親切な記事があったので採録
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DSM-IVでは自閉性障害(自閉症)・アスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の語が扱われていましたが、それらに対応するものはDSM-5では自閉症スペクトラム障害と社会(実用)コミュニケーション障害の2つです。
大まかに言うのであれば、コミュニケーションの障害だけがあるものが社会(実用)コミュニケーション障害であり、コミュニケーション障害と常同性を併せ持つのが自閉症スペクトラム障害です。
自閉症スペクトラム障害の特定用語で、言語障害の有無を扱い、言語障害と伴うものがDSM-IVにおける自閉性障害、言語障害を伴わないものがDSM-IVにけるアスペルガー障害に相応するものと考えられます。
社会(実用)コミュニケーション障害(仮訳)
Social (Pragmatic) Communication Disorder
A.以下の全てで示される、言語的そして非言語的コミュニケーションの社会的な使用の持続的な困難:
1.挨拶、情報の共有といった、社会的な状況で適切な方法での、社会的目的のためのコミュニケーションの使用の欠陥。
2.校庭と教室では話し方を変えたり大人相手と子供相手で話し方を変えたり堅苦しすぎる言葉の使用を避けたりするといった、状況や聞き手の要求に合わせて、コミュニケーションを変える能力の欠陥。
3.順番に話したり相手が理解できていないところは繰り返し話したり言語的または非言語的なサインで相互作用を調節する方法を知っていたりするといった会話や語りの上でのルールに従うことの困難。
4.はっきりと言われていないこと(例、ほのめかし)、そして、論理的では無いまたは曖昧な言葉(例、熟語、ユーモア、比喩、文脈の理解によって変わる複数の意味を持つもの)の理解の困難。
B.有効なコミュニケーション、社会参加、社会的な関係、学術的な成果、または仕事のパフォーマンスに、その欠陥が単体で、または併せて機能的な限界が生じる。
C.発達の早期に症状が必ず出現している(しかし、社会的な要求が、制限された許容量を超えるまで完全には現れないかもしれない)。
D.その症状は他の医学的または神経学的状態、あるいは言葉の構築や文法の領域での低機能によるものではなく、自閉症スペクトラム障害、知的な障害(知的発達障害intellectual developmental disorder)、包括的発達遅滞global developmental delay、または他の精神障害でよりよく説明できない。
自閉症スペクトラム障害 Autism Spectrum Disorder
A.現在または過去から以下のように示される、複数の状況にわたる社会的コミュニケーションと社会的相互の持続的な欠陥(例は説明上の実例であって、それら以外もありうる):
1.例えば、通常の会話のやりとりにおける失敗と社会的な接近における異常、関心や感情や情動の共有の少なさ、社会的交流の開始や応答の失敗といった、社会的・感情的相互作用の欠陥。
2.例えば、言語的そして非言語的コミュニケーションにおける調和の取れなさ、アイコンタクトやボディランゲージの異常やジェスチャーの使用や理解の欠陥、表情の表出や非言語コミュニケーションの完全な欠陥といった、社会的交流に用いられる非言語のコミュニケーション行為の欠陥。
3.例えば、様々な社会的な文脈に適切な行動に適合させることの困難、創造的な遊びの共有や友人をつくることの困難、仲間への関心の欠陥といった、関係作り、その維持、そしてその理解の欠陥。
現在の重症度を特定せよ:
重症度は、社会的コミュニケーションの障害と制限された反復される行動の様式に基づく。
B.現在または過去から、少なくとも以下の2つで示される、制限された反復される行動や興味や活動の様式(例は説明上の実例であって、それら以外もありうる):
1.常同的または反復的な運動性の行動、物体の使用、または発言(例、単純な常同運動、玩具を並べたり弾いたりすること、反響言語、特有の言い回し)。
2.同じであることの強要、ルーチンへの頑固な固執、または、言語語的または非言語的な行動の儀式化された様式(例、小さな変化に対する過度な悩み、変化にたする困難、頑なな思考様式、儀式的な挨拶、毎日必ず同じ食べ物を食べたり同じ道を選んだりすること)。
3.強さ、または対象において異常な、強く制限され固執した興味(例、普通ではない物体への強い愛着またはとらわれ、過度に枠にはまった、または固執した関心)。
4.感覚入力の過剰または過少、または環境に対する感覚への普通ではない関心(例、熱や痛みに対する明らかな無関心、特定の音や感触に対する嫌な反応、物体を過度に嗅いだり触ったりすること、光や動きに対して視覚的に魅惑されること)。
現在の重症度を特定せよ:
重症度は、社会的コミュニケーションの障害と制限された反復される行動の様式に基づく。
C.発達の早期に症状が必ず出現している(しかし、社会的な要求が、制限された許容量を超えるまで完全には現れないかもしれず、後に人生の中で学んだ方法によって隠されているかもしれない)。
D.症状は、社会的・職業的・他の現在の機能の重要な領域における臨床的に著しい障害を引き起こしている。
E.これらの障害が、知的な障害(知的発達障害)または広範な発達遅延でよりよく説明されない。知的な障害と自閉症スペクトラム障害はしばしば併発し、自閉症スペクトラム障害と知的障害の併存を診断するには、社会コミュニケーションが全体の発達水準から期待されるよりも低い必要がある。
注釈:DSM-IVで十分な確認のもとで自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広範性発達障害と診断された人は自閉症スペクトラム障害と診断されるべきである。社会コミュニケーションの著明な欠陥がありながらも,
その症状が自閉症スペクトラム障害の基準に合致しない人はSocial (Pragmatic) Communication Disorder(実用的な)社会コミュニケーション障害と診断されるべきである。
該当すれば特定せよ:
知的障害を伴うもの、または伴わないもの with or without accompanying intellectual impairment
言語障害を伴うもの、または伴わないもの with or without accompanying language impairment
既知の医学的または遺伝的状態、あるいは環境的要因によるもの associated with a known medical or genetic condition or environmental factor
他の神経発達的、精神的、または行動上の障害によるもの associated with another neurodevelopmental, mental or behavioral disorder
カタトニアを伴うもの with catatonia (他の精神障害に伴うカタトニアの基準を参照せよ)