国立感染症研究所は4月21日、東京都における2007~13年の梅毒の発生動向 を報告した。2013年の東京都での総報告数は417人(人口10万対3.2人)で、2010年から増加を続けており、2010年の報告数に対して、2011年は1.4倍、2012年は1.7倍、2013年は2.4倍となった。
東京都における2013年の総報告数について、同研究所は「過去5年平均+2SDの値(=322)を大きく超えており、アウトブレイクと捉えることができる」と説明。男女ともに報告数が多く、特に男性で顕著であると指摘した。
これまで、国内における梅毒の報告数は減少傾向にあったが、最近では男性と性交をする男性(men who have sex with men:MSM)を中心に感染が広がっている。今回の都内における報告でも、男性の同性間性的接触による感染が多く報告されており、MSMが報告数増加の主体と考えられている。
男性の同性間性的接触による感染が多い
2013年の報告数における男女比は7:1(男365人:女52人)で、人口10万対報告数は男性5.6人、女性0.8人。2010年と比較すると、男性では2.4倍、女性では2.9倍に増加していた。
年齢群別の人口10万対報告数を2007年と2013年で比較すると、男性では20~50代で増加しており、特に20~30代の増加が顕著であった。一方で女性では、20~24歳で増加が見られていた。
感染経路別(2013年)は、男性では346人(94.8%)が性的接触で、そのうち同性間性的接触は248人 (71.7%)、異性間性的接触は60人(17.3%)であった。男性の同性間性的接触の報告数は増加しており、2007年に対して2013年は11.3倍に増加していた。
女性は40人(76.9%)が性的接触で、そのうち異性間性的接触は33人(82.5%)。女性の異性間性的接触による感染は、2010年に対して2013年は3.7倍となっていた。
これらの結果を受け同研究所は、都市部でのMSMによる梅毒の流行に対し、「梅毒の動向の把握、流行の周知、検査案内、患者や接触者への介入など、公衆衛生として感染拡大予防の取り組みを行う必要がある。また、ハイリスク層、20代女性層への疫学調査を実施し、より詳細な実態を把握していかなければならない」と呼びかけている。
なお、この調査結果は全国統一のシステム「感染症発生動向調査システム(NESID)」により、都内の約1万2000の医療機関から保健所(31カ所)を経由して、報告されたもの。NESIDに登録された梅毒症例のうち、2007~2013年に都内で診断された症例を抽出し解析を行った(2013年3月3日現在)。人口当たりの報告数には人口動態統計による各年の東京都の推定人口を使用している。