徒然草第137段:花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。

徒然草第137段:花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行衛知らぬも、なほ、あはれに情深し。咲きぬべきほどの梢、散り萎れたる庭などこそ、見所多けれ。歌の詞書にも、『花見にまかれりけ … Read more 徒然草第137段:花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。


徒然草第143段:人の終焉の有様のいみじかりし事など、人の語るを聞くに、ただ、静かにして乱れずと言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、言ひし言葉も振舞も、己れが好む方に誉めなすこそ、その人の日来の本意にもあらずやと覚ゆれ。 この大事は、権化の人も定むべからず。博学の士も測るべからず。己れ違ふ所なくは、人の見聞くにはよるべからず。 ーーーーー 人の臨終の時の素晴らしかった様子などを人から聞くと、ただ静かに安らかに亡くなったとでも言ってくれれば趣き深く感じるのに、愚かな人は、

徒然草第143段:人の終焉の有様のいみじかりし事など、人の語るを聞くに、ただ、静かにして乱れずと言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、言ひし言葉も振舞も、己れが好む方に誉めなすこそ、その人の … Read more 徒然草第143段:人の終焉の有様のいみじかりし事など、人の語るを聞くに、ただ、静かにして乱れずと言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、言ひし言葉も振舞も、己れが好む方に誉めなすこそ、その人の日来の本意にもあらずやと覚ゆれ。 この大事は、権化の人も定むべからず。博学の士も測るべからず。己れ違ふ所なくは、人の見聞くにはよるべからず。 ーーーーー 人の臨終の時の素晴らしかった様子などを人から聞くと、ただ静かに安らかに亡くなったとでも言ってくれれば趣き深く感じるのに、愚かな人は、


徒然草第144段:栂尾(とがのお)の上人、道を過ぎ給ひけるに、河にて馬洗ふ男、『あしあし』と言ひければ、上人立ち止りて、『あな尊や。宿執開発の人かな。阿字阿字と唱ふるぞや。如何なる人の御馬ぞ。余りに尊く覚ゆるは』と尋ね給ひければ、『府生殿の御馬に候ふ』と答へけり。『こはめでたき事かな。阿字本不生にこそあなれ。うれしき結縁をもしつるかな』とて、感涙を拭はれけるとぞ。 ーーーーー 栂尾の上人(明恵上人)が、道を歩いている時に、川で馬を洗っている男を見かけたが、男は『足、足』と言いながら、馬の足を上げさせようと

徒然草第144段:栂尾(とがのお)の上人、道を過ぎ給ひけるに、河にて馬洗ふ男、『あしあし』と言ひければ、上人立ち止りて、『あな尊や。宿執開発の人かな。阿字阿字と唱ふるぞや。如何なる人の御馬ぞ。余りに尊く覚ゆるは』と尋ね給 … Read more 徒然草第144段:栂尾(とがのお)の上人、道を過ぎ給ひけるに、河にて馬洗ふ男、『あしあし』と言ひければ、上人立ち止りて、『あな尊や。宿執開発の人かな。阿字阿字と唱ふるぞや。如何なる人の御馬ぞ。余りに尊く覚ゆるは』と尋ね給ひければ、『府生殿の御馬に候ふ』と答へけり。『こはめでたき事かな。阿字本不生にこそあなれ。うれしき結縁をもしつるかな』とて、感涙を拭はれけるとぞ。 ーーーーー 栂尾の上人(明恵上人)が、道を歩いている時に、川で馬を洗っている男を見かけたが、男は『足、足』と言いながら、馬の足を上げさせようと


徒然草第142段:心なしと見ゆる者も、よき一言はいふものなり。ある荒夷(あらえびす)の恐しげなるが、かたへにあひて、『御子はおはすや』と問ひしに、『一人も持ち侍らず』と答へしかば、『さては、もののあはれは知り給はじ。情なき御心にぞものし給ふらんと、いと恐し。子故にこそ、万のあはれは思ひ知らるれ』と言ひたりし、さもありぬべき事なり。恩愛の道ならでは、かかる者の心に、慈悲ありなんや。孝養の心なき者も、子持ちてこそ、親の志は思ひ知るなれ。 世を捨てたる人の、万にするすみなるが、なべて、ほだし多かる人の、万に

