抑うつ症状と大うつ病性症状 躁的ではなくて躁病性

depressive symtoms とか
major depressive syndrome とか
で表現されているのだが
自分としては
depressiveの部分を
抑うつ的ではなく大うつ病性 と訳したほうがいいと今思っている
manicは躁的ではなく躁病性とする

depressiveとmanicを
日本語で
抑うつ的と躁的
と翻訳すると違和感がある

へこんでると盛り上がってる
凹みと凸りあがり
などと言えば少しはいいのだけれども
そうもいかない

英語は日常的な言葉を学術語として定義して使っている
当然ずれが出るので
問題になるから
メランコリーではどうかなどの議論も出る
日本語は抑うつはまだしも躁的なんていう言葉はほとんど使わない
はしゃぎまわってとか
陽気にとか言いそうなところだけれども
もちろん歴史的な慣用ではなく
DSMの会議で多数決みたいにして決められた用語である

だからこのところの文章で書いているdepressiveは
DSMで定義されたdepressiveである
何かの不調には違いない、絶好調であるはずがないのだが
内容については注意が必要である

学問的な内容としても
mixed state 躁うつ混合状態の問題があるので
線引きはなかなか微妙である

イライラして怒りっぽいのは
うつ病性とする人もあるし
それはすでに躁病性のものであって
混合状態であると結論する人もいる

最後に大うつ病エピソード、躁病エピソード、混合エピソード、軽躁病エピソード、と紹介している

これでいうと
何事にも興味がなくなり
食欲過剰にになり
睡眠過剰になり
人生は価値がないと信じ
注意集中の持続は短時間でケアレスミスが続き
学校を休んでいる 

などという場合、萎れているのでもないし、凹んでもいないようだし、元気が無いというのでもない、
一般的な言葉で言う抑うつ的とも言えないだろう
仕方が無いので『大うつ病性症状』といえば一応はっきりするだろう
大うつ病性という言葉で『例のDSMの診断基準で定義されるもの』という意味である

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Manicという言葉も日本語とは余りなじまない
絶好調とも違う
超陽気とも違う

もともとヨーロッパ語のmanieは精神の変調全体を意味したもので
日本語で古く言う「狂う」などの言葉が近いのかと思う


鉄道マニアなどという時のマニアはもともとはこのmanieであるから 
鉄道狂などでぴったりする
いまでもニンフォマニアなどと使う

熱狂的にはしゃぎまわり
軽薄にではなく重厚に本格的に騒ぐ点が多分語感に含まれていると思う
ちゃらいのではなく本格的なのだ

sthenicというのだが強力性とか精力性とかいうもので
反対派asthenic、弱力性とか無力性

たとえばなにか嫌なことを上司に命令されたときに『はい』というその言い方が
精力的な『はい』と弱力的な『はい』があるわけだ
返事に込められたものが違う

精力的に騒ぎまわり恋愛と性行為をしまくり借金をして散財し喧嘩を続けて裁判が好きで論争が好き
人より優位に立ちたくて金が好きで異性が好きでみんなの話題の中心にいたがる
という人間タイプを日本語で一言でなんというのだろう
豊臣秀吉というのだろうか

私の理解ではそんな感じがマニーなので
これも『躁病性』という日本語として全く日常的でない言葉がいいのではないかと思う
誤解しないですむと思う

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そんなわけで
エピソードの期間と組み合わせで
病気を定義しているわけだ

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 大うつ病エピソード

A.  以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ二週間の間に存在し、病前の機能からの変化をおこしている。これらの症状のうち少なくとも 

1つは、(1)抑うつ気分または (2)興味または喜びの喪失である。 (明らかに、一般身体疾患または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない。)

1.患者自身の言明(例えば悲しみまたは、空虚感を感じる)か、他者の観察(例えば涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。(小児や青年ではいらいらした気分もありうる)

2.ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退(患者の言明または他者の観察によって示される)。

3.食事療法をしていないのに、著しい体重の減少、あるいは体重増加(例えば1ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。(小児の場合、期待される体重増加がみられないことも考慮)

4.ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。

5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主的感覚でないもの)。

6.ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。

7.ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある)。(単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない)

8.思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(患者自身の言明による、または他者によって観察される)。

9.死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが、反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりした計画。

B.  症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

C. 症状には著しい苦痛または社会的、職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D.  症状は物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。

E.  症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち愛する者を失った後、症状が2ヶ月をこえて続くか、または著明な機能不全、無価値観への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動制止があることで特徴づけられる。

 躁病エピソード

A.  気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的な、いつもとは異なった期間が、少なくとも1週間持続する。(入院治療が必要な場合はいかなる期間でも良い)

B.  気分の障害の期間中、以下の症状のうち三つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単に易怒的な場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。

1.自尊心の肥大、または誇大。

2.睡眠欲求の減少(例えば、3時間眠っただけでよく休めたと感じる)。

3.普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする心迫。

4.観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験。

5.注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係の無い外的刺激によって他に転じる。)。

6.目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥。

7.まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること(例えば、制御のきかない買い漁り、性的無分別、馬鹿げた商売への投資などに専念すること)。

C. 症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

D.  気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐための入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。

E.  症状は物質(乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用や一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。

(身体的な抗うつ治療、例えば投薬、電気けいれん療法(注1)、光療法(注2)などによって明らかに引き起こされた躁病性のエピソードは双極性Ⅰ型障害の診断とはしない)

 混合性エピソード

A.  少なくとも1週間の間ほとんど毎日、躁病エピソードの基準と大うつ病エピソードの基準を(期間を除いて)ともに満たす。

B.  気分の障害は、職業的機能や日常の社会的活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、あるいは自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。

C. その症状は物質の直接的な生理学的作用(例:乱用薬物、投薬、または他の治療)、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。(身体的な抗うつ治療例えば投薬、電気けいれん療法、光療法などによって明らかに引き起こされた混合性様のエピソードは、双極Ⅰ型障害の診断とはしない。)

 軽躁病エピソード

A.  持続的に高揚した、開放的な、または易怒的な気分が、少なくとも4日間続くはっきりとした期間があり、それは抑うつのない通常の気分とは明らかに異なっている。

B.  気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単に易怒的な場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。

1.自尊心の肥大、または誇大。

2.睡眠欲求の減少(例えば、3時間眠っただけでよく休めたと感じる)。

3.普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする心迫。

4.観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験。

5.注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係の無い外的刺激によって他に転じる。)。

6.目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥。

7.まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること(例えば、制御のきかない買い漁り、性的無分別、馬鹿げた商売への投資などに専念すること)。

C. エピソードには、症状のないときにはその人物に特徴的でない明確な機能変化が随伴する。

D.  気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。

E.  エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど、または入院を必要とするほど重篤でなく、精神病性の特徴は存在しない。

F.  症状は物質(例:乱用薬物、投薬、または他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。(身体的な治療、例えば投薬、電気けいれん療法、光療法などによって明らかに引き起こされた軽躁病様のエピソードは双極Ⅱ型障害の診断とはしない。)