説明資料

○初診時から3-4回までの診察の内容                                      
おおむね、次のようなことが知りたいと思っています。

患者さんとして分かることは書いてきていただけると助かります。
 ⇒ちょっと詳しい初診シートがこちらにありますので、コピーしてワープロで書いて
   初診時に見せていただければよろしいかと思います。
  初診シート詳細版2008-9-29 
 ⇒簡略版はこちら。こちらでも充分です。
  初診シート簡易版2008-9-29

1.主訴、始まりの時期、きっかけ
2.SDSやSRQ-D、HAM-Dを施行
3.悲哀……涙、将来に希望がない
4.億劫さ……能率低下、ミス
5.興味……新聞、ニュース、趣味
6.希死感
7.イライラ・精神運動抑制のどのあたりに位置するか
8.不安焦燥の程度
9.睡眠
10.食欲・体重・尿・お通じ
11.身体症状・月経・検診結果・既往歴
12.勤怠・職場の現状
13.つらいのは仕事内容か時間か対人関係か
14.性格傾向の概略について
15.家族状況、遺伝関係、生育歴、躁状態の時期があったか
16.全体の表出、表情、話し方、印象について記載
17.必要に応じて心理検査の計画

DSMを念頭において、チェックする。性格の軸、適応の軸についても確認する。
メランコリー親和型が典型であることを念頭において、その典型からの距離を測る。
統合失調症においても、性格障害においても、初老期認知症においても、
あるいはADHD、高次脳機能障害においても、うつ状態は見られるので、見逃さないように鑑別する。

薬剤は現在症状と基本性格を診て選択する。
イライラが強いか、意欲低下が強いか、が大まかな目安になる。
また、対人距離が近い人と遠い人とでは薬剤選択が異なる。
漢方薬を積極的に使う。

思考障害や能力低下が根本的に影響している場合があるので、
見逃さず、原因を特定する。いろいろな可能性がある。

○その後の治療                                     

1.原因について整理
2.カウンセリングやお薬で治療、場合によっては制限勤務や休職
3.再発予防教育
4.家族教育
5.休職した場合には休職中の生活指導、復帰前のリハビリ、復職支援プログラム、職場との打ち合わせ、復帰後の仕事の内容、制限勤務の指示、職場の産業医・保健婦との情報共有
6.休職中の給与補償の書類(傷病手当金請求書、場合によってはハローワークに書類提出)
7.自立支援医療費制度、精神障害者保健福祉手帳、地域障害者職業センターの「リワーク支援」など活用できる制度や施設の利用検討

これらを順次考慮していくことになります。たいへん大胆に簡略化して言うと、

1.急性期……静養する。
2.回復期……生活のリズムを整え症状を改善する。必要なら服薬。
3.復職準備……通勤の練習や仕事の練習をして、復帰前リハビリ。
4.復職交渉……円滑な職場復帰をめざして人事部、産業医、保健婦と情報共有する。
5.復職……職場リハビリのつもりで、短時間、軽作業から開始して、徐々に時間を長くし、作業負荷をあげて、通常勤務に復する。
6.再発防止……スケジュール管理、疲労度管理、休養の仕方、心理サポート構築などを確認する。QIDS-SR 自己評価するうつ尺度ストレス・マネージメント・レコーディング

これらの段階を踏んで治療は進みます。

○休まないで治療も                                   
お医者さんとしては、一番安全確実な治療を選択したいので、
「休職して、お薬を使う」、とおすすめすることが多いのです。

しかし、これは最近感じていることですが、
患者さんの立場になってみれば、
休まないで、薬で、なんとかならないか
というこことだと思います。

なかには、休ませてもらえたらいいけれど、言い出せなくて、
という人もいて、その場合には、休職で問題ないのですが。

絶対に休めないと決心している人を説得して、
休養をとってもらうのも私たちの大事な仕事です。
しかし、そうではなく、休まないで、もう少し、
なんとかならないかというのも、切実な患者さんの希望です。

このあたりで、あまりに妥協してしまうと、治療としてはうまく行かないのですが、
しかし、新橋のあたりのサラリーマンさんの話を聞いていると、
休んでくださいとばかりいっているわけにもいかないようだ
という気持ちになります。

彼らの責任は重い。一般に、
「無理をしても、人生あんまり変わりないよ」と説得して
有効な場面も多いですが、
このあたりのサラリーマンさんの場合、
努力の成果がどんなにすばらしいものか、
諸先輩の実例を見ているわけですから、
ぎりぎりまでがんばっていても、なお、休む気にはなれないようです。

