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徒然草第242段:とこしなへに違順(いじゅん)に使はるる事は、ひとへに苦楽のためなり。楽と言ふは、好み愛する事なり。これを求むること、止む時なし。楽欲(がくよく)する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡(ぎょうせき)と才芸との誉なり。二つには色欲、三つには味ひ(あじわい)なり。万の願ひ、この三つには如かず。これ、顛倒(てんどう)の想より起りて、若干の煩ひあり。求めざらんには如かじ。 ーーーーー 永遠に終わりなく、順境(幸福)と逆境(不幸)とにこき使われることは、ただ一途に楽を求めて苦を逃れようとするた

徒然草第242段:とこしなへに違順(いじゅん)に使はるる事は、ひとへに苦楽のためなり。楽と言ふは、好み愛する事なり。これを求むること、止む時なし。楽欲(がくよく)する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡(ぎょうせき)と才芸との誉なり。二つ...
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いでや、この世に生まれては、願はしかるべき事多かんめれ。御門(みかど)の御位(おんくらい)は、いともかしこし。竹の園生(そのふ)の、末葉まで人間の種ならぬぞ、やんごとなき。一の人の御有様(おおんありさま)はさらなり、ただ人も、舎人(とねり)など賜はるきはは、ゆゆしと見ゆ。その子・うまごまでは、はふれにたれど、なほなまめかし。それより下つ方(しもつかた)は、ほどにつけつつ、時にあひ、したり顔なるも、みづからはいみじと思ふらめど、いとくちをし。 法師ばかりうらやましからぬものはあらじ。『人には木の端のやう

1段:いでや、この世に生まれては、願はしかるべき事多かんめれ。御門(みかど)の御位(おんくらい)は、いともかしこし。竹の園生(そのふ)の、末葉まで人間の種ならぬぞ、やんごとなき。一の人の御有様(おおんありさま)はさらなり、ただ人も、舎人(と...
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徒然草5段:不幸に憂(うれえ)に沈める人の、頭(かしら)おろしなどふつつかに思ひとりたるにはあらで、あるかなきかに、門(かど)さしこめて、待つこともなく明し(あかし)暮したる、さるかたにあらまほし。顕基(あきもと)中納言の言ひけん、配所(はいしょ)の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし。 ーーーーー 不幸で心配に沈んでいる人(出世の望みのない貴族)でも、剃髪して出家することを軽々しく決心したのではなくて、門を閉じて自邸の中にひきこもり、やることもなく日々を暮らしている。そういう人(世捨人・隠棲者)になりたい

徒然草5段:不幸に憂(うれえ)に沈める人の、頭(かしら)おろしなどふつつかに思ひとりたるにはあらで、あるかなきかに、門(かど)さしこめて、待つこともなく明し(あかし)暮したる、さるかたにあらまほし。顕基(あきもと)中納言の言ひけん、配所(は...
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徒然草3段:万(よろず)にいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉のさかづきの当(そこ)なき心地ぞすべき。露霜(つゆしも)にしほたれて、所定めずまどひ歩き、親の諌め、世の謗り(そしり)をつつむに心の暇(いとま)なく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるは、独り寝がちに、まどろむ夜なきこそをかしけれ。 さりとて、ひたすらにたはれたる方にはあらで、女にたやすからず思はれんこそ、あらまほしかるべきわざなれ。 ーーーーー すべてにおいて優れているのに、女を好まないという男は、どこか間が抜けていて、水晶(玉

徒然草3段:万(よろず)にいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉のさかづきの当(そこ)なき心地ぞすべき。露霜(つゆしも)にしほたれて、所定めずまどひ歩き、親の諌め、世の謗り(そしり)をつつむに心の暇(いとま)なく、あふさきるさ...
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徒然草8段:世の人の心惑はす事、色欲には如かず。人の心は愚かなるものかな。 匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣裳に薫物(たきもの)すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て、通を失ひけんは、まことに、手足・はだへなどのきよらに、肥え、あぶらづきたらんは、外(ほか)の色ならねば、さもあらんかし。 ーーーーー 人の心を迷わすもので、色欲(性欲)に勝るものはない。人の心とは愚かなものであるな。 女の匂いなどはそれは本人の匂いではなく、服

