統合失調症への集団アートセラピー

統合失調症の症状は薬物療法によって軽減されるが、多くの患者はメンタル面の回復や社会復帰を果たせずにいる。そうした統合失調症患者への補助療法として行われている集団アートセラピーの臨床的な効果について、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMike J Crawford氏らによる多施設での介入無作為化試験による検証が行われた。これまで、同療法のベネフィットについての検討はほとんど行われていなかった。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月28日号)掲載報告より。
集団アート療法、活動療法、標準治療の3群で比較
研究グループは、統合失調症患者への集団アートセラピーの臨床的効果を評価し、そのベネフィットについて検証するため、3アーム評価者盲検介入無作為化比較試験を行った。被験者は、英国の二次的ケアサービスを提供する15病院で募集された、統合失調症の診断を受け、研究への参加について文書で説明了解を得た18歳以上の417例だった。
参加者は病院ごとに分けられ、12ヵ月間にわたって、週1回集団アートセラピー+標準治療を受ける群(140例)、週1回集団活動療法+標準治療を受ける群(140例)、標準治療のみ群(137例)の3群に無作為化された。アートセラピー群と活動療法群のグループ構成は最大8人とし、1セッションは90分間。アートセラピー群のメンバーには、芸術材料は限定されず、自由に自己表現するよう促された。活動療法群のメンバーには、芸術と工芸関係を除くさまざまな活動が提示され、続けたいと思う活動を共同で選択して行うよう勧められた。
主要評価項目は、無作為化24ヵ月後の、総合機能スケールを使って計測した全般的な機能状態と、陽性・陰性症状評価スケールで測定したメンタル症状とした。副次評価項目は、12ヵ月時点と24ヵ月時点の出席状況、社会参加、治療に対する満足度とした。
3群間でアウトカムに差はみられず
結果、3群間で主要評価項目に格差は認められなかった。
24ヵ月後の総合機能スケール評価は、アートセラピー群と標準治療群との補正平均差は-0.9(95%信頼区間:-3.8~2.1)で、陽性・陰性症状評価スケールは0.7(同:-3.1~4.6)だった。
12ヵ月時点と24ヵ月時点の副次評価項目については、アートセラピー群と標準治療群との間で格差は認められなかった。アートセラピーと活動療法への出席レベルは低調だった。
研究グループは、「統合失調症と診断された患者に集団アートセラピーを受けさせても、全体的な機能状態、メンタル面ほか健康関連アウトカムは改善しなかった」と結論づけている。

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何をどう評価したか