にきびとレチノイド アダパレン

“青春のシンボル”などと考えられがちなニキビ。これが「尋常性ざ瘡」という立派な疾患であることは、もちろん先生方ご承知の通りです。しかし、この「尋常性ざ瘡」2008年以降治療法が大きく変化したことは、あまり注目されていないのではないでしょうか。10月25日(火)、メディアセミナー「“青春のハードル”中高生のニキビの悩みを救え!皮膚科医の取り組み~中高生と母親 約2,000名の意識調査を踏まえて~」に参加し、最新のニキビ事情を探ってきました。
まずガルデルマと塩野義製薬の2社より、ニキビのある中高生・そうした子どもをもつ母親約2,000名の意識調査について発表されました。ここで明らかになったのは、親子間の認識の違いの大きさ。ニキビをネタにあだ名をつけられる、からかわれるなどの嫌な経験をしたことのある子どもは7人に1人。加えて、「恥ずかしい」「自分に自信がもてない」などの悩みを抱える中高生は、母親の想像の約2倍。しかし「特に心配していない」と回答した母親は全体の半数以上にのぼりました。
次に、日本臨床皮膚科医会 東京支部代表理事で岡村皮フ科医院院長の岡村理栄子先生より「中高生のニキビ治療の課題と皮膚科医の取り組み」と題して講演が行われました。学校保健委員会医院も務める岡村先生からは、子どもたちを取り巻く時代の流れについて紹介されました。小中学生のメイク、高校生のまつ毛パーマが珍しくない昨今、もはや皮膚科医も自分の経験で現代の子どもたちを理解することは難しい、と先生。
ニキビの上からファンデーションを厚塗りしてしまう子ども、「CMで見たニキビ用化粧品を使ったのに良くならない」とすっかり悪化してから病院に来る子ども、問診中に医師の顔色をうかがって回答を変える子ども……ニキビに悩む中高生と病院治療の距離はまだまだ遠く、皮膚科医は両者の間にある学校現場ともっと連携すべきであると問題提起されました。先生が医学監修された小冊子「ニキビについて知っていますか?」は、全国の公立小中高校800校に10万冊を配布(10/21時点)。保健指導を担う先生からは、正しい知識を指導しやすいと好評の声が多く寄せられているとのこと。
続いて日本臨床皮膚科医会 常任理事で虎の門病院皮膚科の林伸和先生より、「ニキビ治療のメリットとは~心理的QOLへの影響を中心に~」と題して講演が行われました。講演内では、これらの悩みの深さはニキビの数、重症度とは必ずしも比例するものではないことが“Skindex-16”という評価尺度を用いて示されました。これは皮膚疾患に特異的なQOLの評価尺度であり、症状・感情・機能の3つのスケールを評価できるもの。
Skindex-16によると、QOLが最も障害されている状態を100とした場合に、ニキビ患者の感情スケールは80。これはアトピー患者を上回る高い数値です。また、注目すべきはニキビの重症度と感情面でのQOLの関係。顔中に赤ニキビがある重症患者もほんの数個の患者もスケール上は大差なく、気持ちの上での障害は非常に大きいことがわかりました。これに関連して、今回実施した約2,000名の意識調査の中で先生が注目されたのは、ニキビがあることで「引きこもりがちになる」5.3%、「新しい友人ができない」1.8%といった、人とのコミュニケーションから遠ざかっている子どもの事情について。実際のところ平日の昼間に先生のもとを訪れる患者は少なくなく、そうした子どもは学校に行けていないことが多いのだそう。こうなると「たかがニキビ、されどニキビ」というのもうなずけます。
さて2008年にニキビ治療のガイドラインができ、外用レチノイド(アダパレン)が推奨されたことで治療法が大幅に変わりました。皮膚科以外でこの件をご存知の先生は多くないかもしれません。従来は放っておくしかなかった面ぽう(ニキビの前段階)状態の治療から、炎症軽快後の維持療法まで対応できる外用レチノイドが登場したことで、母親たちが学生だったころの常識「きちんと洗顔」「規則正しい生活」以上の積極的な治療ができるようになったのです。
翻って冒頭の意識調査。病院での治療に対する認識について尋ねると、なんと中高生の半数が「お金がかかるので親に言い出しにくい」と回答。市販のニキビ用化粧品と比較すれば保険適用の処方薬のほうが負担が軽いことは、親も含めて知られていない事実です。一度瘢痕になってしまうと有効な治療が難しいニキビ、軽症のうちから治療してしまうためには、正しい知識や家族の後押しが不可欠。意外に根深い子どもの悩みと最新のニキビ治療、両者の距離が早く縮まることを願わずにはいられないセミナーでした。
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皮膚科の先生の間では、フランスやアメリカ、またニキビの世界共通の治療ガイドライン(指針)といったものが作成されています。たかがニキビなんてと思うかもしれませんが、世界中でこんなに治療についての取り組みが行われているなんて驚きですね。日本でも2008年にニキビの治療ガイドラインが出来ました。これらのガイドラインでは、ニキビを重症度別にわけて治療方針を立てていること、また、外用レチノイド、抗菌薬といったお薬が推奨されています。日本でも外用レチノイドが処方されるようになったので、Q&Aを記載しました。ぜひご覧ください。
