偽造の手口はカラーコピー

薬剤師会 詐欺容疑で被害届提出へ
 静岡市内の薬局に偽造された処方箋が提出され、精神安定剤が不正に処方されていた問題で、同市薬剤師会は2日、今月中にも県警に詐欺容疑で被害届を提出する方針を明らかにした。偽造の手口はカラーコピーという至って簡単なものだが、薬局関係者は「精巧で見抜くのは難しかった」と口をそろえる。
 市薬剤師会などによると、処方箋に名前が書かれていたのは静岡市に住む40歳代の女性。2008年から約3年間にわたり、同市内の薬局約30軒で約400枚の処方箋が提出され、精神安定剤約7万錠が処方された。処方箋のうち12枚がカラーコピーだったという。カラーコピーを見た薬剤師の1人は「判子の部分も本当に押してあるように見える精巧なものだった」と話す。
 県薬事課によると、女性は複数の医療機関で受診し、多数の処方箋を得ていたという。
 静岡市内で2日、記者会見を開いた市薬剤師会は病院や薬局が、患者が複数の医療機関で受診する「多重受診」をして、大量の薬の処方を受けることを見抜く方法がないことに触れ、「法的には問題ないが、1人の患者に必要量の10倍の薬が処方されており、悪用されている可能性がある」と指摘した。
 不正に処方されたのは、精神安定剤「エチゾラム」で、神経症による不安や抑うつ、睡眠障害などに効果があるという。
 問題発覚を受け、同会は市内約200の薬局に対し、偽造処方箋が相次いで見つかった問題の報告と、注意喚起の文書を一斉ファクスした。また、市薬剤師会は6、7月、同市内の医師会と保健所などと緊急に対策会議を行っていたという。
 静岡市葵区西草深町の薬局に勤める薬剤師宮永文則さん(43)は「処方箋の押印部分を印刷で済ませてしまう医療機関もあり、複写と見分けられない」と指摘する。実際、有効な処方箋か医療機関に電話で確認したこともあるという。再発防止策については、「コピーすると『複写』という文字が浮かびあがる処方箋にするなど、医療機関側の対応が必要だ」と提言する。
 県警は、県などからの報告を受けてすでに捜査を始めており、有印私文書偽造の疑いもあると見て、慎重に調べを進めている。