朝歩いていると八重桜が見える
家持のいう、うらうらとした春、物憂い春
昨夜食べたものが消化しきれないで
アイスマンの胃袋のように滞留物をかかえている
平安歌人は春の夜・枕・黒髪の乱れを歌ったものだが
現代人は春の夜もネットだの未視聴録画番組だの何だので忙しい
ギッシングはイギリスの田舎の春を描き
あと幾たびの春を希望してよいものだろうかと書いて
控えめにあと数回と希望している
そのことを小文で話題にしていた辻邦生は
健康な状態からいきなり突然死してしまったようで
次第に衰弱するプロセスはなかったようだ
それも望ましいとは言いすぎであるが
三ヶ月すると退院を打診される現在の病院のあり方から言えば
やはりなにかしら理想的な感じではある
もう年をとったのだから
好きな事だけをして暮らしていたいと思うが
好きなこととできることがいずれも仕事だけなので
どうにもしかたがない
働き続けることになる