデオ等による補足でも可能であることを伝えた。  ウ 4 月 20 日、代理人から補充書(1)が提出された。補充書(1)では、代理人が不服申立て者から聞き取った結果をもとにした主張もなされており、不服申立て者の陳述書や不服申立て者作成に係る資料等が付属書類として含まれていた。 代理人は、補充書(1)において、資料入手からわずかな時間しかなかった、不服申立て者の体調、法律家専門家による意見書の提出を理由として、不服申立て理由の補充をするためにさらに2週間の猶予を求めた。 しかしながら、 ・検討する十分な時間がないと主張する資料のうち、開示に係る資料の多くは、不服申立て者が作成・提出した資料や笹井氏との連名で提出された資料等であったこと ・4 月 17 日に代理人がそのコピーを入手したとするハードディスクについては、入-20-  手したばかりであり検討する時間的余裕が必要であると主張するものであるところ、このハードディスクは、前述したように、不服申立て者が、昔使っていたとするものであって、学位論文の画像データのオリジナルデータが入っていたものであることや調査時にその提出を求めたが、その際、私的なものが入っているので提出できないとして、学位論文の画像データのオリジナルデータ(コピー)のみを提出した経緯があることからすれば、不服申立て者がその内容について当時調査していたと考えられ、代理人にすぐその内容を知らせることもできたものであったと考えられること ・不服申立て者は、その陳述書において、論文の主旨の変遷があり、画像の取り違えが生じた等と主張しているものの、論文の主旨等については委員会において把握していたものであったこと(むしろ、2012 年論文の主旨や記載が、陳述書における不服申立て者の説明と矛盾することは、前述したとおりである。) ・補充書(1)において、代理人は、テラトーマ実験の概要について、不服申立て者から聞き取った結果を記載しているところ、その内容を検討すると、不服申立て者は、実験ノートや当時の実験状況を思い出しながら、実験ノートの記載内容を引用しつつ記載内容について相当程度細かく説明していることがうかがわれること 等の事情が認められる。  エ 4 月 27 日、委員会は、代理人に対し、不服申立て者からヒアリングの申出があれば行う用意がある、その場合、4 月 28 日または 29 日となる、ヒアリングを行う場合には質問をしたい点があるので、関係の資料を送付する旨を伝えた上、Cell 投稿論文、Science論文及び Science からの通知(エディター・査読者のコメントを含む。)等を送付し、その確認及びその提出を求めた。質問に係る箇所も特定していた。 これに対し、同日、不服申立て者から、 ・文書や質問事項の特定がなければ、ヒアリングに応じることはできない ・ヒアリングは、不服申立て者の体調からして 1 週間程度の猶予が必要である ・委員会が必要であるとするのであれば、不服申立て者の体調について、医師の診断書を提出する 旨の回答があった。  オ 同月 30 日付で、代理人から委員会へ、委員会の改ざん・捏造の解釈を明らかにするよう質問書が提出された。同日、委員会は、改ざん等については、十分検討しており、審査結果において明らかにする旨回答した。  カ 5 月 1 日に、不服申立て者から、エ記載の文書中、Science からの通知(エディター・査読者のコメントを含む。)に対する説明文書が送付され、Science 誌への投稿論文の提出は控えるとの回答があった。その詳細は、前述したとおりである。不服申立て者の説明によれば、当該論文はその説明を裏付ける資料となると考えられることからすれば、速やかに提出すべきものであると考えられる。不服申立て者は弁明の機会を自ら放棄したものであると解される。 -21-   キ 5 月 4 日、不服申立て者から、補充書(2)が提出された。補充書(2)では、代理人が不服申立て者から聞き取った結果をもとにしたと考えられる主張(約 4 ページ)がなされている。2011 年 3 月から 2013 年 4 月までの間における、不服申立て者の所属、Oct4+細胞、テラトーマ、論文の考え方、画像等に関して月毎に記載した時系列表も作成されているほか、不服申立て者の陳述書(5 ページ弱)等が付属書類として含まれていた(検討結果は、前述したとおりである。)。  ク その他、ヒアリングの要請、実験ノートやエ記載の残余の資料の確認・提出、法律専門家の意見の提出について、いずれもなされておらず、診断書の提出もない。  <補足説明> 本文中に記載の略語は次の通りである。 (50音順) 委員会 : 研究論文の疑義に関する調査委員会 規程 : 独立行政法人理化学研究所の規程「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」(平成 24年 9月 13日規程第 61号) 研究所 : 独立行政法人理化学研究所 代理人 : 不服申立て者代理人 中間報告書 : 平成 26年 3月 13日付け「研究論文の疑義に関する調査中間報告書」 調査報告書 : 平成 26年 3月 31日付け「研究論文の疑義に関する調査報告書」 不服申立書 : 不服申立て者提出の 4月 8日付け「不服申立書」 補充書(1) : 不服申立て者提出の 4月 20日付け「不服申立についての理由補充書(1)」補充書(2) : 不服申立て者提出の 5月 4日付け「不服申立についての理由補充書(2)」論文1 :Obokata et al., Nature 505:641-647(2014) 論文 2012 年論文 :2012 年 4月に Nature 誌に投稿し、同年 5月に reject(却下)された論文Science論文 :2012 年 7月に Science誌に投稿し、同年 8月に reject(却下)された論文
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「ノート公開」小保方氏 訴訟なら勝利濃厚 東スポWeb 5月9日(金)11時11分配信 

