うつ病に対するω-3脂肪酸(の有効性)、再考:誌上で議論再燃 Omega-3 Fatty Acids for Depression, Revisited: The Jury Is Coming Back In 治療効果を得るにはエイコサペンタエン酸(EPA)の含有量が非常に重要であり、軽症うつ病にサプリメントが効く可能性は低い。 うつ病の治療を目的としたω-3脂肪酸の使用に関しては、複数の研究が作用機序および疫学的関連の点からその妥当性の高さを示しているものの、有効性を巡っていまだ議論が続いている。B

うつ病に対するω-3脂肪酸(の有効性)、再考:誌上で議論再燃
Omega-3 Fatty Acids for Depression, Revisited: The Jury Is Coming Back In
治療効果を得るにはエイコサペンタエン酸(EPA)の含有量が非常に重要であり、軽症うつ病にサプリメントが効く可能性は低い。
うつ病の治療を目的としたω-3脂肪酸の使用に関しては、複数の研究が作用機序および疫学的関連の点からその妥当性の高さを示しているものの、有効性を巡っていまだ議論が続いている。Blochらが今回報告したメタアナリシスの論文とそれに対する批判的な論評は、先行研究による1つの結果は再確認しているが、もう1つの研究の結果については否定しているようである。
今回のメタアナリシスでは、既報のメタアナリシス(JW Psychiatry Oct 17 2011)が採択した試験から3件を除外し、新たに別の大規模な試験を1件追加して13件で解析を行った。その結果、ω-3脂肪酸により中等症のうつ病は改善したが、軽症のうつ病を改善しなかったことから、ω-3脂肪酸にはうつ病の治療効果がない、と著者らは結論した(著者の1人は企業から助成を受けていた)。
本論文については、この領域にかかわっている2組の研究グループが論評とレターを掲載雑誌に寄せ、その中で本研究の問題点を批判し、1組はデータを再解析した結果も報告している。今回新たに追加された試験の参加者はメタアナリシスに含まれた患者全体の約30%を占め、解析結果がネガティブになった要因とみられている。彼らはこの試験を対象に含めるべきではなかったと主張し、その理由として、同試験の参加者は厳密な評価でうつ病と診断されていないこと、自記式のうつ病尺度のみが用いられたことをあげている。別の試験では、うつ症状スコアが高値(重度)の患者は除外されていた。両試験を含めた場合と除いた場合でそれぞれ再解析が行われた結果、使用された(ω-3脂肪酸製剤中の)エイコサペンタエン酸(EPA)含有量(高用量、低用量)で試験を層別化すると、ポジティブな効果が認められ、高用量のEPAは中等度の効果量で明らかな効果を示した。これらのコメントに対してBlochらは返信の中で、彼らも寄せられた批判のいくつかを踏まえてデータを再解析したと答えている。その結果、効果とEPA用量が関連する傾向が見つかったとし、今後の研究では用量の影響についてさらに詳しく検討することが重要である、と述べている。
コメント
最終的には、これらの一連の論文や記事は、EPAの用量が非常に重要であるという以前報告されたメタアナリシスの結論を確認したことになる。EPAの用量は当初使われた1日1~2 g(1日4 g以下)よりも高くする必要があるかもしれない。より重症のうつ病患者を対象としたLespéranceらによる試験(JW Psychiatry Oct 17 2011)の結果とは相反するが、EPAの効果を得るには疾患が大うつ病の基準を満たす必要があると思われる。しかしながら、重症うつ病患者における有効性について系統的な(統計解析手法による)検討はなされていない。
—Peter Roy-Byrne, MD
掲載: Journal Watch Psychiatry December 10, 2012