日本の富裕層が最も求めているのは、資産運用より前に税金対策なのです。

"証券業界に入ったばかりの頃のことです。担当する富裕層の顧客に対して、自分がファイナンシャルプランナー資格を取得したことを報告し、「今後は資産運用のご提案も任せてください」と語ったところ、その顧客は笑ってこう言ったのです。「そんなものに興味はないよ」──。それは私が初めて知った、本当の富裕層特有の発想でした(発言の真意は後述)。

 私の証券業界でのキャリアの約半分は、国内外でのプライベートバンクビジネスに従事していました。担当していたのは金融資産10億円を超えるような大手顧客ばかり。
 プライベートバンクとは何かを一言で説明すると、富裕層の資産管理に関するワンストップサービスを行う場所です。サービスは、資産運用への助言、税務や法律への助言、遺言執行など多岐に渡ります。
 また、資産管理を超えて富裕層のニーズを何でも満たすために、「海外不動産の紹介」「高級オークションへの招待」「子女の海外留学サポート」「高級旅行の手配」「プライベートジェットやクルーザーの紹介」なども外部のネットワークを活用し提供しています。
図は野村総合研究所が発表した11年時点での富裕層ピラミッドです。純金融資産1億円を超える富裕層・超富裕層はおよそ81万世帯で、この非常に限られたマーケットでプライベートバンクは競い合っている状態です。
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 また、金融資産1億円以上の富裕層の内訳は、企業オーナーが約33%、医業オーナーが約10%、不動産オーナーが約7%といわれます。こういった職種だからこそ、日本の富裕層の多くは相続・事業承継がなおさら大変で、日系のプライベートバンクはこれを重点分野と位置付けているのです。

 日本の富裕層が置かれた特徴的な環境が、日本特有のプライベートバンクビジネスの形を作り上げてきました。

相続税・贈与税、法人税など日本の税率は、海外と比べても著しく高い状況にあります。だからこそ、日本の富裕層が最も求めているのは、資産運用より前に税金対策なのです。冒頭で紹介した富裕層の発言は、こういう意味でした。「資産を運用で殖やさなくても、どうせ使い切れないくらいある。しかし、税金で持って行かれたくはない」のです。
 このため日系のプライベートバンクが最も力を入れているのは、富裕層への税制対策の提案です。不動産を活用した相続税の圧縮や、企業オーナーであれば資産管理会社を使った自社株の評価圧縮、生命保険や飛行機や船への出資など、手法は多岐に渡ります。
 日本の税制のルールは非常に複雑であり、外資系金融機関がこれを行うのは容易ではありません。また日本には税制対策に有効な資産運用商品が多く、これらは外資系が得意とする商品とは違ったりします。"

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株式の売却益に課税しない国へ移住する日本の富裕層が増えているそうだ。