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将来にわたって頭を悩まし続ける核のゴミ。その解決の道筋につながるかもしれない世界初の実験が日本国内で行われています。その現場にカメラが入りました。京都大学・原子炉実験所。ここで、ある研究が進められています。核のゴミを地中に埋める期間を10万年という気の遠くなる年月から一気に数百年まで短くしようというものです。
「潜在的毒性を減らすということは、もともと危ないものを本質的に少なくすることができる」(京都大学 山名元教授)
放射能には「寿命」があります。原発から出る使用済み核燃料には、放射能が半分になるまで2万4000年もかかる、寿命の長いプルトニウム239などが含まれています。この寿命を人間の手で短くしてしまおうというのです。仕組みはこうです。加速器を使い、「陽子」を光の速さに近いものすごいスピードで鉛の入った金属に衝突させると、大量の「中性子」が発生します。その「中性子」を寿命の長いプルトニウム239などにぶつけると、核分裂が起きて寿命の短い別のものに変わるといいます。核のゴミから寿命の長いものだけを取り出して、この技術を応用すれば、放射能が半分になるまでに30年もかからない寿命の短いものばかりになり、地中に埋めておく期間も一気に短くなります。
「陽子を実際に原子炉の手前まで持ってきて照射するという結合実験は世界初」(京都大学 山名元教授)
京都大学では、実際の原子炉に加速器をつなげた世界で初めての実験を行っています。
「ここでやっているのは、出力をあまり上げないで、加速器と原子炉を結合した特性がどう動くかというのを研究している基礎段階」(京都大学 山名元教授)
実は、この研究は20年以上も前に国が「オメガ計画」という名前で立ち上げました。しかし、ゴミ処理に特化したこの計画は、発電を主体とする高速増殖炉もんじゅの開発の陰に隠れて、研究予算も十分確保されてきませんでした。実際、どの程度の確率で寿命を短くできるか、その精度が十分でないなど課題が多く、実用化は2050年頃とされています。
「原子力発電が今後なくなっていくか、使い続けるかというディシジョン(決定)はこれから議論されていくけど、どちらにおいても、そういった放射性の長寿命のものを減らしていく技術を追求し続けていく姿勢が必要」(京都大学 山名元教授)
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