触れ合い(タッチ)と実存的不安 Touch and Existential Anxiety

触れ合い(タッチ)と実存的不安
Touch and Existential Anxiety
実験室内実験のみの結果ではあるが、自尊心が低い被験者において、短時間の人間的な触れ合いは死の不安を軽減させ、社会的結びつきの実感を増大させる。
境界性の特徴を有する10代の少女は安心を得るための行為としてハグ(抱きしめ)をたくさん必要とし、一泊旅行でも触感性の移行対象として枕やテディベアを持っていくことが多いということが臨床的に認識されている。オランダのKooleらは、20代前半の有償学生ボランティアを対象とした複数の実験を行い、心理的特性とタッチが“死の不安”に与える影響との関連について研究した。
61例を対象とした実験では、女性の実験者が質問票調査を行いながら被験者の背中に1秒間タッチしたところ、自尊心が低い被験者では死の不安の自己評価が大幅に低下した。120例を対象に同じ実験を再度行ったところ、同様な結果が得られた。次に、被験者は注意妨害課題終了後、社会的結びつきの感覚に関する質問票調査を受けた。その結果、自尊心が低い被験者のみにおいて、タッチと社会的結びつきの評価の高さに関連が認められた。関連する実験では、死の不安を惹起した後、自尊心が低い被験者は、死の不安を惹起されなかった被験者または自尊心が高い被験者と比較し、テディベアの金銭的価値を高く評価し(N=50)、ハグをしてもよいと指示されたとき、自尊心が低く死の不安を惹起されたグループでは個々の民族文化に基づいた心理的防衛が減弱されることが示された(N=80)。すべて実験において、自尊心が高い被験者はタッチによる影響を受けなかった。性別による違いは認められなかった。
コメント
これらの知見は、触れられることにより不安が軽減しうることを示した他の研究報告と一致するとともに、タッチが自尊心の低い人にとってとくに重要である可能性を示している。著者らは、実際のタッチあるいは擬似的なタッチが実存的不安の恐怖を軽減させうるとの仮説を立てている。これらの現象の根底にはオキシトン系とエンドルフィン系が関与している可能性がある。これらの知見の頑健性を明らかにし、それらの文脈付けを行うためにはさらなる研究が必要である。これらのデータは治療を目的としたハグの有用性を支持しているが、10代の青年は身体的接触に感情的・性的な意味を過剰にとらえる傾向が強いため、ハグのプラス効果とそれらを判別しなくてはならない。
—Joel Yager, MD
引用文献:
Koole SL et al. Embodied terror management: Interpersonal touch alleviates existential concerns among individuals with low self-esteem. 
Psychol Sci 2014 Jan 1; 25:30.