猛烈サラリーマンは過去のもの、といった感じで、
テレビや雑誌では流れていますが、
新橋のサラリーマンは、やはり、猛烈です。
「がんばってもいいことないしな」と、若い人はいいますが、
新橋では、がんばったら、とてつもなくいいことがあるのです。

そんなことも考えると、休むだけではなく、もっと知恵がないか、
考えてみなければならないところだと思います。

○自然治癒力を妨げない、引き出す。                         

当院としては、自然治癒力を引き出す方式を主眼に考えています。
自然治癒力を妨げているものがあったら、それを取り除く。
自然治癒力が弱いようなら、それを補助する。
漢方薬とかビタミン剤とかはそんな感じだと納得していただけると思います。

睡眠導入剤は、薬で無理に眠らせるというものではありません。
多くは睡眠のきっかけを作るだけです。

抗うつ剤は、いろいろな働きがあるのですが、
結局、ゆっくり休んでいただいて、自然治癒力を引き出す、
そのような働きを主眼としてもいるのです。
セロトニンが増えればすべて解決するのなら、
話はもっと簡単なはずなのです。

虫歯のように原因を取り除けるなら、一番根本的で即効的な治療ですが、
精神的な事柄に関して、そのようなことができるはずもありません。

骨折したときに、「がんばって骨を早くくっつけよう」と思ったとして、
どうすればいいでしょうか?
結局、骨がずれたりしないようにして、時間を待つしかありません。
そして、それで充分にいい治療なのです。

待つ時間はつらいものです。
ついつい、余計なことをしてしまいます。
そこを、ちょっとだけがまんして、待ってください。
骨折したとき、骨がくっつくのを待っているのだ、そうイメージして、待ってください。

そのうち治療が進歩すれば、
骨をくっつける瞬間接着剤ができるかもしれません。
うつになった脳神経細胞を瞬間的に治してしまう方法がみつかるかもしれません。

でも、それまでは、少なくとも、治療の妨げになることはしないで、
ゆっくり待つことです。
体の中で、一所懸命、治療が進んでいるのですから。

自然治癒力を引き出す、邪魔しない。そんな方針です。

○抗うつ剤の飲み方                                 

第1回目 つまり初診の日

もし、「うつ病」「うつ状態」であると診断されたら、治療と抗うつ剤について、説明があります。

1. うつ病、うつ状態は、必ず治る病気です。きちんと治療しましょう。薬は勝手に増やしたり、
また、勝手に減らしたり、勝手に中止したりしないようにしましょう。 

2. 脳の中で伝達物質の不具合が起こっている、身体的な疾患です。
「怠け病」「気の病」や「性格が悪いから」ではありません。自分を責めないようにしましょう。 

3. 病気を治すことは医師に任せ、なるべく休養をとりましょう。 

4. 辞職、離婚、引越し、財産処分など、重大な決定は延期しましょう。 

5. 抗うつ薬は効果が出るまでに時間がかかります。
効果が出て楽になる前に、副作用が出ることがありますが、薬をやめないようにしましょう。
4~5回かけて、だんだん増やしていって、標準量まで到達します。

6-1. 不眠、食欲不振、めまい、肩こり、全身疲労など、身体症状もつらいものですから、
総合的にケアしましょう。気になることは、気軽に相談してください。

うつ病やうつ状態の場合には、不安やイライラをともなうこともあり、
抗不安薬を併用することも多いと思います。
抗不安薬は、不眠、食欲不振、めまい、肩こり、頭痛などにもよく効くので、
全身状態を楽にしてくれます。
さらに、一部の抗不安薬は、うつに対して速効性があります。
抗うつ剤に抗不安薬を併用することも検討に値する選択肢となります。

6-2. 漢方薬が全身状態を楽にしてくれることがあります。相談しましょう。

7. 知識のない人に、「根性だ」「気合だ」と言われることがあります。
世間はいろいろですが、がっかりしないで、科学的に治療しましょう。

8. 治る過程は一直線でなく一進一退を繰り返すものです。
三寒四温といいます。焦らないで、2~3ヶ月先を目標にしましょう。 

9. 治療の中盤に入ると、「頑張ってもっと早く治したい。何とかしたいのに、
一日動くと次の日は動けない。どうして気力が出ないのか。」と悩むことがあります。
ここで焦らないで、辛抱することです。

