“ 米国ヒューストン空港では、以前より手荷物引渡所(Baggage Claim)の待ち時間が長いという顧客からのクレームに晒されてきた。空港は増え続ける不平に対処するために、スタッフを増員することにより、平均待ち時間を8分までに短縮させることに成功したが、それでも苦情の数は減らなかった。 そこで、空港がとった方法は、「手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせるようにした」というものだ。 ヒューストン空港の新手荷物引渡所(New Baggage Claim at Hobby Air

米国ヒューストン空港では、以前より手荷物引渡所(Baggage Claim)の待ち時間が長いという顧客からのクレームに晒されてきた。空港は増え続ける不平に対処するために、スタッフを増員することにより、平均待ち時間を8分までに短縮させることに成功したが、それでも苦情の数は減らなかった。
そこで、空港がとった方法は、「手荷物引渡所までの距離を延ばし、客に空港内で長い距離を歩かせるようにした」というものだ。
ヒューストン空港の新手荷物引渡所(New Baggage Claim at Hobby Airport Opensより)
最初に空港は乗客の動きを注意深く分析した。調査結果によれば、平均的な乗客たちは、到着ゲートから手荷物引渡所まで1分歩き、そこで7分待ってようやく自分の手荷物を受け取っていた。実に88%もの時間を手荷物引渡所でただ立って待つことに費やしていたのである。これが乗客の不満を増幅させていたのだ。
そこで、空港は到着ゲートをメインターミナルから離し、手荷物を最外部のコンベアに載せた。これにより、乗客は手荷物引渡所まで6分も歩くことになったが、苦情の数はほぼ0まで激減したのである。
ここで、最終的に乗客が手荷物を得るのにかかる時間は以前と全く変わっていないことに注意してほしい。それにもかかわらず、乗客の満足度は飛躍的に改善されたのだ。
UIの改悪がUXを改善
ここで手荷物引渡所というUIを考えてみると、機能自体は全く変更がなく、ただ場所が6倍も遠い場所に移動しただけだ。すなわちUIという観点から見ると、ユーザから遠くなった分改悪されたことになる(実際には電光掲示板や照明の改善がなされているが全体に占めるウェイトはわずかだ)。それにもかかわらず明らかにUXは改善されたのだ。良いUIが良いUXを実現せず逆に悪いUIが良いUXを実現する場合もあるのだ。