“
この前電車乗ったら対面の座席に典型的なキモオタが座ってた
ダサいよれた服装で携帯ゲームに夢中の様子
皆思うことは一緒見たいで冷やかな視線と表情
JKやら大学生なんかは連れとヒソヒソ話してニヤニヤしたり
スーツのオッサンなんかもぅ、完全に眼で侮蔑を語ってた
学歴厨、国立に通ってた俺はそんな光景を見て同様にそいつを侮蔑してた
そしたらとある駅で、外国人の夫婦が乗車してきた
妻さんは妊婦で出産も近そうだった
辺りを見回す夫だが、生憎空席は無く、一瞬目が合った俺はしかし咄嗟に目を逸らしてしまった
そしたらそれと同時くらいのタイミングで、そのキモオタがすぐさま婦人に席を譲った
婦人は一旦は遠慮したが、そいつは自然な笑顔で婦人を席に促し、座らせてあげた
「そんなお構い無く」「いえいえお座り下さい」「ありがとう」「いえ、自分はもう直ぐ降りますから」
そんな感じの、ごくありふれたやり取りが交わされた
お互い英語だったけど
その後、夫婦はそいつと軽いトークを交わし、そいつは言ってた通り数駅先で降りていった
「お大事に、元気な赤ちゃんを」と告げて
二人は降りてくそいつに会釈をした
決して流暢な英語では無かったし、レベルも高校程度だった
けどそれがなんだ
あいつは誰より先に躊躇なくやるべきことをやった
決して自分の世界に入り込んでなんかいやしなかった
俺は自分を酷く惨めで恥ずかしく感じた
程度や感じ方に差は合ったろうが、同じだったんだろう
皆の表情も明らかに違っていた
”