2013/09/07(京都にて)
私の軽症内因性(?)うつ病論
笠原 嘉
まえおき
1. クリニックの精神医学は大学のそれと一寸違う?
・日本文化の同質性
・軽症中心、なおりやすい
・診断学より治療学優先
・健保・手帳・自立支援・生保等を使う平等主義医療
・薬物療法中心 ( 精神療法は従 )
・一人の医師が長く診ることの成果大きい
・接客性(?)あり
2. 多様な専門あり、私は終始「内因・心因障害」と「パーソナリティ障害」
3. うつ病を例に。薬物療法の進歩の恩恵大きい。エビリファイなど。しかし・・・・・
4. 「長く診る」とかなりの難治例もよくなる。
5. 薬物療法を補完する「小」精神療法は?
6. 病前性格論の再評価はどうだろう? 外来では診断にも治療にも役に立つ
結語
・ 神経科と精神科
・ 器質因・内因・心因
・ 生活史>無意識
・ 診察室を好きになろう!
以上
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小精神療法
(1)症状 ・ 疾病のむこうにいる 「人間」 に常に関心をもつ。
(2)彼 (女) が診察室で (言語的にも非言語的にも)自分を表現しやすいよう終始配慮する。
(3)基本的には非指示的 (ノンディレクティプ) 態度を持し、 彼 (女) の心境や 苦悩をそのまま受容する。 しかし陰気にならぬよう注意する。
(4)数回に一回くらいの割で、患者と協力して内的世界の 「整理ないし再構成」をする。その際、押しつけにならない範囲で治療者の人生観や人間観を伝える。必要に応じ日常生活での指示、説得、激励、医学的啓蒙も遠慮なく行う。
(5)感情転移現象にはつねに注意し、できるだけ温和な陽性転移の維持を目指す。
(6)深層心理への介入はできるだけ少なくする。外科医になぞらえいえば、メスによる切開は小さいほどよい。
(7)症状構成の陽性面の後ろにかくされている陰性面 (たとえば心的疲労)に留意し、その面での悪条件をできるだけ少なくする。
(8)たとえ心因性の病態にみえても、必要とあれば向精神薬の使用を躊躇しない。しかし長期にわたる投与はマンネリ化をまねく。その克服もまた小精神療法の課題であろう。
(9)決して短期の奏功を期待せず、変化に十分の時間を貸す。
(10)ともすれば世間の偏見にさらされる病人ならびに家族への少なくとも同情、もっといえば愛、さらにいえば心理的重圧に抗して生きる人間への「尊敬」をもつ。