大金持ちの税逃れは許しません――。富裕層の中でも、より資産や所得がある人たちの投資活動の情報などを専門的に集め、脱税や税逃れを監視する「超富裕層プロジェクトチーム」が東京、大阪、名古屋の各国税局に10日、発足した。高度な節税策を利用した富裕層による国際的な税逃れが問題になる中、富裕層の実態を調べて税務調査のノウハウを蓄積し、課税に結びつける狙いがある。
「超富裕層」について、国税当局は税務調査に支障があるとして調査対象となる基準を明らかにしないが、例えば、国内外に数十億円規模の資産を持ち、積極的な投資活動をしている会社役員や投資家らが対象になるとみられる。
東京局では、税務調査の方針を決める課税総括課に専従の担当者7人を配置。所得、相続、法人税の経験豊富な調査官のほか、マルサで知られる査察官も加わった。大阪局は「富裕層対応本部」を設けて5人が担当、名古屋局も「対策班」を設置する。いずれも初めての試み。国税庁も支援チームをつくる。
プロジェクトチームは、富裕層による海外での資産運用が増えている現状を踏まえ、富裕層の中でも上位の人たちの投資活動や外国金融機関への送金状況などを分析し、税逃れがないか情報収集する。低税率の国に移住する人が増え、専門家による節税策も高度になっているため、その実態を把握し、効果的な税務調査を検討する。
海外の口座などを使った富裕層の租税回避行為は後を絶たず、国際的な対策を求める機運が強まっている。経済協力開発機構(OECD)は2月、加盟国間で外国人の口座情報を共有する仕組みをつくることで合意。こうした枠組みを活用できるように態勢を強化した。
アベノミクスによる株高で資産が急増した富裕層は少なくない。国税庁幹部は「富裕層の税逃れを見逃すと影響が大きく、税の不公平感も高まる。積極的に情報を集め、適正な課税に努めたい」としている。
国税庁によると、富裕層に対し2013年6月までの1年間で4120件の調査を実施し、総額101億円の所得税を追徴課税している。香港に住民票を移した東証1部上場企業の創業者に対し、日本が生活の本拠なのに海外子会社からの報酬を申告しなかったとして、約10億円の申告漏れを指摘した事例などがある。