“ 私は然し小林の鑑定書など全然信用してやしないのだ。西行や実朝の歌や徒然草が何物なのか。三流品だ。私はちつとも面白くない。私も一つ見本をださう。こ れはたゞ素朴きはまる詩にすぎないが、私は然し西行や実朝の歌、徒然草よりもはるかに好きだ。宮沢賢治の「眼にて言ふ」といふ遺稿だ。 だめでせう とまりませんな がぶがぶ湧いてゐるですからな ゆふべからねむらず 血も出つゞけなもんですから そこらは青くしんしんとして どうも間もなく死にさうです けれどもなんといい風でせう もう清明が近いので もみぢの嫩芽(わか

“ 私は然し小林の鑑定書など全然信用してやしないのだ。西行や実朝の歌や徒然草が何物なのか。三流品だ。私はちつとも面白くない。私も一つ見本をださう。こ れはたゞ素朴きはまる詩にすぎないが、私は然し西行や実朝の歌、徒然草より … Read more “ 私は然し小林の鑑定書など全然信用してやしないのだ。西行や実朝の歌や徒然草が何物なのか。三流品だ。私はちつとも面白くない。私も一つ見本をださう。こ れはたゞ素朴きはまる詩にすぎないが、私は然し西行や実朝の歌、徒然草よりもはるかに好きだ。宮沢賢治の「眼にて言ふ」といふ遺稿だ。 だめでせう とまりませんな がぶがぶ湧いてゐるですからな ゆふべからねむらず 血も出つゞけなもんですから そこらは青くしんしんとして どうも間もなく死にさうです けれどもなんといい風でせう もう清明が近いので もみぢの嫩芽(わか