10. クリニックは、仕事が終わったあとの夜の時間帯は混み合います。
できれば、空いている昼の時間帯に通院しましょう。 

11. 時間のない人は、薬局に処方箋を提出して、あとでお薬を受けとってもいいでしょう。

12. 最初は一週間に一回の通院を予定して、不具合や不安があったら、
それ以外でもお話をしましよう。薬だけを漫然と飲んでいるのは、慢性化につながります。
本当に必要なのか、判断しましょう。本当に必要なら、一年でも二年でも飲みましょう。
合理的に対処しましよう。

などのような説明があります。

抗うつ剤の最初の副作用は、吐き気、眠気、めまい、下痢、便秘などです。
体質、全身状態、薬の種類、量に応じて、これらの副作用に対応するお薬も併用します。
第2回目

症状は服用開始1~2週間後から徐々に改善していきます。
うつ病の薬物療法は、計画的で継続した服薬が重要です。
効果が現れるまで徐々に増やして患者さんに合う量に調整します。
これは決して悪くなったからではありません。段階的に増やして標準量まで到達します。
そして、数カ月、その量を維持します。薬を減量するときにも、段階的に減らします。
そのほかにも飲む時間を変えるなど、微調整を加えていきます。風邪薬や痛み止めは、最初から量が決まっていますが、メンタルのお薬はそうではありません。
少量からはじめて、調整していきます。
第3回目

うつ病は、ストレスなどが原因となって、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンといった
神経伝達物質が足りなくなったために、疲れたり気力がなくなったり、
気分が落ち込んだりする病気です。SSRIなどの抗うつ剤は、足りなくなっているセロトニンを増やして脳の中の神経伝達物質の
バランスを整えてくれますが、効果が出てくるまで少し時間がかかります。
これで2週間経ちましたので、そろそろ少しだけ楽になっているのではないでしょうか。
少しよくなったかな、と感じられるようになるまでに1~2週間、
あるいはもう少しかかることもあるわけです。
セロトニンが増えてきちんと脳の中で働くようになれば症状は我慢し易くなりますから、
焦らずにゆっくりと治療をしていきましょう。

詳しく言うと、SSRIは、セロトニン(5-HT)の再取り込みを選択的かつ強力に阻害し、
シナプス間隙の5-HTを増加させることによって抗うつ作用を発揮します。
投与後は比較的速やかに5-HTの再取り込みを阻害しますが、
抗うつ作用を発揮するまでには1~2週間、あるいはそれ以上の時間がかかることがあります。
これには、5-HT放出に関するフィードバック機構が関与しており、
SSRIの効果発現には、うつ病でアップレギュレートされている
5-HT自己受容体の脱感作が必要で、それに1~2週間かかるためだと考えられています。難しいかもしれませんが、そのような、脳内の物質メカニズムの問題なのだということを
理解してください。「気合」の問題ではないのです。
第4回目

薬剤量が増えていくことが不安になるかもしれません。
だんだんと薬の量を増やしていくのは、標準量まで持っていこうとしているためです。
飲み始めに多い吐き気などの副作用に注意しながら、
少量から始めて少しずつ服用量を増やしていきます。病気が悪くなっているのではありません。

悪心、嘔気などの消化器症状は、嘔吐中枢の5-HT3受容体刺激によるものです。
投与初期に一過性に現れることが多い症状です。処置をしなくても消失する場合がほとんどですが、
これによって服薬を中止してしまう人もいます。また、通院をやめてしまう人もいます。ですから、できるだけ少ない量から開始し、その後も副作用の発現に注意しながら段階的に増量し、
効果が現れるまで充分に増量することが普通です。
必要に応じて、制吐剤を使用することもあります。
うつ状態の場合には、食欲不振となっている場合が多いですから、
胃薬を併用することは合理的です。

投与初期に発現する副作用は、SSRIの作用を実感できない時期に発現するため、
患者さんは「副作用が強く、効果が少ない薬」という印象を持つことがあります。
副作用は最初の2~3日から一週間がピークで、効果そのものは、
2週間以降くらいに出てきます。
この差をよく理解して、自己判断で服薬を中止しないようにしましょう。

薬剤血中濃度が少なくても、当座は楽になりますが、体質を改善するためには、
標準量まで上げて、それを一定に保つことが重要であると考えています。
薬に何を求めるかによるわけです。

