精神科カウンセリングについて

精神科カウンセリンではここ30年で著しい変化を経験している
まず原初の形は古いタイプの精神分析である
そこから新種の精神分析学派が派生し
いろんなことを言う
しかしながら当時の傍流であり頭の悪い人間のための精神療法であった
支持的精神療法、森田療法、内観療法、行動療法なども、独自の戦いをしていた。
そして時間が立って生物学的精神医学が伸長して
精神分析の退潮が明確になって
認知科学(とは言えとても素朴なもの)と行動療法がなぜだか合併するような動きになり
この2つが合併するのならなんでもありだろうということになって
周辺諸流派の成果をつまみ食いして歩き
そして現代の認知行動療法があり
さらに今ではその内部で分裂の動きが明らかになりつつある
みなさんどうも派閥活動になると妙にマニーなのである。

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【機能再建】
うつ病や躁うつ病でも欠損が生じ残遺状態になる
残遺状態のリハビリについては統合失調症でしばしば問題になるのであるが
都合のいいときだけ引用させていただいているガミーの論文などでも
うつ病や躁うつ病の残遺状態についてのリハビリが議論になっている
ガミーはおおむねは生物学的なうつ状態に関しては薬剤が治療の主体になると論じていて
精神療法的な関与は主に薬剤治療が終わった後で
機能欠損が残遺状態した場合に必要なものであるとしている
しかしながら、どのような精神療法をすれば、機能欠損を回復することが出来るのかという問題については
明確な答えはないようで、
彼の提示によれば、サポーティブな精神療法や精神分析療法は「×」がつけられている

機能欠損に関してのリハビリは脳血管障害や脳腫瘍手術後の運動機能回復のリハビリなどがモデルになっている
階層構造をなしている脳の中でどこかの部分に欠損が生じた場合に、
機能回復訓練をするのであるが、
その場合の原則は、下位機能から順に構成して、最後に最上位機能に至ることである
この順序を守らないで中位の機能から再建したりすると
最後になって上位機能が改善しないことがあり
その点で細心の注意が必要である

ところが精神科のリハビリの場合には
どの機能が下位機能でどの機能が上位機能で
当面どのように対処したらよいのかよく分からないことも多く
定式化されたリハビリの方式は確立されていない

脳の階層構造を前提とした病気の理解とリハビリの方式に関しては
ジャクソニスムの応用である

以上は機能再建の話題であるが
再建を目指すのではなく残存機能の最大活用を目指す方向も有力であり
統合失調症のSSTが実例である

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【疾病教育】
精神科精神療法の大きな柱は患者教育または疾病教育であり、家族教育も含まれる。
専門家と非専門家の違いはまず第一に専門知識の違いであるから
疾病教育が期待されることは理解しやすい

最近ではネットをはじめ様々な情報があふれており
その正確さや新しさについては保証がないものがほとんどである

また一般知識として言われていることでも
その人の場合に当てはまるのかどうかについては
なお多くの専門知識が必要である

疾病教育の中には生活習慣教育なども含まれる
おおむねを言えば、病気の「芽」または「根」があったとしても、
規則正しい生活をして、ストレスを遠ざけ、睡眠を良好に保ち、食事を健全にすれば、
かなりの程度に改善は期待できるものである
そのような日常生活の教育が役に立つ

また職業人としての教育も役に立つ
職場でどのように振る舞うべきかについて
教育する

ネットで不正確な情報があふれているので
正しい情報をネットで発信することは必要なのであるが
なかなか容易ではない

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【非特異的治療因子】
古くから多くの流派の精神療法が存在し
未だに決定版がなく
さまざまに主張のある状況を俯瞰すると
おそらく、精神療法としての主要有効成分は『非特異的治療因子』なのではないかとの議論は根強い
各種精神療法の共通因子と考えて良い

たとえば治療者との人格的ふれあい、人柄、誠実さ、肯定的関心、
受容的態度、温かさ、などが言われる

おそらくその通りだろうと思われる
しかしながら、そのような優れた人格が、はたして精神療法に従事することを期待して良いのかという問題が残る

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【プラセボ・カウンセリング】

カウンセリングの有効成分は何かについていろいろと意見があり、
その仮定に沿って、その有効成分を取り除いたカウンセリングをプラセボ・カウンセリングとすれば
有効成分を含むカウンセリングとプラセボ・カウンセリングとの間で
どの程度の差が出るかを検証することが出来る

本来的にはそのようなものなのであるが
これはある面ではブランド戦略と似ているもので
権威付け、口コミ、値段、予約の取りにくさなどで
ある程度コントロールできる
絶賛されていますとか、宣伝し、熟達したカウンセラーですとか自分で宣伝する
値段も高くして価値を印象付けて
予約も取りにくくする

そのようにしてようやくたどり着いた
という印象を作り出せば
心理的操作の第一段階は完了するのである

大体の商売は
物品を売ったり(たとえば壺や印鑑)
サービスを売ったりして(たとえばエステ、痩身)
売りつける際に心理的操作を行うのであるが
精神療法の場合にはそれ自体が売り物であるからややこしい話である

壺や印鑑を買ったけれども幸せにならなかったと苦情を言えば
あなたの業はそれだけ深いとか言われてまた請求されるし
やせないのはどうしてだと文句を付けると
あと一歩なんだからあと30万円出しなさいとか言われる
どんな場合にも冷静になってほしいものだと思う 

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その他に個別的因子があり、最近では
認知スキーマ、メタ認知、メンタライゼーション、行動活性化、マインドフルネス
などがある

どの時代でもこのような主張があったし
これからもあるだろう

たぶん同一平面上の動きなので
一段上に上ることは難しいだろうと思われる