不眠症とうつ病:因果関係は?
Insomnia and Depression: Chicken and Egg?
今回の前向き研究はそれぞれが原因になりうることを示している。
不眠症とうつ病には密接な関連が知られているが、どの程度因果関係があるのかについて確かなところは不明である。本論文の著者Sivertsenらは、ノルウェーで行われた住民健康調査(訳注:Nord-Trøndelag Health Study;HUNT)の11年隔たる2期間(1995~97年[第1期]、2006~08年[第2期])に参加者24,715例(追跡開始時の平均年齢:45歳)から得たデータを前方視的に解析した。
解析は以下2つの集団を対象に実施された:(1)第1期に臨床的うつ病を有していたが同期間に不眠症の併存はなかった参加者(2)第1期に不眠症を経験していたが同期間に臨床的うつ病の併存はなかった参加者。第1期にうつ病を有していた参加者のうち、第2期もうつ病を有していた参加者は、人口統計学的特性、身体症状、生活習慣要因、そして不安で補正しても、(第2期に)不眠症を発症するリスクが有意に高かった(補正オッズ比[AOR] 4.34)。第2期にうつ病が認められなくなっても(第2期に)不眠症を発症するリスクは依然として有意に高かった(AOR 1.72)。第1期、第2期ともに不眠症を有していた参加者は、第2期に臨床的うつ病を発症するリスクが有意に高かった(AOR 4.35)。
コメント
これらの結果は、不眠症とうつ病は相互に関連しており、それぞれがもう一方の発症リスクをかなり高い精度で予測できることを示唆している。うつ状態には不眠症を併発する場合が多いことが知られており、これまでの研究により、不眠症患者はうつ病の発症リスクが高いことが示されている。これらの双方的な関係の一部には、不眠症およびうつ病と併存する不安状態、その他の精神疾患や一般的な内科疾患の合併、あるいは物質関連要因が明らかに関与している。このような複雑な要因は存在するが—たとえそれらがなくても(まだ解明されていないなんらかの機序により)—原発性不眠症は臨床的うつ病の素因になると思われる。原発性不眠症があり臨床的にうつ病の徴候がみられる患者を診察した場合、不眠症の早期治療に成功すればうつ病の発症を予防できる可能性があることを、臨床医は認識しておく必要がある。
—Joel Yager, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry August 30, 2012