一時的なリリーフでいいなら、低用量でいいと思いますが、
長期的な見通しを持って対処するなら、標準量を維持してみることが得策でしょう。
このあたりは、人生観や価値観とも関係しますので、お考えを聞かせてください。
また、医学の現状もお話します。
第5回目

抗うつ剤は標準量まで到達して、服用開始初期に感じていた悪心や傾眠の副作用も
すっかり消えていると思います。心配ないようなら、副作用対策のお薬は、中止にします。治療の初期から使っていた抗不安薬や睡眠導入剤は、継続したほうが安全な場合が多いと思います。

このお薬を飲むと、死んでしまいたいと思うことがあると聞いたので心配だという人もいます。
確かにこのお薬を飲み始めてしばらくの間は、まれに不安感やイライラ(焦燥感といいます)した気分が
強くなることがあります。
また、うつ病の患者さんの、死んでしまいたいという気持ち(希死念慮といいます)を
強めてしまうこともあります。
しかし、こうした気分は一時的なもので、治療を続けていると自然におさまってきます。
不安感やイライラした気分が強くてつらい場合には、しばらくの間、抗不安薬を一緒に飲むことで、
この時期を上手に乗り越えることができます。抗不安薬を上手に併用しましょう。
抗不安薬を合理的に利用することによって、抗うつ剤を飲み続けることができれば、大変有用です。
第6回目

自己判断で服薬の減量や中止をしないようにしましょう。
この時期になると、かなり落ち着いてくるものです。
したがって、一部の人は、自分で薬をこっそりやめていたりします。
薬をやめられれば完治が近いと考えるようです。
しかしそんなことはありません。せっかく順調に回復していた脳内物質の流れが、また滞ってしまいます。薬の効き始めに二週間くらいかかったことでも分かるように、
薬を中止した影響が出てくるのも、中止してからしばらくたってからになります。
そのときに反省してまた薬を飲み始めたとして、それだけ治療が遅れてしまいます。
完全に治って会社に復帰して、業務も通常通りにこなせるところまでしっかり薬を飲んで、
その後に、減量していくようにしましょう。
脳が自分の力で十分なセロトニンを作ることができるようになるまでには
少なくとも半年はかかるといわれています。
薬を飲み続けることによるマイナスは何もありませんから、焦らずに治療を続けていきましょう。SSRIを急激に中止すると、めまい、嗜眠、ぴりぴり感覚、嘔気、鮮明な夢、
焦燥感、気分の落ち込みなどの中止後発現症状が出現することがあります。
中止後発現症状のほとんどは一時的で軽度ですが、まれに重篤になることがあります。
自己判断による薬剤の急激な減量・中止は危険なので、決して行わないようにしましょう。症状が改善してきたときや、逆に効果が実感できないときに、
自己判断による服薬中止は起こりやすいものです。症状が改善してきた場合、
せっかく有効なお薬が見つかったのですから、少なくとも半年程度、
できれば年単位の治療継続が必要であることをご理解いただきたいと思います。

もしそれが不安で不快で、意に沿わないなら、話し合いましょう。
どこかに誤解や思い込みがあるかもしれません、
また、我々治療者の側に、患者さんの人生についての理解の不足があるかもしれません。
よく話し合えば、一致点が見つかると思います。
第7回目

おおむねこの頃には、生活リズムも整い、復帰に向けて何かしようかと思う頃です。
復職に向けて、時間割を決めて、作業や読書に取り組んでみるのがよいでしょう。
あくまでも少しずつです。
新聞を二時間も読み続ければ、かなり疲れます。図書館で雑誌を数冊、二時間も読めば、そ
れなりに疲れるものです。その疲れの程度を測定するつもりで、
最初は一時間、次には二時間、集中読書をしてみて下さい。この時期に、
「今回、どうしてうつ病になったか、今後それを回避するためにはどうすればよいか」
について考えて、文章にまとめてみるのもよい方法です。
おおむねワープロでA4二枚程度にまとめて、見せていただければ、
アドバイスできると思います。
しかし一方で、今ひとつ効果がないと感じる人もいるはずです。
ひとつの抗うつ剤について、標準量まで増やして、その量を維持し、
約6週間たって、改善が見られないようならば、その薬は無効であると考えてよいでしょう。
抗うつ剤を変更する場合にも、徐々に入れ替えることが原則です。
場合によっては、一度に交換する方法もありますが、
やはり原則は、部分的に入れ替えてゆく方法になります。効果が実感できない場合、改善が得られるまでに約6週間という時間が必要であることを
ご理解ください。それを過ぎて主観的に効果が実感できず、
客観的にも効果が認められない場合には、薬剤変更を検討します。