◎ニキビとその周辺の肌に薬を塗ります。◎ニキビの前段階である微小面ぽうから白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビまで治療することができます。◎抗菌薬の使用量を減らし、耐性菌の発生を抑えることが期待できます。◎2008年から日本でも保険が適用される治療のひとつとして使われています。他の保険診療と同じ割合の自己負担となります。
外用レチノイドは日本のどの医療機関でも受けることが可能なのでしょうか? すべての医療機関で扱っているとは限りません。 このホームページの病医院検索で紹介している皮膚科では外用レチノイドによる治療を行っています。※ニキビの状態により医師が判断しますので、すべての患者さんに対して外用レチノイドが処方されるわけではありません。また、すでにこの薬剤に過敏症をお持ちの方、妊娠中の方は使用できません。 外用レチノイドだけでニキビは治りますか? 外用レチノイドは目に見えない段階の微小面ぽうから炎症を起こしたニキビまで幅広く使用されますが、患者さんのニキビの状態や体質などに応じて、抗菌薬(飲み薬、塗り薬)やその他の治療が併用されます。 副作用はありますか? 国内で2008年から処方されている薬剤の場合、皮膚の乾燥、ピリピリとした不快感、皮がポロポロむけたり、赤み、かゆみなどが生じたりすることがありますが、軽度で一過性の症状です。

◎経口と外用のタイプがあり、主にアクネ菌に対する作用があります。 ◎赤ニキビに治療されることが多いお薬です。ニキビの微小面ぽうや白ニキビといった初期の段階のニキビには効果がありません。◎耐性菌の発生があるため、外用レチノイドと一緒に用いられることもあります。
ーーーーーーーーーーーーーーー2.レチノイドの外用剤本邦で外用剤として認可されているレチノイドはレチノール(医薬品、化粧品)および酢酸レチノールretinyl acetate、パルミチン酸レチノールretinyl palmitateなどのレチニールエステル(化粧品)であるが、これらの薬剤では副作用はみられないが、薬理作用が小さい(トレチノインの100分の1程度)。海外を中心に現在までに認可された、もしくは開発・治験中のレチノイド製剤(内服を含む)を表1に示す。レチノイドは脂溶性であり、オイル、ワセリンなどの基剤のままでは皮膚への浸透が極めて悪い特徴がある。また、トレチノインやオールトランスレチノールなどは光、熱による薬剤安定性が悪い。そのため薬剤の粒子自体か、基剤などに工夫する必要がある。通常レチノール油と呼ばれるものはレチニールエステルをオイルに溶かしたもので安定しているが、皮膚への浸透、成分の薬理作用ともに極めて小さい。確立されている合成レチノイドはすべて薬剤安定性は高い。 我々はトレチノインを水性ゲル基剤(0.1-0.4%)で使用しているが(表2)、親水軟膏やクリーム基剤と比較すると数倍、ワセリンとは10倍以上の皮膚浸透性の違いがある。安定性は悪いため、密封、冷蔵しても月に10%くらいのトレチノインが変性するため、毎月新しく調合している。同様の基剤でオールトランスレチノールやレチニールも濃度を数十倍に上げればトレチノインと同程度の臨床上の有効性を示したが、皮膚炎などの副作用もやはり同程度に見られることがわかった2)。
4.トレチノインによるしみ治療の原理 トレチノインは表皮内のメラニンの排出を促す作用があり、それは①表皮角化細胞を増殖させること、および②表皮ターンオーバーを早めること、によると思われる。メラノサイトに対してのチロジーナーゼ活性抑制、細胞毒性、メラニン産生抑制などの直接的効果は実験的には認められない4)。 トレチノインによる表皮の肥厚はin vivoにおいて普遍的に見られるがその作用機序は長い間不明であった1)。表皮角化細胞の単層培養ではレチノイドの影響はばらつきが多く、一方、皮膚の器官培養や表皮角化細胞と線維芽細胞のみの3次元培養では安定した効果が確認されたが、その仲介物質、メカニズムに関しては不明であった。1999年トランスジェニックマウスを使った研究報告7)がきっかけとなり、レチノイドはsuprabasal keratinocyteからHB-EGFmRNAおよび蛋白の発現を誘導することがわかった(basal keratinocyteからは非常に少ない)。HB-EGFmRNAのプロモーター部位にはレチノイド受容体の認識配列はないため、さらに仲介するメカニズムが存在する可能性もある。実際、ヒト表皮角化細胞でも分化誘導をかけるとレチノイドによりHB-EGFmRNAの発現が亢進し、このHB-EGFmRNA誘導作用は受容体選択性の異なるレチノイドの種類により大きく異なっていたが8)、レチノイド受容体へテロ二量体群の中でもRARγ-RXRαが仲介していることが明らかにされた9)。レチノールやレチナールによっても高濃度であれば実験的にHB-EGFmRNAが誘導されること8)、また臨床的にもメラニン排出効果があること、が明らかとなったが、皮膚炎などの副作用も同程度に現れることがわかり2)、現在までのところ効果を維持したまま副作用を減らす有効な解決策はない。 トレチノインの外用により組織学的には2週間程度の短期間で、表皮の肥厚、劇的な表皮メラニンの減少が認められる(図3)。しかし、2ヶ月程度の長期間の治療でも真皮メラニンの減少は見られない10)。
