トキソプラズマ感染と統合失調症患者の自殺企図の間には関係がある?

統合失調症患者の自殺行動とトキソプラズマ感染の関連性を検討した研究はない
というが
あたりまえだ
あるわけない

Schizophr Res 2011; Advance online publication
英語版 配信日 2011-09-08

MedWire News:米国の研究が示唆するところによれば、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)による原虫感染と、若年の統合失調症患者の自殺企図歴の間には関連がある。

「先行研究が示すように、統合失調症患者は他の人々に比べてトキソプラズマ抗体保有率が高く、また米国では、閉経後女性の自殺率とトキソプラズマ感染率の間に正の関連性が見られる」と、University of Maryland School of Medicine(メリーランド大学医学部、ボルティモア)のTeodor Postolacheらは説明している。

しかし、「統合失調症患者の自殺行動とトキソプラズマ感染の関連性を検討した研究はない」。

そこでPostolacheらは、統合失調症患者950例(男性600例、平均年齢38歳)を対象に研究を実施した。950例のうち、351例(37%)には自殺企図歴があり、残る599例(63%)に自殺企図歴はなかった。

被験者全員から血液を採取し、固相酵素免疫測定法を用いてトキソプラズマ免疫グロブリンG(IgG)抗体を測定した。トキソプラズマIgG抗体価が0.8以上の場合を、血清陽性とみなした。

さらに、2種類の神経向性ウイルス[サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)]とグリアジン(小麦タンパク)に対する血清抗体価も測定した。

その結果、38歳(被験者集団の年齢の中央値)未満の患者群(若年患者群)では、トキソプラズマ抗体陽性と自殺企図歴の間に有意な関連性が認められた(補正オッズ比は1.57)。

同様に若年患者群では、トキソプラズマ抗体価と自殺企図歴の間にも有意な関連性が認められた。

38歳以上の高齢患者群では、自殺企図歴とトキソプラズマ抗体陽性およびトキソプラズマ抗体価の間に、有意な関連性は見られなかった。

両年齢群ともに、抗CMV、HSV-1、グリアジン抗体陽性と自殺企図歴の間に関連性は認められなかった。

PostolacheらはSchizophrenia Research誌の中で次のように結論づけている。「本研究では、トキソプラズマと自殺行動の関係を示す新たなエビデンスとして、若年の統合失調症患者における自殺企図歴と、トキソプラズマ抗体の間に関連があることが見いだされた」。

「(今後の縦断研究によって)本研究所見が追認され、エビデンスが確立されれば、予防的にも治療的にも大きな意味をもつことになる」。