また、不眠、食欲不振、頭痛、身体のだるさなど身体症状の変化を注意深く報告してください。
抗うつ薬の効果発現の経過は「少し眠りが深くなった」「少し食欲が出てきた」
「イライラすることが減った」などわずかな変化として現れることも多いので、
本人の自覚としては、「よくなっていない」と感じてしまうこともあるようです。不安や焦燥感が強い場合や、うつの改善が今ひとつ思わしくない場合には、
抗不安薬や漢方薬を調整してみることも選択肢に入れて相談します。 

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うつ病で治療する場合の、復職までの実際の流れ。
1-診断まで

1-1 受診
不調が2週間以上続きつらいとき、受診を考えていただきます。
うつ関係のチェックリストがひとつの参考になります。

1-2 診断
これは専門のお医者さんに任せましょう。
診断基準のようなものがありますが、それは目安であって、
それだけで決まるものではないと考えてください。
さらに、次のような対策をとります。

1-3 薬
抗うつ剤(SSRI、SNRI、四環系、三環系)、抗不安薬、睡眠導入剤、
胃薬、漢方薬、ビタミン剤などをおすすめします。
現代のうつ治療には不可欠のものと思いますので、考えてみてください。

1-4 ストレス軽減
1-4-1 時間
残業なし、半日勤務など、時間を制限した勤務をしていただくことがあります。
また、出張の制限を指示することもあります。

1-4-2 仕事内容
仕事の内容について、たとえば内勤をお願いするとか、軽作業に切り替えるとか、
お願いすることがあります。

1-4-3 休職
必要な場合には、休職のお願いをします。あわせて、自宅での休養の仕方を指導します。

2-休職前期=完全リラックスの時期

この時期は、おおむね、2週間から1ヶ月程度、あるいはそれ以上になりますが、
完全リラックスの時期とお考え下さい。

この機会だから、普段できなかったあのことをしよう、などとは思わないことです。
なるべく受動的な楽しみで過ごしましょう。
テレビをボーッと見るとか、負担にならないような雑誌をめくるとか、そんな程度のことです。
大リーグの中継などがちょうどいいようです。

あるいは、ずっとベッドに横になっていて、ラジオをつけっぱなしにしている、
そんな過ごし方も多いようです。

よく眠ること、食欲がだんだん回復すること、そのあたりが目標になります。
お薬がだんだん効いてきますので、ご安心下さい。

会社から電話やメールが来て、ドキドキすることも多いと思いますが、
配慮していただくこととしましょう。

傷病手当金により、休職中の経済をまかなうことができることもあります。制度を確認しましょう。

3-休職後期=復職準備リハビリの時期

そろそろだいぶ気分も変わってきたなあという頃です。
だいたい1ヶ月から2ヶ月の頃ですが、
いきなり復職するのではなく、この時期を復職準備のリハビリにあてます。

自宅で休養をとって、だいぶいい、散歩もできる、買い物にも行けるという段階になっても、
家庭生活と職場ではやはりストレスに「段差」があります。

3-1 通勤
ひとつの壁が通勤です。朝起きて、電車で会社まで行けるかどうか。
その練習をします。

3-2 作業
机に座っていて、作業をこなせるか、練習します。たとえば、大学生が読む程度の本を読んで、
どのくらい頭にはいるか、確認します。

3-3 具体例
たとえば、会社が新橋や日比谷にあるとすれば、都立日比谷図書館を使います。
あなたの会社の近くの、公立図書館を使うと考えてください。

朝電車で図書館に行きます。、昼ご飯を食べ、夕方に帰ります。
最初は時間を短く、だんだん長くしていきます。
最初は雑誌をめくるだけ、だんだん専門の本を読んでみます。
疲れたら無理をしないで、休みます。
視聴覚室でCDやDVDを視聴できる施設も多くなってきましたので、
使ってみましょう。

体調に合わせて、薬を微調整します。

上野の東京文化会館ではクラシック関係のLP、CD、DVDが視聴できます。
気晴らしに絵も見られるし、博物館で仏像も見られます。
喫茶店も沢山ありますから、上野もリハビリにはいい場所だと思います。