徒然草第142段:心なしと見ゆる者も、よき一言はいふものなり。ある荒夷(あらえびす)の恐しげなるが、かたへにあひて、『御子はおはすや』と問ひしに、『一人も持ち侍らず』と答へしかば、『さては、もののあはれは知り給はじ。情な … Read more 徒然草第142段:心なしと見ゆる者も、よき一言はいふものなり。ある荒夷(あらえびす)の恐しげなるが、かたへにあひて、『御子はおはすや』と問ひしに、『一人も持ち侍らず』と答へしかば、『さては、もののあはれは知り給はじ。情なき御心にぞものし給ふらんと、いと恐し。子故にこそ、万のあはれは思ひ知らるれ』と言ひたりし、さもありぬべき事なり。恩愛の道ならでは、かかる者の心に、慈悲ありなんや。孝養の心なき者も、子持ちてこそ、親の志は思ひ知るなれ。 世を捨てたる人の、万にするすみなるが、なべて、ほだし多かる人の、万に


第146段:明雲座主(めいうんざす)、相者にあひ給ひて、『己れ、もし兵杖の難やある』と尋ね給ひければ、相人、『まことに、その相おはします』と申す。『如何なる相ぞ』と尋ね給ひければ、『傷害の恐れおはしますまじき御身にて、仮にも、かく思し寄りて、尋ね給ふ、これ、既に、その危みの兆なり』と申しけり。 果して、矢に当たりて失せ給ひにけり。 ーーーーー 比叡山延暦寺の明雲座主が、人相見(易者)に会われてお尋ねになった。『もしや、私には戦死するような相はないだろうか?』と。人相見は『確かに、その相がおありですね』

第146段:明雲座主(めいうんざす)、相者にあひ給ひて、『己れ、もし兵杖の難やある』と尋ね給ひければ、相人、『まことに、その相おはします』と申す。『如何なる相ぞ』と尋ね給ひければ、『傷害の恐れおはしますまじき御身にて、仮 … Read more 第146段:明雲座主(めいうんざす)、相者にあひ給ひて、『己れ、もし兵杖の難やある』と尋ね給ひければ、相人、『まことに、その相おはします』と申す。『如何なる相ぞ』と尋ね給ひければ、『傷害の恐れおはしますまじき御身にて、仮にも、かく思し寄りて、尋ね給ふ、これ、既に、その危みの兆なり』と申しけり。 果して、矢に当たりて失せ給ひにけり。 ーーーーー 比叡山延暦寺の明雲座主が、人相見(易者)に会われてお尋ねになった。『もしや、私には戦死するような相はないだろうか?』と。人相見は『確かに、その相がおありですね』


“幼児期から診させてもらっている小学4年生の自閉症スペクトラムの女児Aちゃん。学校では時々トッピな行動をして周囲をハラハラさせることがあるが,基本は真面目でルールを厳格に守るタイプ。厳格すぎて周囲から浮いてしまうこともある。落ち着きはないが,勉強好きであまり問題行動もなかった。教師も上手に支援しているようであった。  あるとき担任教師から,暑いと授業中でもTシャツを脱ごうとする,何度注意してもわかってくれない,何か良い方法はないかと相談を受けクラスで面談した。  「どうしてTシャツ脱いじゃうの?」  「暑

“幼児期から診させてもらっている小学4年生の自閉症スペクトラムの女児Aちゃん。学校では時々トッピな行動をして周囲をハラハラさせることがあるが,基本は真面目でルールを厳格に守るタイプ。厳格すぎて周囲から浮いてしまうこともあ … Read more “幼児期から診させてもらっている小学4年生の自閉症スペクトラムの女児Aちゃん。学校では時々トッピな行動をして周囲をハラハラさせることがあるが,基本は真面目でルールを厳格に守るタイプ。厳格すぎて周囲から浮いてしまうこともある。落ち着きはないが,勉強好きであまり問題行動もなかった。教師も上手に支援しているようであった。  あるとき担任教師から,暑いと授業中でもTシャツを脱ごうとする,何度注意してもわかってくれない,何か良い方法はないかと相談を受けクラスで面談した。  「どうしてTシャツ脱いじゃうの?」  「暑


