“中世ヨーロッパでは、毒殺の歴史があって、特に王位継承者に対する毒殺が頻繁に起こっていました。次々と王様が一服盛られて殺されてしまう。一服盛られるのは何かというと、ヒ素です。和歌山のカレーライス事件というのがあったでしょう。ヒ素というのは無味無臭ですから、水に溶ける。そしてカレーライスの中に入れて食べさせたという事件がありましたけれども、毎日食べさせていると、いつの問にか、何の病気か分からずに死んでしまう。食事の中に入れて非常に微量ずつ食べさせていると、これは何で死んだか分からないわけです。ですから、ヒ素

"中世ヨーロッパでは、毒殺の歴史があって、特に王位継承者に対する毒殺が頻繁に起こっていました。次々と王様が一服盛られて殺されてしまう。一服盛られるのは何かというと、ヒ素です。和歌山のカレーライス事件というのがあったでしょう。ヒ素というのは無味無臭ですから、水に溶ける。そしてカレーライスの中に入れて食べさせたという事件がありましたけれども、毎日食べさせていると、いつの問にか、何の病気か分からずに死んでしまう。食事の中に入れて非常に微量ずつ食べさせていると、これは何で死んだか分からないわけです。ですから、ヒ素による毒殺というのはものすごく歴史が古いんですね。どこの国の王様も、自分の食事の中にヒ素が入っていないかというのがいちばんの問題だった。それをどうやって発見するか。毒見役がいるけれども、毒見役というのは、毒見役がその場で死んでくれないと意味がない。それくらいの強い毒でないとダメなんですね。毒見役はピンピンしているけれども、毎日入れられて3年でやられる毒がいちばん怖い。そういうヒ素というものがずっと使われてきたわけです。
  それを、銀の食器を使うことによって防止できるということを中国で発見するんですね。もう古い歴史の物語ですが、銀の食器にたとえばカレーライスを盛ったとすると、銀とヒ素が化学反応を起こして銀食器の色が変わるんです。色を変える、化学の反応ですね。そのために、中国から始まって、現在でも王家とか伯爵といったところでは全部銀食器です。お金持ちだから銀食器を使っているんじゃないんですよ。命がけで銀食器を使っている。本当に贅沢をしたいのなら、金の食器を使えばいいわけですが、金ではダメなんですね。"