“ そうした政治の特徴を極限的なかたちでいえば、必要とあらば悪魔とも共存する道を探ることだということができるでしょう。あなたが顔を見たくもないような相手、そもそも存在していること自体が許せない相手とも共存しようとすること。政治がわれわれ普通の人間にとって理解しがたい存在、嫌悪の対象である最大の理由はここにあります。一方の側の人間とその「正義」から見れば「極悪人」であり許しがたい存在と思われる人間、「いっそのことそんな奴は殺してしまえ」と思う相手とも共存の道を探る、というのは普通の人間から見れば「ひどい裏切り」であり、「汚い妥協」である、ということになります。 政治という営みが、ひとつのはっきりした「正義」を抱いた人間にとっては「中途半端」な存在と思われる、あるいはむしろそうした「正義」を妨げる存在として嫌悪されるというのもここに根拠があります。「政治家は汚い」とわれわれが考えるのは、たんにそれが……政治腐敗を伴うからだけではない、むしろ異質な他者との共存のための営みであるという政治の本質に根ざしているということができます。(p138)”
— 共存のための技術 – 雑記帳