徒然草第104段:荒れたる宿の、人目なきに、女の、憚る事ある比にて、つれづれと籠り居たるを、或人、とぶらひ給はんとて、夕月夜のおぼつかなきほどに、忍びて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、下衆女の、出でて、『いづくよりぞ』と言ふに、やがて案内せさせて、入り給ひぬ。心ぼそげなる有様、いかで過ぐすらんと、いと心ぐるし。あやしき板敷に暫し立ち給へるを、もてしづめたるけはひの、若やかなるして、『こなた』と言ふ人あれば、たてあけ所狭げなる遣戸(やりど)よりぞ入り給ひぬる。 内のさまは、いたくすさまじか
徒然草第104段:荒れたる宿の、人目なきに、女の、憚る事ある比にて、つれづれと籠り居たるを、或人、とぶらひ給はんとて、夕月夜のおぼつかなきほどに、忍びて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、下衆女の、出でて、『い … Read more 徒然草第104段:荒れたる宿の、人目なきに、女の、憚る事ある比にて、つれづれと籠り居たるを、或人、とぶらひ給はんとて、夕月夜のおぼつかなきほどに、忍びて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、下衆女の、出でて、『いづくよりぞ』と言ふに、やがて案内せさせて、入り給ひぬ。心ぼそげなる有様、いかで過ぐすらんと、いと心ぐるし。あやしき板敷に暫し立ち給へるを、もてしづめたるけはひの、若やかなるして、『こなた』と言ふ人あれば、たてあけ所狭げなる遣戸(やりど)よりぞ入り給ひぬる。 内のさまは、いたくすさまじか