睡眠を改善する「睡眠衛生12のポイント」  (1)睡眠時間には個人差。(高齢者は短い)  (2)眠る前にカフェインなど刺激物を避け、自分なりのリラックス法を行う。  (3)眠くなってから床に就く。(就床時刻にこだわり過ぎない)  (4)毎日同じ時刻に起床する。(早起きが早寝に通じる)  (5)朝のまぶしい光を浴び、規則正しく食事。  (6)午後~夕方の適度な運動習慣は熟睡をもたらす。  (7)昼寝をするなら15時までに20~30分の短時間がよい。  (8)眠りが浅いと感じたら、遅く寝て早く起きる。(長く

(健康のつくりかた)良い睡眠をとるには 気持ちのゆとりも大切
 寝つきがよくない、夜中に何度も目を覚ます。「よく眠れない」と悩む人は少なくない。不規則な生活や仕事のストレス。現代は「良い眠り」を妨げる要因がたくさんありそうだ。より良く眠って、健康に暮らすにはどうしたらいいのか。旭川医科大学精神医学講座の千葉茂教授(59)に聞いてみた。
 経済協力開発機構(OECD)が2009年に発表した18カ国の15歳以上の睡眠時間は、最短が韓国の469分、次が日本で470分だった。最長はフランスの530分、次いで米国518分など。
 日本睡眠学会の睡眠医療認定医で、同学会の理事も務める千葉教授によると、現代社会は睡眠不足に陥りやすい環境がそろっているという。
 海外出張で頻繁に日付変更線を飛び越える人はもとより、パソコンやスマートフォンでインターネットや「LINE(ライン)」に熱中したり、株価の動きを24時間追ったりと、睡眠を削る場面は増えている。
 その結果、睡眠不足症候群に陥る人も少なくない。運動機能や免疫機能が低下して風邪を引きやすくなり、注意力や意欲も低下、感情制御機能も落ちてキレやすくなる。記者自身にもいくつか思い当たる節がある。こうした兆候が現れたら要注意だ。
 睡眠不足が長く続くと、うつ病を発症したり、消化器に潰瘍(かいよう)などの障害が起きたりし、高血圧やメタボリック症候群など生活習慣病のリスクも高まる。
 人間には生活リズムをつくる「生物時計」があり、変化にある程度は順応するものの、「人間という生物の限界を超えると眠ってしまう」と千葉教授は話す。仕事中の強い眠気がそれで、勤務や就寝の時間帯が不規則な交代制勤務の広がりも気がかりだという。
 では、良い眠りを得るにはどうしたらいいのか――。千葉教授は学会が推奨する12のポイントを挙げた=表参照。
 まず、睡眠には個人差があることを理解する。毎日同じ時刻に起床。朝起きて光を浴びると覚醒を促進し、結果的に夜よく眠れるようになる。適度な運動も良い眠りをもたらす。
 就寝時刻にこだわり過ぎず、眠くなってから床に就けばよい。寝酒は要注意。アルコールは深いノンレム睡眠を減らし、中途覚醒を増やすからだ。日中に眠気を感じるときは短時間の昼寝も効果的だという。
 ただ、千葉教授は「睡眠は『揺らぎ』があっていい」と話す。決めた通りにと神経質になると、かえって逆効果。「毎日100点を期待するような生活をする必要はない。睡眠不足の後には良い睡眠があると思えばいい」。気持ちのゆとりが大事だという。
 「寝つきをよくする」をうたい文句にした市販薬も出回っているが、千葉教授は「あまりお勧めはできない」と話す。むしろ、まだ多くはないが、学会のホームページ(http://www.jssr.jp/)に掲載されている睡眠医療認定医や、かかりつけの医師などに相談することを勧めている。最近は生活リズムの改善に効果のある薬剤も出てきたといい、「睡眠の悩みを医師に話し、医師の処方の元に薬を服用してほしい」と話している。(泉賢司)
 ■睡眠を改善する「睡眠衛生12のポイント」
 (1)睡眠時間には個人差。(高齢者は短い)
 (2)眠る前にカフェインなど刺激物を避け、自分なりのリラックス法を行う。
 (3)眠くなってから床に就く。(就床時刻にこだわり過ぎない)
 (4)毎日同じ時刻に起床する。(早起きが早寝に通じる)
 (5)朝のまぶしい光を浴び、規則正しく食事。
 (6)午後~夕方の適度な運動習慣は熟睡をもたらす。
 (7)昼寝をするなら15時までに20~30分の短時間がよい。
 (8)眠りが浅いと感じたら、遅く寝て早く起きる。(長く寝床にいると熟眠感が減る)
 (9)睡眠中のいびき、無呼吸、足のむずむず感、びくつきに要注意。(医師に相談を)
(10)夜十分眠っているのに、日中強い眠気ある場合は要注意。(医師に相談を)
(11)寝酒は不眠をもたらす。(アルコールは深いノンレム睡眠を減らし、中途覚醒を増やす)
(12)安心できるよい睡眠薬がある。(医師の指示で正しく服用)
 <睡眠のサイクル> 睡眠にはサイクル(周期)があり、一つの睡眠周期は約90~120分。これを一晩に4~5サイクル繰り返す。1サイクルは深い眠りであるノンレム睡眠と、浅い眠りで脳が活動した状態のレム睡眠からなる。ノンレム睡眠は浅睡眠から深睡眠に進み、浅睡眠に戻ってからレム睡眠に移行するとされる。深睡眠は初めの2~3サイクルに集中して現れ、その後のサイクルでは浅睡眠の時間が長くなる。レム睡眠は朝方に向けて増加するという。