小児期のいじめは、たとえ長期的にみても、無害であるということはない Childhood Bullying Is Not Harmless, Even in the Long Run 今回の縦断的研究は、小児期のいじめ加害・被害体験を有する成人では複数の精神疾患でリスクが高いことを示している。 小児期のいじめが成人期の行動および情動に有害な影響を与えるかどうかはよくわかっていない。Copelandらが今回報告した住民を対象とする前向きコホート研究では、対象児1,420例(試験開始時の年齢 9、11、13

小児期のいじめは、たとえ長期的にみても、無害であるということはない
Childhood Bullying Is Not Harmless, Even in the Long Run
今回の縦断的研究は、小児期のいじめ加害・被害体験を有する成人では複数の精神疾患でリスクが高いことを示している。
小児期のいじめが成人期の行動および情動に有害な影響を与えるかどうかはよくわかっていない。Copelandらが今回報告した住民を対象とする前向きコホート研究では、対象児1,420例(試験開始時の年齢 9、11、13歳)を18歳まで毎年評価し、成人期(19、21、25歳)の追跡調査では1,273例について再度評価を行った。成人期の評価では構造化された精神科診断面接も行われた。
親と子どもの報告に基づき、9~16歳の期間にいじめを被害者、加害者あるいは両方(加害者/被害者)として体験した症例484例、いじめ体験のない対照789例が特定された。いじめ被害者に関して性別による差はみられなかった。小児期精神疾患の既往で補正すると、いじめ被害者は成人期にパニック障害(オッズ比[OR] 3.1)、広場恐怖症(OR 4.6)、全般性不安障害(OR 2.7)を有する頻度が高く、いじめ加害者/被害者では成人期にうつ病(OR 4.8)、パニック障害(OR 14.5)、広場恐怖症(女性のみ;OR 26.7)、自殺傾向(男性のみ;OR 18.5)の頻度が高かった。一方、いじめ加害者は成人期に反社会性パーソナリティーを有する割合が高かった(OR 4.1)。
コメント
小児期のいじめが成人期に与える影響は多様でかなり大きく、不安、うつ病、自殺傾向のリスクを何倍も上昇させる。いじめの被害者かつ加害者のうち女子と男子ではいじめに起因するストレスへの対処方法が異なるようである(女性の回避に対して男性では自殺傾向)。著者らが指摘しているように、(いじめが)長期的な影響をもたらす機序の可能性としては、ストレスに誘発されるコルチゾール値およびテロメア長の変化、環境—脆弱性遺伝子間の相互作用、認知的・行動的対処戦略の変化が考えられる。明らかに、最善の戦略はいじめの防止である。小児期のいじめ体験は患者から容易に聞き出せないと思われるが、成人患者を診察する臨床医はそれらの体験に注意を向ける必要がある。
—Peter Roy-Byrne, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry March 11, 2013
引用文献:
Copeland WE et al. Adult psychiatric outcomes of bullying and being bullied by peers in childhood and adolescence.
JAMA Psychiatry 2013 Feb 20; [e-pub ahead of print].