徒然草第151段:或人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行末もなし。老人の事をば、人もえ笑はず。衆に交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方、万のしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。世俗の事に携はりて生涯を暮すは、下愚の人なり。ゆかしく覚えん事は、学び訊くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずして止むべし。もとより、望むことなくして止まんは、第一の事なり。 ーーーーー ある人が言うには、50才になるまでに上手にならない芸などは捨てるべきということだ

徒然草第151段:或人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行末もなし。老人の事をば、人もえ笑はず。衆に交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方、万のしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、 … Read more 徒然草第151段:或人の云はく、年五十になるまで上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行末もなし。老人の事をば、人もえ笑はず。衆に交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方、万のしわざは止めて、暇あるこそ、めやすく、あらまほしけれ。世俗の事に携はりて生涯を暮すは、下愚の人なり。ゆかしく覚えん事は、学び訊くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずして止むべし。もとより、望むことなくして止まんは、第一の事なり。 ーーーーー ある人が言うには、50才になるまでに上手にならない芸などは捨てるべきということだ


徒然草第150段:能をつかんとする人、『よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ』と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。 未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて、毀り笑はるるにも恥ぢず、つれなく過ぎて嗜む人、天性、その骨なけれども、道になづまず、濫りにせずして、年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位に至り、徳たけ、人に許されて、双なき名を得る事なり。 天下のものの上手といへども、始めは、不堪(ふかん)の聞えもあ

徒然草第150段:能をつかんとする人、『よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ』と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。  未だ堅固かたほなる … Read more 徒然草第150段:能をつかんとする人、『よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ』と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。 未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて、毀り笑はるるにも恥ぢず、つれなく過ぎて嗜む人、天性、その骨なけれども、道になづまず、濫りにせずして、年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位に至り、徳たけ、人に許されて、双なき名を得る事なり。 天下のものの上手といへども、始めは、不堪(ふかん)の聞えもあ


例年の冬にはあんなにも加湿器に気を使い常に使用していたのに 今年の冬はほとんど使わなかった どうしてなのか自分でもよくわからない 単に暖房の補助手段としていただけで、 普通の暖房手段で暖まればそれで問題ないということなのかもしれない 乾燥を感じたことはあったけれども そのことがひどく辛いという程ではなかった

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徒然草第155段:世に従はん人は、先ず、機嫌を知るべし。序(ついで)悪しき事は、人の耳にも逆ひ、心にも違ひて、その事成らず。さようの折節を心得べきなり。但し、病を受け、子生み、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、序悪しとて止む事なし。生・住・異・滅の移り変る、実の大事は、猛き河の漲り流るるが如し。暫しも滞らず、直ちに行ひゆくものなり。されば、真俗につけて、必ず果し遂げんと思はん事は、機嫌を言ふべからず。とかくのもよひなく、足を踏み止むまじきなり。 春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春はやが

徒然草第155段:世に従はん人は、先ず、機嫌を知るべし。序(ついで)悪しき事は、人の耳にも逆ひ、心にも違ひて、その事成らず。さようの折節を心得べきなり。但し、病を受け、子生み、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、序悪しとて止む … Read more 徒然草第155段:世に従はん人は、先ず、機嫌を知るべし。序(ついで)悪しき事は、人の耳にも逆ひ、心にも違ひて、その事成らず。さようの折節を心得べきなり。但し、病を受け、子生み、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、序悪しとて止む事なし。生・住・異・滅の移り変る、実の大事は、猛き河の漲り流るるが如し。暫しも滞らず、直ちに行ひゆくものなり。されば、真俗につけて、必ず果し遂げんと思はん事は、機嫌を言ふべからず。とかくのもよひなく、足を踏み止むまじきなり。 春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春はやが