新聞記事からの引用
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「亡くなった知人が幽霊で出た」「先に逝った家族がお迎えに来た」――。医学的には幻覚と退けられがちだった「心霊現象」を、心のケアに生かすための研究が進む。こうした話に宗教者らが耳を傾け、不安を和らげる効果が期待されている。
東北大(仙台市)の高橋原准教授らのグループは7月、宮城県内の寺院や神社、教会など約1400の宗教施設にアンケートを配った。犠牲者の多い東日本大震災の被災地では、幽霊やお化けの目撃談が頻繁に聞かれる。僧侶や神職らに、どのくらい体験が寄せられ、どう対応しているかを調べるのが目的だった。
うわさ話でなく、「霊的」あるいは「不思議」な現象を体験した人に会った、と答えた宗教者は、回収した276人のうち69人だった。
家族や知り合いを亡くした人だけでなく、犠牲者の多かった場所で不思議な光景を見聞きしたケースも多い。高橋さんは「医者に行くと、眠れないなら薬を出しましょう、となることが多い。まずは話を聞き、安心感を与えるのは、宗教者の役割でしょう」と話す。
在宅のホスピスケアを進める医療法人爽秋会(宮城県名取市)は研究者と連携して2001年から、患者のあの世からの「お迎え体験」の調査を続ける。11年は、患者の家族575人に聞いた。他人に見えない存在や風景について患者が語るような経験があったか、という問いに、約4割が「経験した」と回答した。
調査に携わる相澤出さんは、「在宅だから表に出たが、病院ではなかなか口に出せないようだ。生と死を連続するものとして捉えることは、穏やかに死と向き合うきっかけになっている一面もあり、むげに否定するべきではない」と話す。
米国では病院などで心のケアを担う「チャプレン」という宗教者が認知されている。
無宗教の人が多いとされる日本でも、07年に日本スピリチュアルケア学会が設立された。理事の窪寺俊之・聖学院大教授は「日本人は先祖や自然など霊的な領域の意識を持っていて、医学では対応できない魂の問題がある」とみる。
ただ、宗教者が関わることに抵抗感を覚える人もいる。窪寺さんは「布教を目的にしてはならず、聞き役に徹する研修も必要だ」と言う。
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心の平安