成人後、亜急性に始まる生活障害(知性、感情、意欲、興味、対人交流)について。単純型シゾフレニー、自閉性スペクトラム、アスペルガーなど。

なぜだか知らないが、そして、それがいちばん問題なのだが、
最近は、子供の頃は賢い子だったのに、最近は会社もうまく行かず、欠勤が多くなって
辞めさせられても不思議のない所まで来ているとか
大学に入ったけれども、なかなか勉強についていけなくて、友だち関係もうまくいかないし、
アスペルガーなどの解説を読むと当てはまっている感じがするとか
の例が多くなってきているように思う

確定的な原因も知られず確定的な診断法も知られていない場合、
世の中に発生する流行に左右されることも多く、
アスペルガーなどの流行も一時的なものであり、そのうち消えてゆくように思うのであるが
現状ではそうとばかりも言えないので困る

順調に生育した大人が、途中で不調になり、知的障害やコミュニケーション障害を呈した場合に、
昔ならばシゾフレニーをまず考えた
統合失調症に当たるものであるが、概念がそのまま引き継がれているとも言えない面がある
幻聴が発生し、被害妄想に悩まされるのが典型的な陽性症状と言われるものである
一方で、陰性症状とは、数年前まで確かにあったはずの、知性やコミュニケーション能力や感情や意欲、また興味などが失われて、戻ってこないことを言う
シゾフレニーの症状が陽性症状だけならばあまり怖い病気ではない
たとえば付き添いの人がしっかりと見守って、陽性症状が現れた時に休養をとったり
薬剤を使用したり、入院したり、そんなことで乗り切れるからだ

問題なのはその後で、陰性症状が目立つようになり、これには薬剤の工夫もされているのだがまだ
不充分であり、リハビリと称して無理をして動かすと陽性症状の再発に至ることもある

イメージとしては、陽性症状の時に大火事が起こり、脳の一部の細胞が破壊されて、
欠損症状が生じるという感じ、正確な話ではないけれども、まあ、概略
無理なリハビリは小さな火事を引き起こす

だから陰性症状の進展の予防としても、陽性症状の抑制が大事になる
その点で服薬維持が重大になる

こうしたシゾフレニーの中で、陽性症状は目立たずに、陰性症状が全面に出て持続しているものを
単純型シゾフレニーと呼んでいたことがあった
現在ではDSM型の診断が多く使われていて
その表現では、(5)
陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
となっているのだが
他の項目に当てはまらないこともあって、統合失調症の診断には至らないこともある
また、
広汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1ヶ月(治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる。
という注釈があって、機械的に考えれば、陰性症状中心の場合は、自閉性障害や他の広汎性発達障害という診断名が通用してしまう

また、
分裂感情障害と気分障害の除外:分裂感情障害と気分障害、精神病性の特徴を伴うものが以下の理由で除外されていること。
と書かれていて、気分障害を満たすならそちらを優先しろということになっている。

しかしこれら二点は伝統的診断学から言えば妥協できない部分であって、
自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴がどうであろうとも、統合失調症の診断が優先されるべきである。またも気分障害よりも、シゾフレニー診断が優先されるべきである。

何より、自閉性障害や他の広汎性発達障害は、進行性ではない。むしろ定義から言って、成長しつつあるのだと考えられる。
しかし、統合失調症(少なくともその一部分)は明らかに進行性であり、崩壊性である。
この点で全く逆向きということができる。

このような背景を持ってみれば、子供の頃は手もかからず優秀で、いい学校に入って、いい会社に入って、途中から問題が生じて、知性、対人交流、感情、意欲などのいずれかの領域で欠落症状が見られた場合に、第一に鑑別すべきは陰性症状中心の、単純型シゾフレニーなのである。

最近のドパミンブロッカー系統の、シゾフレニーの薬はどれも、陰性症状に対する効果を宣伝している
しかしまだ充分な成果を上げているとは言いがたい
そうは言うものの、陽性症状の再発予防を根気強く続けていれば、陰性症状の進行抑制になると私は考えているので、絶望する必要もない

