飛鳥川の淵瀬(ふちせ)常ならぬ世にしあれば、時移り、事去り、楽しび・悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人改まりぬ。桃李(とうり)もの言はねば、誰とともにか昔を語らん。まして、見ぬ古のやんごとなかりけん跡のみぞ、いとはかなき。 京極殿(きょうごくどの)・法成寺(ほうじょうじ)など見るこそ、志留まり、事変じにけるさまはあはれなれ。御堂殿の作り磨かせ給ひて、庄園多く寄せられ、我が御族(おおんぞく)のみ、御門の御後見(おおんうしろみ)、世の固めにて、行末までとおぼしおきし
徒然草25段.飛鳥川の淵瀬(ふちせ)常ならぬ世にしあれば、時移り、事去り、楽しび・悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人改まりぬ。桃李(とうり)もの言はねば、誰とともにか昔を語らん。ま … Read more 飛鳥川の淵瀬(ふちせ)常ならぬ世にしあれば、時移り、事去り、楽しび・悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人改まりぬ。桃李(とうり)もの言はねば、誰とともにか昔を語らん。まして、見ぬ古のやんごとなかりけん跡のみぞ、いとはかなき。 京極殿(きょうごくどの)・法成寺(ほうじょうじ)など見るこそ、志留まり、事変じにけるさまはあはれなれ。御堂殿の作り磨かせ給ひて、庄園多く寄せられ、我が御族(おおんぞく)のみ、御門の御後見(おおんうしろみ)、世の固めにて、行末までとおぼしおきし