 日大名誉教授(刑法)の板倉宏氏(80)は「訴えるとしたら民事で処分無効と名誉毀損となるでしょう。これまでの判例を見る限り、捏造には当たらないと思われます。改ざんと捏造の定義が争点になりますが、捏造とは『ないものをある』とすること。小保方氏の場合は真正の画像があるというので、捏造には当たらない」と指摘する。 
 改ざんについても「研究不正と認定された4月1日と今では状況が大きく変わりました。似た事例で調査委員会の委員長が辞任するなど、『違う見方ができるのではないか』という空気になっています。少なくとも理研は再調査をするべきでした」。 
 理研は2006年にも研究不正と認定した研究者から名誉毀損で訴えられ、4年後に和解している。「小保方氏は金銭目的ではないので、名誉毀損で何百万円程度の訴えになるのでは? 裁判では小保方氏が有利とは思いますが、そうでなくても全面的に小保方氏だけが悪いとはならないでしょう。相当な時間がかかるので和解もあるかもしれません」という見通しを板倉氏は示した。

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小保方ユニットリーダー公開追加画像、実験ノートの一部

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2014年1月28日 記者会見 笹井芳樹 「非常に説得力のあるデータが1個1個ある。でもちゃんと裏取りがされている。これは作ったような話ではできるものではない。」  2014年4月16日 記者会見 笹井芳樹 「残念ながら私は生データやノートを見る機会がありませんでした。」 “ーーーーーーーーーーーーーーーーー”異なるゲル画像(しかも、拡大縮小&コントラスト強調あり)を挿入したことについて 小保方晴子の説明 「それがやってはいけないことだという認識がなかった。」 しかし実際には、前年のScience誌投稿で査読者から指摘され指導を受けていた、という事実が発覚。 若山氏が情報提供”
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“マテリアル、メソッドとも別の実験のテラトーマ画像を使ったことについて 小保方晴子の説明 「単なる画像の選び間違え」 しかし、元画像(D論で使用)に色加工(フォトショップでの色彩変更)したうえ、画像ヘッダー部分に黒帯をしてしたを隠す、という画像処理を行っていること。 D論以降の、Nature一回目投稿(reject)、Science投稿(reject)、Cell投稿(reject)、Nature2回目投稿の計4投稿で、すべて同じ画像の使い回しがされていること。 の2点から、「単なる間違え」でなく「把握した上での捏造」である事がわかる。 “ーーーーーーーーーーーーーーーーー”理研の報告書を読んだら、同じ実験のはずが、出した専門誌によって、動物種変えている”
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2014-05-10 02:41