徒然草8段:世の人の心惑はす事、色欲には如かず。人の心は愚かなるものかな。 匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣裳に薫物(たきもの)すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て...
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徒然草7段:あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙(けぶり)立ち去らでのみ住み果つる習ひならば、いかにもののあはれもなからん。世は定めなきこそいみじけれ。 命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。つくづくと一年(ひととせ)を暮すほどだにも、こよなうのどけしや。飽かず、惜しと思はば、千年(ちとせ)を過す(すぐす)とも、一夜の夢の心地こそせめ。住み果てぬ世にみにくき姿を持ち得て、何かはせん。命長ければ辱(はじ)多し。長くとも、四十(よそじ)に足らぬほ

徒然草7段:あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙(けぶり)立ち去らでのみ住み果つる習ひならば、いかにもののあはれもなからん。世は定めなきこそいみじけれ。 命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を知らぬも...
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徒然草6段.わが身のやんごとなからんにも、まして、数ならざらんにも、子といふものなくてありなん。前中書王(さきのちゅうしょおう)・九条太政大臣・花園左大臣、みな、族(ぞう)絶えん事を願ひ給へり。 染殿大臣(そめどののおとど)も、『子孫おはせぬぞよく侍る(はんべる)。末のおくれ給へるは、わろき事なり』とぞ、世継(よつぎ)の翁(おきな)の物語には言へる。聖徳太子の、御墓(みはか)をかねて築かせ給ひける時も、『ここを切れ。かしこを断て。子孫あらせじと思ふなり』と侍りけるとかや。 ーーーーー 自分が高貴な身分

徒然草6段.わが身のやんごとなからんにも、まして、数ならざらんにも、子といふものなくてありなん。前中書王(さきのちゅうしょおう)・九条太政大臣・花園左大臣、みな、族(ぞう)絶えん事を願ひ給へり。 染殿大臣(そめどののおとど)も、『子孫おはせ...
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9段.女は、髪のめでたからんこそ、人の目立つべかんめれ、人のほど・心ばへなどは、もの言ひたるけはひにこそ、物越しにも知らるれ。 ことにふれて、うちあるさまにも人の心を惑はし、すべて、女の、うちとけたる寝(い)もねず、身を惜しとも思ひたらず、堪ふべくもあらぬわざにもよく堪へしのぶは、ただ、色を思ふがゆゑなり。 まことに、愛著(あいぢゃく)の道、その根深く、源遠し。六塵(ろくじん)の楽欲(ごうよく)多しといへども、みな厭離(おんり)しつべし。その中に、ただ、かの惑ひのひとつ止めがたきのみぞ、老いたるも

徒然草9段.女は、髪のめでたからんこそ、人の目立つべかんめれ、人のほど・心ばへなどは、もの言ひたるけはひにこそ、物越しにも知らるれ。 ことにふれて、うちあるさまにも人の心を惑はし、すべて、女の、うちとけたる寝(い)もねず、身を惜しとも思ひた...
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木の葉に埋もるる懸樋(かけい)の雫ならでは、つゆおとなふものなし。 木の葉に埋もれる懸け樋の雫以外には、まったく音を立てるものがない。 ーーー このあたりはやはり名文である。

木の葉に埋もるる懸樋(かけい)の雫ならでは、つゆおとなふものなし。木の葉に埋もれる懸け樋の雫以外には、まったく音を立てるものがない。ーーーこのあたりはやはり名文である。
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徒然草12段.同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしき事も、世のはかなき事も、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向ひゐたらんは、ただひとりある心地やせん。 たがひに言はんほどの事をば、「げに」と聞くかひあるものから、いささか違ふ所もあらん人こそ、「我はさやは思ふ」など争ひ憎み、「さるから、さぞ」ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少し、かこつ方も我と等しからざらん人は、大方のよしなし事言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかに隔た

徒然草12段.同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしき事も、世のはかなき事も、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向ひゐたらんは、ただひとりある心地やせん。 たがひに言はんほどの事をば、「げに」...