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一旦完成された脳の組織が破壊されるものでは、脳血管障害や脳腫瘍が代表的である。
傷害される部分に応じて局所症状が現れる。当然、知性、感情、意欲、対人交流などの機能も傷害される。
また、認知症に属する脳変化もまた、知性、感情、意欲、対人交流などの欠損をもたらす。

しかしこれらは、大抵の場合は高齢者またはその直前辺りの病気である。
また発生に関しての時間経過は、血管性なら急性が多く、小梗塞の積み重ねならば亜急性もあり、
認知症に関しては、もっと進行が遅い場合が多い。ただし、いったん症状が外に現れ始めると、
かなり急速に進行する場合もある。

現在問題になっている若年者の生活障害症状は、経過から言えば、亜急性ないしは慢性に当たる。
ということは、変性疾患や脳内に物質が蓄積するとか物質が欠乏するとかの病変が想定しやすい。

一時言われたプリオン病は亜急性の経過を取り、潜伏期が長いので、病気として捕まえにくい特性がある。
症状としても完全に特異性があるものではなく、ある程度場所依存性があるのだろうと思う。その点で多様な症状が発生し得る。

思春期ということ、男性に多い傾向から考えると、性発達の面から考えることもできる。
しかしはっきりとしたデータはない。

何かの物質の蓄積の可能性はないか。個人的には大いにありそうなことであると思うが手がかりも少ないように思う。
スローウィルスやワクチンの影響などはどうだろう。発生頻度がヒントになると思うが、これもまたよく分からない。

胎生期に母体がインフルエンザに罹患したとか、そのようなイベントに関係づけて、いろいろな病気の原因について統計的に分析したものもある。しかしなぜ思春期になって病態が発現するのかの説明までは遠い。

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自閉性障害や他の広汎性発達障害についての大方の解説は、頭は良くて成績はいいのに、対人交流がうまくなくて、集団に馴染めず、固執性も周囲に理解されず、次第に不適応になるなどである。
コミュニケーション障害、社会性の障害、過剰な固執性などが子供の頃から見られれば、自閉性障害や他の広汎性発達障害という側面からアプローチすることになる。
しかし、概して成績の良い子供は、対人交流が下手でも、容認されてしまうところがあり、問題が表面化しないで経過する場合がある。
それが会社に入ったりすると、学校とは違って、稼がないといけないので、自由でいいというわけにはいかない、それで不適応が析出する。
男性に多いというのも、伝統的に会社は男性により多くを要求するからだ。
などと説明される。

しかしながら、自閉性障害や他の広汎性発達障害の原因についてはよく分かっていないし、治療法もよく分かっていない。シゾフレニーも似たようなものだけれども、ここ100年の蓄積で言えば、シゾフレニーのほうに蓄積が多い。

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シゾフレニーがどのくらい昔からある病気であるかについては、いろいろな空想がある。
昔はてんかんやヒステリーと同じく宗教と関係して、生きる場所があったのではないかとか、
産業革命とか都市化と関係していて、近代に特有のものではないかとか、いろいろな話がある。
シゾフレニーと一括りにするのも良くないので、太古の昔からあるものもあれば、
近代社会に特有な部分もあるのかもしれない。
個人的には工業化社会となり都市が形成され農村人口の一部が都市に流入し、そのプロセスの中で、一部のシゾフレニーは形成されたのではないかと考えている。

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というような背景的説明をもとに考えると、大人になって始まる、知性、感情、意欲、興味、対人交流のいずれかを主とする欠損症状を呈する病態に関しては、
まず大前提として、甲状腺機能障害とかのような身体疾患の鑑別をする。
そののち、まず第一にシゾフレニーを鑑別すべきである。好発年齢が20歳位であるし、知性、感情、意欲、興味、対人交流のいずれにおいても症状が発現する。遺伝歴も参考になる。近年はシゾフレニーの軽症化が言われているが、それは陽性症状の軽症化が言われているのであって、陰性症状の慢性化もまた同時に起こっているように思う。だからどの薬剤も慢性陰性症状をターゲットにしている。
これを鑑別除外できたら、次に発達障害に属するものを考えるべきである。
もちろん、シゾフレニーと発達障害が重なって生じる場合もあるが、
その場合の因果関係についてはまだ良くわからない。