マンガ喫茶がいいという人もいます。お好きなところへどうぞ。

4-復職設定 復職プログラムの設定

会社の制度によって異なりますが、
上司、人事、産業医、産業保健婦など、関係者が復職審査会を持ち、
復帰のプログラムを決定します。

4-1 時間
隔日勤務、4時間勤務、6時間勤務、8時間勤務、残業1時間許可、などを具体的に指示します。
それぞれを1-2週間程度続け、確認しながら、次の段階に進みます。
通常勤務に復するまで、全体で2~6ヶ月程度が多いようです。

4-2 仕事内容
これは各職場によってさまざまで、一概に決められないことなのですが、
軽作業、負担の軽いもの、重大な責任のないもの、慣れ親しんだ仕事、
チームよりもひとりの仕事、
から始めるのが望ましいとされています。
時間と同じく、仕事の負荷についても、1-2週間ごとに見直し、段階的に上げていきます。

4-3 部署異動
復職の原則は、もとの職場にもどることです。
異動してしまえば、新しい仕事に適応する困難があり、
さらに新しい人間関係を築く苦労もあるからです。
しかし場合によっては、部署の移動をお願いすることがあります。
この点を会社側と打ち合わせます。
病気になる前の、職場での評価、役割、職場でのストレスの程度などが考慮されます。

4-4 サポート体制
職場での相談役をきめて、ひとりで悩まないようにします。
「その仕事は、まだ無理です」と自分では言えない場合が多いので、
そんなときの相談役にもなってもらいます。
また、その人が主治医に状態を報告して、薬剤調整に役立てます。
多くは上司がこの役に当たりますが、
上司には何も言えないという人も多いもので、やはり誰かが間に入った方がいいようです。
産業保健婦や産業カウンセラーが一般には適任です。
上司の方の理解を深めるために、教育的接触をすることがあります。

4-5 なぜリハビリ勤務が必要か。
本人も会社も、できるなら、リハビリ勤務などせずに、
いきなり通常勤務したいわけです。
しかし、実際はそれが難しい。
精神症状が消失したということと、
職場で仕事ができるということとの間には、やはり「段差」があります。

復職判定を合理的に行うために、「復職準備度の評定」などが試みられていますが、
いまのところ、正確に評価することはできません。
「やってみないと分からない」のが実情です。

復職してうまくやっていけるかどうかは、
病気の回復程度の他に、
仕事のストレス、
対人関係のストレス、
本人の性格傾向、
家庭でのストレスなど、いろいろな要因があり、複雑すぎるため、
単純に評価することはできません。

職場での実際のストレスについては、
主治医や産業医が評価することは難しいのが現状です。

こうした事情で、「リハビリ勤務」が行われています。
しかし、就業規則でどう扱われているか、会社として支援体制があるか、
リハビリ中の身分、報酬などの問題、
さらには労働災害が起こったときの扱いなど、問題が指摘されています。

5-復職前期
復職プログラムに従い、服薬したままで、仕事を始めます。
まず最初の目標は、通勤に慣れること、職場で時間を過ごす感覚を回復することです。
ここは思ったよりも「段差」を感じる部分です。

疲れたら無理をしない、睡眠、食欲を維持する。
最大疲労を100として、日々の疲労を60以内程度に維持したいものです。
自分の疲労度を客観的に評価する習慣をつけることは今後役に立ちます。
ストレスチェックや疲労度チェックがいろいろとありますから、活用しましょう。

周囲の人も、疲労度60以内くらいをめどに、見守ってください。

この時期の休日は、気晴らしはほどほどにして、むしろ休息を中心にしましょう。

6-復職後期
復職プログラムに従い、次第に通常勤務に近付けていきます。
早く、よりも、慎重に確実に、を目標にします。

仕事の負荷を増やすとともに、家庭生活での活動も拡大しましょう。

完全に通常生活にもどったことを確認してから、
徐々に薬剤を減量します。

自分の場合、再発予防に大切なのは何か、
また、病気の始まりにはどんなことが起こるのか、
知っておけば、今後の役に立ちます。

全体を通じて、症状には波があることが多いものです。
三寒四温ともいいます。
一時的な悪化があったとしても、
焦らないことが大切です。だんだんよくなります。

また、世の中にはいろいろな考えの人がいます。
そうしたことは、自分の体調が悪いときには、ことさらに、つらく感じられるものです。
しかしそこは一緒にこらえましょう。
あなたはひとりではありません。
たくさんの理解者がいます。