”私が働いていたのは、日本の大手IT企業だった。同僚たちは9時の定時前に全員が出社し、着席していた。しかし、午前中はお茶を啜る(すする)か新聞を読むかして過ごし、時には、はっきりしたアジェンダもなく延々と続く会議が開催された。  午後は資料をパラパラめくったりして過ごした。しかし夕方5時ごろになると、書類キャビネを勢いよく閉める音や書類をガサガサさせる音、苛立った溜息などで、にわかにオフィスが賑わい始める。そろそろ6時というころには、残業の希望者が次々と部長の元へ行き、期日に間に合わせるには残業するしか

 "私が働いていたのは、日本の大手IT企業だった。同僚たちは9時の定時前に全員が出社し、着席していた。しかし、午前中はお茶を啜る(すする)か新聞を読むかして過ごし、時には、はっきりしたアジェンダもなく延々と続く会議が開催された。
 午後は資料をパラパラめくったりして過ごした。しかし夕方5時ごろになると、書類キャビネを勢いよく閉める音や書類をガサガサさせる音、苛立った溜息などで、にわかにオフィスが賑わい始める。そろそろ6時というころには、残業の希望者が次々と部長の元へ行き、期日に間に合わせるには残業するしかない旨を申し立てる。残業申請が承認されたら、自分たちの仕事の大変さについて2時間ほど文句を言い合い、それが終わったら帰宅する。
 私はなぜこの働き方で日本経済が成功へ導かれるのか理解できなかった。"