“ 生きるということ 生きるということ 今生きているということ すべての美しいものに出会うということ そして かくされた悪を注意深くこばむこと 一人でいる 一人でいる、 孤独だと自分で思い込んでいても、 周りを見渡せば必ず他の人がいる。 誰かが育ててくれた食物を口にし、 誰かがデザインした服を着用し、 誰かが切ってくれた木の家に住んでいる。 だから人は一人じゃない。 必ず誰かに支えられているから、 今生きている。 生まれたくって生まれてきたんじゃない 「生まれたくって生ま

生きるということ
生きるということ
今生きているということ
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
一人でいる
一人でいる、
孤独だと自分で思い込んでいても、
周りを見渡せば必ず他の人がいる。
誰かが育ててくれた食物を口にし、
誰かがデザインした服を着用し、
誰かが切ってくれた木の家に住んでいる。
だから人は一人じゃない。
必ず誰かに支えられているから、
今生きている。
生まれたくって生まれてきたんじゃない
「生まれたくって生まれてきたんじゃない!」
そう親に何度も怒鳴りつけていた青年が、
ある日、父親になる。
ああ、僕の子供!僕の子供!!
生まれた!
感謝の気持ちで胸が一杯だ。
健やかに生きてくれよと、
願わぬ親がいるだろうか。
それは
それは
ありふれた名前に込められた
親の特別な想い
わが家は
わが家は
絆創膏を貼って
「おっぱい痛い痛いなの」
で、さよならでした。
あの日の瞳を切なく思い出すこと
「明日は治る?」
と、おっぱいを優しく撫でた小さな手を
懐かしく思い出すこと
谷川俊太郎