6.治療法と治療適応 メラニンの少ない白人では紫外線による光老化治療のメインターゲットは小じわ、毛細血管拡張などの真皮性の変化、および皮膚の癌化である。メラニンの多い東洋人の場合には美容的には老人性色素斑などの色素沈着の愁訴が最も多く、白人の場合とは異なっている。したがって、欧米ではトレチノイン外用剤は海外で若返り目的で使用する場合には、広範囲にマイルドな投与が行われ、ハイドロキノン(HQ)を色素沈着治療を目的に併用する場合には、色素沈着の部分にのみHQが使用されることが多い。ところが色素沈着を目的とする場合には、トレチノインの表皮メラニン排出作用を引き出すために投与量を多くする必要がある。我々は、副作用である皮膚炎を誘発するため色素沈着の部分にのみ強い治療を行い、HQは治療に伴いうる炎症後色素沈着を予防するために顔全体など広範囲に使用する治療法を提唱し、以前には認められなかった大きな漂白効果を実現している11-13)。基本的治療プロトコールを図4に示す。前半は漂白期間(bleaching phase)で、後半は皮膚炎症状を炎症後色素沈着を引き起こさないように冷ましていく治癒期間(healing phase)である。 以上のように、①小じわ、にきびなど対象としたマイルドな投与、②表皮メラニンの排出(しみの治療)を目的としたアグレッシブな治療、があり、前者は副作用が小さいため広範囲な治療が可能であり、後者は、皮膚炎を誘発するので、および色素沈着の部分のみを漂白するために、局所的な治療が行われる。トレチノインによる漂白治療の治療適応は、一言で言えば”角質肥厚のない表皮内メラニン沈着”である。特にレーザー適応のない①肝斑、②炎症後色素沈着、に対しては有効性も高く、第一選択と言える。日光性色素斑(老人性色素斑)の場合には角質の肥厚がある場合があり、その場合にはQスイッチレーザーを優先し、その後の炎症後色素沈着にトレチノインを使用する。雀卵斑、扁平母斑は再発しやすいが、顔面であれば有効性は高い。漂白治療後はHQ単独の使用で良好な状態を維持できる。ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)や種々の黒皮症など、表皮と真皮双方にメラニンが存在する疾患の場合には、始めにトレチノイン治療を行って表皮メラニンのみを排出することにより、その後のレーザー治療の効率が上がるとともに、レーザー治療による炎症後色素沈着が起こり難くなる(表皮内メラニンの減少のため)10)。炎症後色素沈着の効果的治療法を持つことの臨床的意義は大きく、東洋人に対してこれまで炎症後色素沈着のためにはばかれていた、よりアグレッシブなレーザー治療やresurfacing治療が容易に行えるようになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーにきびの治療【レチノイド】
■レチノイドレチノイドはビタミンAに由来し、肌に直接塗るローションやクリームという形のにきび治療薬です。部分治療用のレチノイドは詰まった毛穴を開くことによって黒にきびと白にきびを治療するのに効果的です。また、経口薬のレチノイドは、他の治療では対処できないほどひどい症状のにきびを治療することに処方されます。経口のレチノイド薬は、毛穴を開くことによって、皮膚の上層部をはがす作用があります。塗り薬にしろ、経口薬にしろレチノイドは、脂性の皮膚の原因となる物質や脂そのものが、あまり体内で生産されないような効用があるのです。
他の多くの効き目の強い処方薬と同様に、経口薬のレチノイドには、いくつかの重大な副作用があります。それは例えば、肝機能障害や、うつ病といったものです。そこで、レチノイド治療をしている患者さんにとっては、治療が悪影響を及ぼしていないかどうかを確認するために、定期的な診断を受けることが大切なのです。
また、レチノイドは先天性欠損症の原因ともなりますので、もし妊娠しているか、妊娠が疑われる場合には、医者にレチノイドの使用について十分に説明を受ける必要があります。
■経口避妊薬経口避妊薬は、女性にとっては、時に、にきび治療に役立つ薬です。この薬は、体内でホルモン濃度を変えてテストストロンが原因でできるにきびを減らすことに効果があるのです。

2015-02-24 01:30