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朝から晩まで我々は一生懸命仕事をする。
突然メールで仕事がふられても、すぐやっとかなきゃ忘れるからといって、メインタスクを中断してまで対応する。
上司から「悪いけどこれやっといて」と言われたら、「いいですよ」なんて気軽に返答する。
気がつけば、夕飯を食うタイミングを逸して、空調の切られた熱帯雨林のような居室でパソコンを叩いている。
仕事の進みが悪ければ「すみません、休日出勤させてください」って謝りながら申請しに行く。
みんな引き受けすぎているんだ。
基本的に頼み頼まれたら断らない。丸抱えする。
できなければ、一人で悩み、自分の能力が低いせいだと絶望する(特に若いやつは)。
これは上司だって同じだ。上司の上司に対して「できない」なんて言えない。
「いいですよ」なんて気軽に答えて、部下に仕事をふると「いいですよ」なんて答えてもらえる。
悪いなと思いつつも、できるって言ってるんだからやらせてみるか、と思っているはずだ。
こうやって善良な人々は、抱える荷物の大きさに疑問を持ちながらも
「仕方ないよな」って具合に荷物を増やしていく。
人事からコンプライアンスだ、なんて言われれば遵守を証明する書類を書き、
情報部から情報セキリティの審査だ、なんて言われれば、セキリティソフトでPCを使いづらくし、
総務から節電だなんて言われれば、5時以降の暑さを耐え忍び、
知財から特許ノルマだと言われれば、絶対使えないだろう特許でもなんとかひねり出し、
エンジニアなのに、肝心の技術開発の使う時間がガシガシ削られる。
その技術開発も納期が厳しく、ほとんど最小限の手間でやっている状態だ。試行錯誤なんて夢のまた夢だ。
おかしいな、と日々感じている。
けれど、みんな我慢しているから俺も我慢しないと。
と日本人の9割は考えているんじゃないか? 我慢大会の参加率9割だ。
みんな空気を読んで、休みたいのに休まず、誰かの期待に応えようと健気に仕事をする。
……これがブラック化だ。
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